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「このままでは終われない」3年生牽引し、1-3から大逆転!桐生一がプリンスリーグ関東昇格!!

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勝利を喜ぶ桐生一高イレブン

[12.25 高円宮杯プリンスリーグ関東参入戦決勝戦 桐生一高 4-3 東海大相模高 埼玉第3G]

 25日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2018 プリンスリーグ関東への参入を懸けた参入戦決勝戦が行われ、桐生一高(群馬)が東海大相模高(神奈川)に4-3で逆転勝ち。桐生一は11年以来となるプリンスリーグ関東昇格を決めた。

 前半3分にMF田中宏武(3年)とMF田中渉(2年)の兄弟ホットラインで先制した桐生一だったが、7分に東海大相模MF中島優太(2年)に同点ゴールを奪われると、21分には中島のシュート性のクロスをFW瀬名波新平(3年)に押し込まれて1-2。その後もMF中山陸(2年)を中心にボールを動かす東海大相模に押し込まれ、FW井上蔵馬(3年)やMF有馬和希(2年)に決定的なシュートを放たれた。

 そして44分には中島にPAまで持ち込まれると、シュートのこぼれ球を決められて2点差。精神的にも追い込まれるような試合展開となってしまう。だが、MF青木大和主将(3年)が「次の1点が大事になる。次の1点が入れば、相手が崩れて自分たちのペースでやっていけると言われていた。次の1点はこだわってやって、そこが狙い通りに取れたので自分たちの流れに持っていけた」と振り返ったように、勝負を左右するゴールを奪った桐生一が流れを変える。

 後半6分にFW小澤謙登(2年)が放った決定的なシュートは相手GKに阻止されたものの、9分、右クロスを逆サイドで拾った田中宏がミドルシュートを狙う。DFの頭を弾いて跳ね上がったボールはそのままGKの頭上を越えてゴールイン。「次の1点」を奪った桐生一はさらに13分、MF梅林幹(2年)の展開から、交代出場のMF松下駿也(2年)が正確なクロスを上げる。これを中央の小澤が頭で決めて同点に追いついた。

 東海大相模の有馬信二監督は「(桐生一の)攻撃力はあるなと思っていた。選手も『2点差は危ない』と言っていた」という。だが、攻め立てた前半に試合を決められなかった“つけを払う”ことになった東海大相模は、焦りでやや個人頼みの攻撃になってしまったこと、また攻め疲れたことも影響したか、前半のような繊細なパスワークを発揮することができない。注目のG大阪内定SB山口竜弥(3年)も怪我が影響してか、普段の迫力ある動きがなかなか見られなかった。

 勢いは桐生一。後半、サイドへの大きな展開を交えた攻撃を増やして相手を振り回した桐生一はオープンな攻防となった後半終盤に勝ち越し点を奪う。37分、連続攻撃から右中間の田中渉がPAへスルーパス。これにスライディングしながら飛び込んだ小澤が決めて試合をひっくり返した。

 選手権予選で敗退している桐生一はこの試合が3年生の“ラストゲーム”。選手権予選後に新チームに切り替わり、ほとんどの3年生が“引退”する中で青木、田中宏、MF佐藤大地、FW堀越竜成、MF金子雄大、MF新井智也、GK中村海生の7人だけがチームに残ってトレーニングしてきた。

 この日は青木、田中宏、佐藤の3選手が先発。そして勝ち越した終盤、指揮を執る中村裕幸コーチは「(相手の反撃に対して)何とか踏ん張ってくれるのはコイツらしかいない」と3年生の金子、堀越を相次いで投入する。東海大相模に決定的なシーンも作られたものの、1点リードを守り抜いた桐生一が4-3で勝利。青木が「今日は受験勉強で1人だけ来れなかったんですけれども、他の3年生全員が来てくれました。応援も力になりましたし、ウチの代は横の繋がりが一番の強み。この仲間とやれて良かった。仲間に恵まれて本当に感謝しかない」と熱い応援を繰り広げていた同級生たちに感謝する“ラストゲーム”を制した桐生一が、プリンスリーグ昇格を決めた。

 中村コーチは1-3とされて迎えたハーフタイムに「田中宏武とか3年生がいい顔をしていた」と振り返る。劣勢の試合展開にも3年生たちの士気は全く落ちなかった。仲間たちの声援に必ず応えるという“思い”と、無冠だった今年、「このまま終われないというのがあった。来年に何か残せないかと」(田中宏)という“思い”。諦めることなく、最後まで勝利を目指し続けた桐生一が後輩たちにプリンスリーグ関東への切符をプレゼントした。

 7年ぶりのプリンスリーグでの戦いへ向けて中村コーチは「守ってナンボよりも今やってきたことを貫きたいなと思います」と攻撃的な戦いで挑む考えを口にした。桐生一にとって群馬県内最大のライバルは前橋育英高。これまではBチームと県1部リーグで戦ってきたが、来年はプリンスリーグ関東でAチームと戦うことができる。田野豪一監督が「これで(力を)測れるから、怖がらないと思う」と評した舞台での経験をトーナメント戦で活かして、来年の全国出場に繋げる。

(取材・文 吉田太郎)

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