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『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』 :Tomorrow Never Knows(柏レイソル・小池龍太)

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柏レイソル不動の右サイドバック、小池龍太

東京のユースサッカーの魅力、注目ポイントや国内外サッカーのトピックなどを紹介するコラム、「SEVENDAYS FOOTBALLDAY」

 ほとんど誰もいなくなった等々力のミックスゾーンに、ハキハキとした声が響く。最後にこれだけは聞いておきたかった。「今シーズンって楽しかったですか?」。すぐさま答えが返ってくる。「凄く楽しかったですよ。レイソルに呼んでもらって凄く感謝していますし、僕はJFLから始まったキャリアなので、こんなに緊張感のある中でプレーできることにも本当に感謝しています。ただ、その分だけタイトルを獲れなかったというのは課題なので、来年はもっと結果的に楽しいシーズンにしたいなと思います」。出場した公式戦の数は、伊東純也とクリスティアーノに続くチーム3位の38試合。今やレイソル不動の右サイドバックとして、黄色のサポーターからも厚い信頼を勝ち獲った小池龍太が、その歩みを止める気配は微塵もない。
 
 小池の存在を目の前で強く記憶に刻み込んだのは、2年前のとりぎんバードスタジアム。首位のレノファ山口が自動昇格を懸けて、ガイナーレ鳥取のアウェーに乗り込んだJ3の最終節。先制される展開の中、一度は追い付いたレノファだったが、再びガイナーレに突き放されると、勝ち点で並ぶ2位の町田ゼルビアのゲームは同点で終了。少なくとも1点を返さなければ、目標には届かない。ビハインドのままで迎えた後半のアディショナルタイムも5分を過ぎ、ほとんどラストプレーという状況で、しかし奇跡が起こる。

 右サイドで庄司悦大がボールを持つと、猛然と斜めに走り出したのは小池。スルーパスに全力で追い付き、DFの目前で折り返したボールを、平林輝良寛がゴールへ流し込む。そして数十秒後。オレンジの絶叫に包まれたスタジアムへ、タイムアップの笛が鳴り響いた。劇的にJ2昇格を手繰り寄せたレノファ。庄司のスルーパスや平林のゴールがフィーチャーされる中、個人的には「龍太が斜めに走ってくれたので『ちょっと長かったかな』と思いましたけど、頑張って折り返してくれましたね」と庄司も言及したように、90分以上に渡って上下動を繰り返しながら、あの局面でスプリントを繰り出し、アシストを記録した小柄なサイドバックが不思議と印象に残った。

 昨シーズンではアウェーのセレッソ大阪戦で大きなインパクトを残す。前半の内に右サイドでスルーパスを引き出し、豪快な先制弾を叩き込むと、圧巻は後半終了間際の後半40分。相手のセットプレーを奪ったカウンターのチャンスに、自陣のペナルティエリアにいた小池は、全速力で80m近い距離を駆け上がり、島屋八徳からのパスを冷静に相手ゴールへ突き刺してみせる。画面越しにもキンチョウスタジアムの異様などよめきが伝わってくるような、完璧なカウンターからのゴラッソ。4ゴールを叩き込み、セレッソを粉砕したレノファのこの日の主役は、結果としてリーグ戦全試合に出場し、プレー時間もチーム最多を誇るなど安定したパフォーマンスを披露。シーズン終了後には3年間を過ごしたレノファに別れを告げ、レイソルへ新天地を求めることとなる。

 迎えた2017年シーズン。開幕戦でJ1デビューこそ飾ったものの、リーグ戦では3試合を終えて定位置を掴み切れていなかった小池に、スタメンのチャンスが訪れる。YBCルヴァンカップの清水エスパルス戦。手塚康平のスーパーボレーへ隠れる格好にこそなったが、一定以上の出来で90分間を過ごした彼は、続くリーグ第4節のベガルタ仙台戦でもキックオフのホイッスルをピッチ上で聞く。これ以降におけるリーグ戦のスタメンリストで、レイソルの右サイドバックに、13番以外の選手が書き込まれた試合は1つもない。巡ってきた出場機会をしっかりモノにした小池は、着実にピッチ上での存在感を強めていく。

