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劣勢の終盤に決勝ヘッド!鳥栖U-15の183cmエース田中禅「苦しい試合で点を取って、勝たせる選手に…」

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決勝弾の直後、ゴール裏の控え部員と喜びを分かち合うサガン鳥栖U-15のFW田中禅(3年)

[12.26 高円宮杯全日本ユース(U-15)準決勝 清水0-1鳥栖 味フィ西]

 チームが苦しい時にこそ、点を取る――。まさに、エースと呼ぶにふさわしい働きだった。サガン鳥栖U-15FW田中禅(3年)は準決勝の際終盤、183cmの長身を生かしたヘディングシュートで決勝点を奪取。一方的に攻め込まれる場面が続いた中、自身に舞い込んできたワンチャンスを生かしてみせた。

 夏のクラブユース選手権大会を制し、サガン鳥栖グループの全年代で初めての全国タイトルを獲得した鳥栖U-15。2冠目を懸けて臨んだ今大会だが、春のJFAプレミアカップ王者の清水エスパルスジュニアユースと対峙した準決勝は「どちらに転んでもおかしくなかった」(田中智宗監督)という緊迫したゲームとなった。

 前半こそシュート7本を放った鳥栖U-15だったが、後半は相手にボールを握られる展開が続き、攻撃陣は球際で押さえ込まれて沈黙。後半開始から同35分すぎまでの間に得たシュートチャンスは、DF中野伸哉(2年)のクロスを田中が胸で落とし、MF中村尚輝(2年)が放った1本のみにとどまっていた。

 ところが、「ここまで取れていなかったので、監督と点を取ることを約束していた」という背番号9がそんな苦境を打開した。40分ハーフの後半38分、1本目のシュートシーン同様に左サイドを起点とした攻撃から、中野のクロスに飛び込んだのはエースの田中。相手DFの背後にうまく回り込み、頭をねじりながら振り下ろしたヘディングシュートで、華麗にゴールネットを揺らした。

「もう頭が真っ白になって、うれしいって気持ちでした」。真っ先にベンチへ向かうと、一喜びし終えた後は、ゴール裏に陣取っていた控え選手の元へ。「ベンチに入れず、偵察に行ってくれた人もいた。それでも一緒に闘ってくれて、ゴール裏で声を出してくれて、そんな人たちのためにもゴールを取ろうと思っていた」。そのうち2人は同じ3年生。共にトレーニングを重ねてきた仲間の期待に“結果”で応えた。

 さらにもう一つ、勝たなければならない理由がある。夏の大会でMVPを獲得した10番の選手がシーズン途中で退団。指揮官は「『抜けたから弱くなった』とは言われたくないはず」と選手たちを慮っていたが、田中は「最初は誰が出るんだろうというふうになっていたんですけど、いまはみんなが全員でカバーしていて、いなくても大丈夫と言えるようになった」と胸を張った。

 「クラブユースが終わってからは2冠という目標でやってきた」と話すように、目指すところはもちろん頂点のみ。「今日みたいに苦しい試合で点を取って、チームを勝たせられる選手になりたい」と意気込む15歳は「決勝まで来たので、あとは笑って終わるだけです」と静かに闘志を燃やしていた。

(取材・文 竹内達也)
●高円宮杯第29回全日本ユース(U-15)選手権特集ページ

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