[12.15 高円宮杯プレミアリーグ参入戦1回戦 鳥栖U-18 0-1 三菱養和SCユース 広島補助]

　三菱養和SCユースで注目が集まるのは、U-17W杯で活躍し、2年生ながらすでにJクラブなどが争奪戦を繰り広げているエースFW中村敬斗。だが、この日は彼の実力を認めつつも、「自分もいるぞ」という思いを持って戦う3年生FW渋谷黎聖がヒーローになった。

　0-0の後半3分、三菱養和は左サイドからの崩しで渋谷が抜け出し、右足で決勝ゴール。「左SBの松崎唯人がパス得意な選手だと分かっているので、彼が中に上がってきたので自分にパス来るから走り出そうと思って走り出したら良いパスが来た」。相手にボールを握られ、守備の時間帯が増える中、後半の1チャンスを逃さずに決めたゴール。シュートはアドバイス通りに放った一撃だった。

「プリンスリーグ関東では悩んでいる時期が多くて3点しか取れなかったんですけれども、養和の秋庭さん(武彦、統括コーチ)と話して、『シュートは振らなくて8割でいいからあとはGKを見て開いているところに打てばいい』という言葉が頭を過ぎって、落ち着いて打つことができました」。結果が出ずに悩んできたFWが大一番で殊勲のゴールを奪った。

　今年は、ユース年代を代表するFW中村と2トップを形成。注目FWとともにプレーできる喜びがある一方、苦しい一年でもあった。「(中村)敬斗はプリンス得点王を取っているし、トップクラスの選手。でも自分はライバルだと思っていますし、養和は敬斗だけのチームじゃないとずっと思っている。みんな『敬斗に当てれば何とかなる』と言っていますけれども、『俺もいるじゃん』と心の中で思っていて、それがずっと苦しかったけれど、ここで出せて良かったです」。3年生にとって負ければ引退という大一番でのゴールを素直に喜んでいた。

「(渋谷)黎聖くんも個人技術があるので自分で前行けるし、パスも出せるし僕の特長も分かってくれているのでいい関係が築けていると思う」とリスペクトしてくれている中村とのコンビもあと1試合。勝てばプレミアリーグ昇格となる富山一高戦へ向けて渋谷は「富一戦はFWなので結果にこだわるのは当たり前なんですけれども、チームとしてやるべきことを理解して、敬斗と協力しながらゴールを目指して結果を残したい」と宣言した。

(取材・文　吉田太郎)

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