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ラストプレーで追いついた一条が2年連続16強!桐蔭学園は2度のリード守れずPK戦で散る

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粘り強い戦いぶりで同点に持ち込んだ一条がPK戦を制した

[1.2 全国高校選手権2回戦 桐蔭学園高2-2(PK2-3)一条高 等々力]

 第96回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦を行い、等々力陸上競技場の第1試合では桐蔭学園高(神奈川)が一条高(奈良)と対戦した。ラストプレーで2-2に追いついた一条がPK3-2で競り勝ち、2大会連続の16強入り。一条は明日3日の3回戦で米子北高(鳥取)と対戦する。

 2回戦からの登場となった両者の対決。14年ぶりの出場となった桐蔭学園は10番を背負うMF千葉恭馬(3年)が右膝前十字靭帯断裂で手術に踏み切り、大会への出場を断念した。神奈川県予選決勝で退場となったDF原川凌太朗主将(3年)を出場停止で欠場。エースと主将を欠いたが、桐蔭学園がカウンターから先手を取った。

 前半13分、MF目黒雄大(3年)の縦パスを受けたFW森山翔介(3年)が右サイドからドリブルで持ち上がり、そのままエリア内に進入。GKとの1対1から右足を振り抜くと、ブロックに入った一条DF生成光(3年)に当たってコースが変わったボールがゴールマウスに吸い込まれた。

 失点に絡んだ主将の生成は奈良県予選初戦東大寺高戦(4-0)で右膝前十字靭帯を損傷。負傷離脱から先発入りに漕ぎ着けたが、前田久監督は「ブロックが万全じゃなかった。キャプテンがいてくれると選手には落ち着きを与えるけど、20分を過ぎるとキツい」と判断。前半20分で生成を下げ、DF奥井瑞樹(3年)をCBに投入した。

 桐蔭学園のボランチコンビ、MF金子大樹(3年)とMF宍戸晃瑶に中盤で潰され、チャンスをつくれない一条。ファーストチャンスは前半25分、右45度の位置からFW竹島玲太(3年)が右足シュート。これは惜しくもゴール左に外れ、その後もなかなか相手の守備網を破れず、攻め込まれる時間帯が続いた。

 1-0で前半を折り返した桐蔭学園は後半開始と同時にDF内田脩平(3年)を下げてDF岩本卓也(3年)を投入。すると、反撃に出た一条は後半立ち上がりの同3分に試合を振り出しに戻す。後方からのロングフィードに抜け出し、右サイドをえぐったMF中井一尭(3年)が角度のない位置から右足を振り抜くと、GKの頭上を抜いたボールがネットを揺らした。

 1-1に追いつかれた桐蔭学園は2枚目の交代カードを切り、MF平田一真(3年)に代えてMF瀬賀凛太郎(2年)を投入。瀬賀は2トップの一角に入った。瀬賀、MF若林龍(2年)がスピードに乗ったドリブル突破で相手のマークをはがしてチャンスを増やすと、鮮やかな崩しで一条の粘り強い守備を打ち破った。

 後半31分、目黒のパスを受けた瀬賀が右サイド深い位置から狙い澄ましたクロス。エリア内に走り込んだ森山が高い打点からヘッドで叩き込み、2-1。DFからFWにコンバートした“3番”森山の連続ゴールで勝ち越しに成功した。再び突き放された一条は後半38分、MF石川航大(2年)の右クロスを竹島がフリーで叩いたがミートせず、痛恨の決定機逸。このまま試合終了と思われたが、終了間際に劇的な展開が待っていた。

 後半アディショナルタイム4分、石川が右後方から入れた浮き球パスをDF酒本哲太(2年)がヘッドでつなぐと、FW相坂恭杜(3年)がヘッドで叩き込み、劇的同点弾。ラストプレーで2-2に追いついた一条。「残り7分で『上がれ』と指示を出した」という前田監督の指示で183cmの酒本が前線に上がり、そのパワープレーが結実。直後に試合終了のホイッスルが鳴った。

 迎えたPK戦は先行の桐蔭学園1人目、2人目のキックをGK古川裕斗(3年)が連続でストップ。一条は1人目竹島のキックが右ポストを直撃し、3人目MF堀之内優輝(3年)のシュートはコースを読んだGK寺澤悠大(3年)に止められたが、3人が成功。PK3-2で上回った一条が2回戦突破を決めた。前田監督は「粘りが実ってよかった。最後まで粘ろうと伝えて、選手がその実感を持ってやってくれた」と胸をなでおろした。

 昨年度大会の3回戦も土壇場で2-2に追いついたが、PK3-4で佐野日大(栃木)に敗戦。同じ轍を踏まず、今年はPKを制した。「今日のゲームは仕方ないけど、できればPKじゃなく決着をつけたいです」。そう言って苦笑いした指揮官は「うちは推薦のない公立校。その子たちがこういう場で結果を出せるところまできた。感慨深い」と泥臭く接戦を制した選手たちを称えた。目標は昨年度の最高成績16強超え。明日3日の米子北戦で新たな歴史をつくれるか。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 佐藤亜希子)

●【特設】高校選手権2017

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