beacon

姉・松井愛莉にも「良いところを見てもらいたい」。矢板中央のU-17代表MF松井はプロ入りへの新たな一歩

このエントリーをはてなブックマークに追加

姉・松井愛莉(右)に負けないくらいに、有名なサッカー選手へ。矢板中央高MF松井蓮之は今回の選手権で新たな一歩を踏み出す

 注目MFにとって選手権はプロへの新たな一歩。いち早く“選手権デビュー”を飾った姉にも「良いところを見てもらいたい」と意気込んでいる。

 12月30日に開幕した第96回全国高校サッカー選手権に栃木県代表として出場する矢板中央高は、大会のダークホースにも挙げられている強豪校だ。その中盤で存在感を放っているのが、U-17日本代表MF松井蓮之(3年)。178cm、72kgとガッチリとした体格のボランチは、技術レベルの高さと試合終盤でも落ちない運動量、球際の攻防で相手をねじ伏せるようにボールを奪い切る強さも兼ね備えた注目タレントだ。

 昨年、U-16日本代表候補に初選出された松井は今年3月のU-17日本代表アメリカ遠征メンバーに選出。プロ入り、そしてU-17W杯メンバー入りも期待される存在だったが、夏のインターハイは栃木県予選準決勝のPK戦敗退によって全国大会出場を逃してしまい、多くのスカウト、代表チーム関係者に見てもらう機会を失ってしまう。

 技術面、守備面でも細かい課題があった。そのため、U-17W杯日本代表メンバーから落選し、注目された進路は湘南への練習参加なども経験したものの、プロではなく、総理大臣杯優勝、インカレ準Vの法政大へ。「結果が出なかった。代表に2回呼ばれたんですけれども結果も出せずに、W杯のメンバーにも入りたかったんですけれども、そこにも入れず、目に留まらなかった。でも、自分は『大学から絶対にプロへ行く』と決めたので、大学で一回り、二回り成長して、もっと注目されるように頑張っていきます」と大学を経て、目標のプロ入りを果たすことを誓った。

 数々のCMなどに出演している女優・モデルの姉、松井愛莉(21)は13年度の第92回全国高校サッカー選手権大会応援マネージャー。「お姉ちゃんが先に“選手権デビュー”していて、俺も絶対に出てやると思っていて、それが叶って良かった」という選手権は、将来のプロ入りへ向けてスカウトにアピールするためにも、大事な大会だ。高橋健二監督はチームの結果が出ない中でMF稲見哲行主将(3年)と松井の2人がひたむきにチームを引っ張ってきたことを感謝していたが、思いを込めて立つ舞台で松井はチームの勝利に貢献し、自身の存在も印象づける。

 プロ入りを決めている選手以上の活躍をし、「なぜ、あの選手がプロではなく大学へ?」と思わせるくらいのプレーができるポテンシャルがある。努力する姉の姿を刺激に、地元福島を離れて栃木で成長してきた3年間。“有名な姉”以上に名の知られるサッカー選手になることが目標だ。

「お姉ちゃんが凄くて、自分は全然まだまだなので、今は、お姉ちゃんの弟が松井蓮之だみたいになっているんですよ。逆の立ち場にしたいですね。もっと有名になって、『松井蓮之のお姉ちゃんが松井愛莉だ』、みたいにしたいと思っています。お姉ちゃんはいつも頑張ろうと思わせてくれる存在。ここまで本当にドラマだったりで頑張っているので、自分も負けたくないですし、頑張ってもっと高みを目指していきたい」。

 1年生だった2年前、松井は全国大会の1回戦から3回戦までベンチ入りしたものの、出場機会はなし。姉は試合会場まで応援に駆けつけてくれたというが、選手権での勇姿を見せることはできなかった。国体関東ブロック予選などでプレーする姿を見せることはできているが、昨年度は全国出場を逃したこともあって選手権は、まだだ。

 それでも、今回は年代別日本代表の注目選手として臨む選手権。「『(姉は)頑張ってね、応援に行くから本当に頑張ってね』と言ってくれている。僕も良いところを見てもらいたいですし、『俺、頑張っているんだぞ』と見てもらいたい。今まで以上のパフォーマンスをして、プロにも『アイツが大学卒業したら取りたい』と思われるように選手権は頑張ろうと思いますし、自分の夢が叶う場所だと思うので、全身全霊かけて頑張りたいと思います」。姉の存在もあり、クローズアップされることは間違いないが、プレッシャーを楽しみ、跳ね除ける覚悟がある。代表入りを姉に「凄いね」と言われても満足せずに前を向いて成長を目指してきた。“めっちゃ仲が良い”という3姉弟の末っ子は、逞しくなった姿を待望の舞台で支え、勇気づけてくれた家族やチームメート、スカウトたちにも披露し、目標の日本一を実現する。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

TOP