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「ライター森田将義の選手権優勝予想」“今年の”選手権仕様のチームに変化。本命は京都橘!

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森田氏が本命に推す京都橘高

特集企画「ユース取材ライター陣が予想する『全国高校総体優勝校』」

 今年の選手権は例年と少し違う。決勝戦が行われる成人の日が1月8日となったため、12月30日の開幕戦からの10日間で、5試合ないしは6試合をこなすタフな日程をこなさなければならないのが今年の特徴だ。

 過密日程をいかに乗り切るかが優勝争いに鍵となるが、そのためには、いかに選手の消耗を避けながら勝ち進めるかが重要だ。交代枠が5人に増えたこともあり、交代カードを充実させて、一人当たりにかかる負担を減らそうとうするチームが多く見られるが、戦いそのものを今年の選手権仕様にするチームもある。

 良い例となっているのが京都橘高(京都)だ。これまでのカウンターからポゼッションへの転換を図ったのは、今年の選手に合ったスタイルという側面もあるが、ピッチの行き来が多く、消耗が激しいカウンターを避けるという点がスタイル変更の一番の狙いで、優勝候補の本命として推せるだけのチームに仕上がっている。

 主将のDF河合航希(3年)が怪我で欠場するのは痛手だが、MF梅津凌岳(3年)とMF篠永雄大(2年)を中心に一年かけて磨いてきたポゼッションは、全国でも主導権を握りながら、省エネで試合を運べる力はある。FW関野竜平(2年)やFW輪木豪太(3年)など前線の選択肢が多いのも強みで、DF古川隆輝(3年)を中心とした守備が安定すれば、頂点の確率はグッと高まる。

 2013年度以来、2度目の頂点を狙う富山一高(富山)も有力な候補だ。売りは前線からの積極的な守備と、パスを繋ぎながら、積極的に後方の選手が飛び出すアグレッシブなサッカー。これがチームのベースとなっているが、大塚一朗監督が「1回戦から強豪が続いて、期間も短いので、全ての試合で前から行けるわけではない。どこかで、休むというかテンポダウンもしなければいけない」と話すように、後方に守備ブロックを作り、カウンターで一発を狙う選手権仕様の戦いも準備している。

 前橋育英高(群馬)など横綱クラスが揃う厳しいブロックではあるが、プレミアリーグ参入戦では、選手権仕様の戦いでも十分に戦えるクオリティーを示した。徳島内定のFW坪井清志郎(3年)と、FW大竹将吾(3年)の2トップに頼りがちだった攻撃も、中盤の選手の存在感が増すなどプラス材料も多く、激戦区を勝ち抜く予感が漂う。

 左側のブロックは、全国総体の王者、流通経済大柏高(千葉)が一番手だろう。本田裕一郎監督が、「サッカーを更に進化させるためにも、守備に目をやらなければいけないと思った」と話すように、例年以上に守備に力を入れる今年は、プロ注目のDF関川郁万(2年)を中心とした守備が武器。試合途中の戦術変更をこなせるMF菊地泰智(3年)らの存在も心強く、同じく6日で5試合という過密日程をこなした全国総体で優勝を果たすなど実力は証明済みだ。誰が出てくるか読めない選手層の厚みも長所と言え、史上7校目の夏冬連覇という偉業に挑めるだけの可能性を秘めている。

 タフな日程を乗り切り、決勝に進むのは京都橘と流通経済大柏だと予想しているが、「どこが優勝してもおかしくない」(本田監督)のが、ここ最近の高校サッカー界だ。前年度のファイナリストである青森山田高(青森)と前橋育英は、攻守ともに穴が少なく、らしさを出し切ることができれば、今年も主役となる可能性は十分にある。

 また、昨年の佐野日大高(栃木)のように、勝ち上がった勢いによって、連戦による疲労を無にしてしまうチームも出てくるだろう。特に今年は、U-18日本代表候補にも選ばれたFW圓道将良(3年)や抜群のスピードを誇るMF中田怜冶(3年)を擁し、インターハイで8強入りを果たした旭川実高(北海道)や、チーム全体で上手さと粘り強さを徹底できている大阪桐蔭高(大阪)からは、トーナメントを駆け上がるだけのパワーと勢いを感じられており、彼らが頂点まで駆け上がったとしても、不思議ではない。

執筆者紹介:森田将義(もりた・まさよし)
1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。
●【特設】高校選手権2017

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