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プリンス関東参入戦“繰り上げ出場”決定から6日。3年生の気迫と1、2年生の巧さ噛み合った桐生一が実践学園撃破!

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前半14分、桐生一高FW小澤謙登が先制ゴール

[12.23 高円宮杯プリンスリーグ関東参入戦1回戦 実践学園高 0-1 桐生一高 埼玉第2G]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2018プリンスリーグ関東への参入を懸けた参入戦1回戦が23日に行われ、実践学園高(東京)と桐生一高(群馬)が激突。桐生一が1-0で勝ち、25日のプリンスリーグ関東参入決定戦(対東海大相模高)へ進出した。

 東京都1部リーグを13勝3分2敗の成績で制し、選手権予選との2冠を果たしている実践学園に対し、桐生一は群馬県1部リーグで13勝2分3敗の2位。前橋育英高Bに優勝を譲っていた。だが、プリンスリーグ関東で優勝した前橋育英のAチームが17日のプレミアリーグ参入戦決勝戦で敗れたため、桐生一に“繰り上げ”で訪れたプリンスリーグ関東昇格のチャンス。出場が決まってからわずか6日後に迎えた一戦だったが、桐生一は3年生の気迫と1、2年生たちの巧さが光る内容で選手権出場校から白星を勝ち取った。

 実践学園は深町公一監督が「最後の試合でこれでは東京都のチームに申し訳ない」と首を振る内容。けが人を抱えていた影響もあったか、特に前半は運動量が上がらず、先発2人だけの3年生を筆頭に気持ちの入ったプレーを見せる桐生一の前に、攻めきることができずにボールを奪われてしまう。

 桐生一は奪ったボールを正確に繋いでサイドへ展開。推進力のあるドリブルで何度も敵陣深い位置までボールを運んでいたMF田中宏武(3年)とMF佐藤大地(3年)の両翼が縦への鋭い仕掛けでチャンスを作り出す。

 14分には早くも先制点を獲得。MF田中渉(2年)の右CKをニアサイドのFW小澤謙登(2年)が頭で右隅へ押し込んだ。先発7人が2年生の桐生一は、2年間に渡って現2年生を指導してきた中村裕幸コーチが「ボールを持って、相手を引き出して、突いていくことをやってきた」というサッカーを表現する内容。先制後も巧みなボールタッチを見せる田中渉と縦への鋭い動きが特長の田中宏の田中兄弟を中心に攻める桐生一が、試合を優勢に進めていた。

 前半は全体的に連係面の良さも出ていなかった実践学園だが、連動性とスペースを突く動きが徐々に増えていき、後半2分にはMF浦寛人(3年)がチャンスを迎えるなど流れを好転させていた。

 その中で後半7分にアクシデント。PA手前に落ちたボールに反応した実践学園FWと桐生一GK渡辺渓人(1年)が激しく交錯。約7分間の治療後に渡辺はそのまま負傷退場し、桐生一はGK杉浦駿介(2年)が緊急出場することになった。

 3バックから4バックへの移行によって流れを傾けた実践学園は浦やFW前原龍磨(3年)が積極的にスペースへ飛び出し、左DF山内稔之(2年)のクロスなどからゴールを目指す。だが、桐生一は緊急出場したGK杉浦が落ち着いたプレー。ミスもあったものの、ハイボールを確実に収めて流れを断ち切っていた杉浦に対しては、桐生一の中村コーチも「2年間で初めて褒めました」と賞賛していた。

 実践学園は終盤、MF尾前祥奈主将(3年)の果敢な攻撃参加や両サイドからの攻撃、セットプレーでゴールを目指したが、中野就斗(2年)と角野寛太(2年)の両CBやMF梅林幹(2年)、終盤に投入されたMF青木大和主将(3年)中心に最後まで集中力を切らさずに、身体を張って守り続けた桐生一が1-0で勝利。プリンスリーグ参入へあと1勝とした。

 桐生一は11月23日の選手権予選決勝で前橋育英に0-1で敗れ、3年生の大半が“引退”。その時点で1か月後のプリンスリーグ関東参入戦に出られるかどうかは未定で、前橋育英のプレミアリーグ参入戦の結果を待たなければならなかった。

 それでも、「怪我などで選手権決勝に出れなかったのでここで悔しさを晴らしたいと思った。今年、結果を残せていなかったので置き土産という形で(プリンスリーグ昇格という結果を)残したかった」という佐藤ら1か月間全力でトレーニングすることを決めた3年生7人が、1、2年生たちと準備。前橋育英が磐田U-18にPK戦敗退したことで今大会の出場権を得た桐生一はこの日、思いの強さも感じさせる戦いぶりで白星をもぎ取った。

 田野豪一監督が「プリンス、そろそろ行きたいです」と語っていたが、桐生一は県内のライバル・前橋育英と同じステージで一年間を戦うことが目標。田中宏は「(試合前の)円陣のところで『あともう1試合やらせてくれ』というのがあった。(それが現実となったので)あと1試合しっかり勝ち切りたい」と力を込め、佐藤は「自分の持ち味のドリブルを出して最後、自分が決める。チームに貢献したいです」と意気込んだ。同じく選手権出場を逃している東海大相模のプリンスリーグ関東昇格に懸ける意気込みもとても強い。それでも、自分たちのため、後輩たちのために全力で戦い抜き、相手を上回って、笑顔で“最終決戦”を終える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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