 日立台に桜が咲き誇る4月。ゆっくり話を聞く機会に恵まれた。「自分の中で『やれなくはないな』と思っていますし、『もっとできる』という想いもあるんですけど、『もっとできなきゃいけないな』という部分も凄く多くて、できるならもっと欲を出さないといけないですし、より速いスピードで成長しなければ、チームの力にはならないと思います」。穏やかな口調の端々に強い向上心が滲む。

 レノファ時代に話が及ぶと、自然と言葉に熱がこもる。「JFL時代は仕事をしながらサッカーをする中で、自分はサッカースクールの仕事が多くて、他の選手はスポンサーの方の会社で働かせていただいたりしていて、若いのに自分はサッカーだけやれているというのはありがたかったですけど、J2の昨シーズンはそういった選手が誰もいなくなって、自分だけがピッチに立っていたので、いろいろな人たちの想いも背負って、責任を持ったプレーを心掛けていました」。18歳で飛び込んだ大人の世界で、様々な経験値を積み重ねてきたからこそ、サッカーに専念できる環境への感謝と喜びを実感している様子が窺えた。自分に関わってきてくれた方々への“責任”も、彼を突き動かしている要因の1つであることは間違いない。

 定位置をしっかり確保し、チームにもアジャストしてきた小池が改めてJ1で戦う厳しさを体感したのは、前年王者と日立台で対峙した第17節の鹿島アントラーズ戦だったのではないだろうか。首位をキープして迎えたこの一戦。先制したものの追い付かれ、勝ち越しを許しながら、小池のアシストでスコアを振り出しに引き戻す展開の中、最後はアントラーズに決勝点を献上し、ホームで黒星を突き付けられてしまう。2得点はいずれも右サイドから崩した形だったが、同様に3失点もすべて右サイドから。1失点目は金崎夢生に寄せ切れず、2失点目は自らのファウルで与えたFKを直接叩き込まれ、3失点目はペドロ・ジュニオールのシュートに伸ばした足をかすめたボールが、ゴールネットへ到達した。

 試合後。3失点目について尋ねると、明確な回答が繰り出される。「シュートする選手が自分の股を抜いてくる角度もありましたし、それを自分がちょっと気にしてしまって、足を出す距離が短くなったから、自分の足に当たってゴールに行きましたけど、あそこで股をケアするのか、逆にボランチの選手にもっと寄せてもらうのかとか、浅くターンされてしまったので、もっと深くターンさせてアプローチする角度を付けられれば、もっと足を出せたのかなとか、いろいろな駆け引きがあった中でやられてしまったので、そこは反省点かなと思いますし、今日の経験を糧にしたいと思います」。1つのシーンをそこまで詳細に振り返ることのできる選手は決して多くはない。話を聞きながら思考のクリアさに舌を巻いた。

 それでも小池にとってJ1王者との対峙は、自身の未熟さを突き付けられる90分間だった。「まだまだだなって。自分自身、全然良くなかったですし、このままでは試合に出ることも難しいというか、結果が求められる世界なので、チームとして負けてしまったというよりは、自分の能力がもっと上がらないといけないと思います」。悔しさは成長を加速させる。伊東とコンビを組む右サイドは、他チームの脅威として常に警戒されるまでになり、前述したように鹿島戦以降のリーグ戦も全試合にスタメンで出場。「あなたが好きなの~ 小池龍太~」という印象的なチャントも、日立台ではすっかりおなじみとなっている。

