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小嶺監督は「甘い」と指摘も、長崎総科大附が「走り勝つ」。最注目FW安藤は選手権初ゴール!

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前半17分、長崎総合科学大附高はMF嶋中春児(右)が先制ゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.31 全国高校選手権1回戦 中京大中京高 0-3 長崎総合科学大附高 フクアリ]

 最注目ストライカーも選手権初ゴール。長崎総科大附が初戦を突破した。31日、第96回全国高校サッカー選手権1回戦で中京大中京高(愛知)と長崎総合科学大附高(長崎)が対戦。長崎総科大附がMF嶋中春児(3年)、MF小川貴之(3年)、そしてセレッソ大阪内定のU-20日本代表候補FW安藤瑞季(3年)のゴールによって3-0で勝ち、高川学園高(山口)と戦う2回戦(18年1月2日)へ進出した。

 島原商高、国見高に全国タイトルをもたらした名将・小嶺忠敏監督(長崎総科大附)は3-0で勝利した試合後、「完全にボール扱いとか支配された感じやね。カウンターでラッキーな点が入っただけであって消化不良だね。まだまだ、甘い」と指摘した。勝利したものの、内容には不満げ。それでも、複数の万能型選手を擁す長崎総科大附はポジションを入れ替えながら穴を埋め、走力で中京大中京を上回った。

 長崎総科大附は前半13分、ベンチスタートだった嶋中を早くもトップ下へ投入。直後の17分にはその嶋中が先制点を決める。クリアボールを中盤で拾ったMF小川貴之(3年)が右前方へ鋭いパス。手前の選手がスルーしたことでボールは小川の狙い通りに嶋中の足下へ入り、嶋中が豪快な右足シュートをゴール右隅へ突き刺した。

 だが、前半が終盤にさしかかると、長崎総科大附は中京大中京のポゼッションを奪いきれずに押し込まれ、MF棚瀬亮(3年)やFW本山遊大(3年)のシュートを浴びてしまう。DFが剥がされるようなシーンが続いたが、ここで活きたのが彼らの運動量。サポートとアプローチが非常に速い長崎総科大附は1人剥がされても人数を掛けて守り、逆にFW荒木駿太(3年)を中心としたカウンターで押し返していた。

 一方、注目FW安藤にDF笛川翔矢(3年)がマンマークをつける形で対抗する中京大中京は1点差で前半を終えると、後半立ち上がりに決定機を作り出す。7分、PA内左寄りの位置でパスを受けたMF田邉隆平(3年)が決定的な右足シュート。だが、これをGK湊大昂(3年)に阻まれると、直後にFW鎌田蓮(3年)が迎えたチャンスもシュートが右ポストをかすめて外れてしまう。

 追いつけなかった中京大中京に対し、ロングボールとセットプレーを中心に攻める長崎総科大附は勝負どころで貴重な追加点。後半23分、荒木の左クロスをファーサイドで受けた嶋中が強引に持ち込むと、最後は小川が左足シュートを叩き込んだ。ポジション変更でボランチから左SBに移っていた小川がPAまで攻撃参加してゴール。その公式戦初ゴールが貴重な追加点となった。

 その小川が「自分たちの強みは走ること。一人ひとりのアプローチだったり、裏に抜けた時の追う姿勢だったりは他のチームと違うと思います。走りのメニューをこなさないと試合に出れないというか、いざという時に踏ん張ることができない」と言い切るように、長崎総科大附の武器は走ることだ。毎週2度の“走りの日”は、1時間のトレーニング後に1kmを3分30秒以内×6~8本のメニュー。“上げ日”には土日も走り込んで鍛え上げてきた。

 中京大中京は交代出場のFW北野祐己(1年)がインパクトのある動きを見せ、GK吉田ディアンジェロ(2年)がギリギリのところで安藤のシュートを弾き出すなど食い下がったが、長崎総科大附が勢いある攻守でねじ伏せる。後半アディショナルタイム突入後の43分、右オープンスペースへ抜け出した荒木が飛び出したGKをかわすと、安藤へラストパス。安藤が後半6本目となるシュートを右足ダイレクトで決めて選手権初ゴールを記録し、チームは3-0で試合を終えた。

 得点記録更新を公言しつつも、「チームが勝ってくれればいい」とチームのために走る安藤や荒木ら各選手のハードワークが光る長崎総科大附。小嶺監督は「まだまだ甘すぎる。歴史が大事なんですよ。色々な失敗の試行錯誤、色々な問題を克服してずっと歴史を作ってきたチームは強いんですよ。で、勝つ確率が高い。ウチは赤子と一緒」と厳しいが、今大会で少しでも新たな歴史を築くことができるか。そのために、目の前の一戦一戦に集中して、全員で走り勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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