 延長戦の末に敗れ、2017年シーズンのラストゲームとなった天皇杯準決勝の横浜F・マリノス戦。1年間を戦い抜いた小池にどうしても話を聞きたかったが、ドーピング検査に指名されたため、旧知のカメラマンと共に登場を待つ。タイムアップから約1時間半後。ほとんど誰もいなくなったミックスゾーンにようやく彼が現れた。

 最初に聞きたかったのはクロスの質について。後半38分、延長前半7分、延長後半1分と終盤に差し掛かった苦しい時間帯に、ピンポイントのグラウンダークロスを味方に送り、チャンスを演出した事実は見逃せない。曰く、「マリノスのディフェンダーは背が高くて、高いボールも何本か上げましたけど、中澤選手とかに弾かれる場面も多かったので、相手の戻りが遅い時に速いボールを入れてみたりとか、股の下を狙ってみたりとか、自分なりに工夫した所ではあって、相手が嫌がるボールを上げられたことは良かったと思います」。ゲームの中で状況に応じて変化を加えられるのは、彼の大きなストロングポイントでもある。

 自身初挑戦となったJ1でのシーズンについて尋ねられ、「まだやり残したことが多いですし、自分的にはタイトルが取れなかったので、そこを来シーズンの課題として、結果という所を求めてやっていきたいです」と口にした小池に、「満足は行っていない感じですか?」と続けて聞いてみると、「満足行っていない訳ではないです。1シーズン通してケガしなかったとか、ベースの所は自分なりにノルマは達成しましたけど、そこで自分というものがどれだけ確立できたかとか、数字でどれだけチームを助けられたかというと、出ている試合数に対してはまだまだ物足りないものがあるので、そこは来年自分も強みを出していきたいですし、結果を出せる選手になりたいと思います」と言葉を紡ぐ。

 今後に向けた個人の目標は即答だった。「やっぱり代表ですね。そういう所に一歩踏み出さなきゃいけないですし、今までアンダーカテゴリーも選ばれていない選手なので、そういった所に行くのは夢ですし、目標でもあるので」。先日のEAFF E-1選手権から感じたこともある。「代表を見ていて、J(伊東純也)をもっと引き出せるという自負はありましたね」。日頃からコンビを組んできた伊東が日の丸を付けて躍動する姿に刺激を受けたことで、自分があの舞台でプレーするためのイメージも少しずつ湧いてきている。

「ハリルさんがどういうことを要求しているのかは行ってみないとわからない所で、自分がどういう評価を受けているのかも聞きたいですし、逆に今までどういう理由で選ばれていなかったのかという部分も、自分の課題として見つけられる良いチャンスですし、いろいろなことを聞けて、感じられる所にまず一歩足を踏み入れるということが自分の中の目標なので、まずは選ばれる資格を得たいと思います」。この成長曲線が続いていくのであれば、決してその目標も夢ではない。その期待が前述のカメラマンと同時に口を衝くと、「僕も行きたいですけどね。頑張ります」と言い切った笑顔が、今後のさらなる飛躍を予感させる。

 最後にこれだけは聞いておきたかった。「今シーズンって楽しかったですか?」。すぐさま答えが返ってくる。「凄く楽しかったですよ。レイソルに呼んでもらって凄く感謝していますし、僕はJFLから始まったキャリアなので、こんなに緊張感のある中でプレーできることにも本当に感謝しています。ただ、その分だけタイトルを獲れなかったというのは課題なので、来年はもっと結果的に楽しいシーズンにしたいなと思います」。“課題”と“結果”。この2つが、彼を構成する上で欠かすことのできないキーワードだということは、幾度かのやり取りの中でハッキリわかってきたことだ。

 等々力の激闘から2日後。願ってもないクリスマスプレゼントが、彼と彼の家族にもたらされる。それは第1子となる男の子の誕生。小池龍太。22歳。父となった若武者の2018年が今以上に輝くか否かは、彼自身の飽くなき向上心に懸かっている。


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SEVENDAYS FOOTBALLDAY by 土屋雅史

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