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過去の経験で動揺はなし!帝京大可児が2点ビハインドから大逆転、同校初の3回戦進出

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(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 全国高校選手権2回戦 滝川二高 2-3 帝京大可児高 駒沢]

 帝京大可児高(岐阜)が2点ビハインドから見事な逆転劇を演じ、前回大会8強の滝川二高(兵庫)を下した。同校最高成績となる3回戦進出を果たし、1月3日の3回戦では上田西高(長野)と駒沢で対戦する。

 ポイントとなったのは、0-2の前半21分に挙げた帝京大可児の1点目だった――。

「前半15分までに点を取りたい」滝川二と「前半15分までがカギ」と考えていた帝京大可児。結果は、滝川二の思惑通りになった。風上に立つ滝川二は、奪ったボールを手早く前線に送り続けて圧力をかける。前半10分、左CKからMF柏原悠人(2年)が左足で上げたボールをDF上出直人(3年)が頭で押し込み先制する。その6分後、今度は右CKから柏原が上げたボールから、今度はDF廣田一磨(3年)が頭で押し込み追加点。1回戦の実践学園高(東京A)戦と同様、試合序盤で2点のリードを奪ってみせる。

 滝川二の主将MF稲田丈太郎(3年)は「できすぎくらいの立ち上がり」と振り返る。しかし、「そこから守備の問題が消化しきれず…。なんとか前半を0失点で終わりたかったんですが…」。ここから試合は大きく状況が変わった。

 滝川二の松岡徹監督も「前半の失点がもったいなかった」と振り返るのは前半21分のことだ。帝京大可児のFW西尾綾祐(3年)が中央をドリブルで突破。ペナルティエリア付近で一度右にはたき、右SB佐藤光一郎(3年)がセンタリング。GKが弾いたボールを西尾が押し込んで1点を返した。思い切ったドリブルとスピードがもたらした美しいカウンターからのゴールだった。

「2失点した後に落ち着いて回せるようになり、いけるんじゃないかと感じました。それで前半のうちに1点返せたのが大きかった」と帝京大可児の主将MF本多訓大(3年)が語れば、「自分たちがセットプレーに弱いのは分かっていたので、普通に失点するよりダメージは少なかったです。逆に、2失点してから攻めるしかないとみんなの気持ちがまとまった。得点したカウンターの形も得意とするところ。自分たちの流れで前半を折り返せたのは大きかったです」とFW久保藤次郎(3年)も、2失点がいい意味で吹っ切れたと語る。

 前半早々に2失点すれば気持ちが折れかねないほど追い込まれるものだ。なぜ、逆に強気になれたのか。帝京大可児の堀部直樹監督は言う。「最初はちょっと“滝川二”に名前負けしていた部分もありました。プレスも厳しかった。でも、選手たちで話し合ってワンプレー、ツープレーとしていくうちに落ち着けました。過去に0-2から一度ひっくり返したゲームもあるので」。

「過去に0-2から一度ひっくり返したゲーム」とは、今年度のプリンスリーグ東海第3節(4月22日)の静岡学園高(静岡)戦のことだ。先に2点を先制された後、立て続けに3点を奪って逆転。その後、ラストプレーで追いつかれて同点に終わったものの、この試合の経験がこの日の選手たちを動揺させない糧となっていた。

「調子がよければドリブルに自信はある。前半最後のあたりからいける感触はあって、後半は大丈夫だとハーフタイムから思っていた」という久保の印象は、帝京大可児の前線の選手に共通した認識だったのではないか。

 1点を返し、かつ風上に立ち勢いを加速させる帝京大可児と、受けて立つ形になった滝川二。帝京大可児は久保に加え西尾、そしてMF井上颯人(3年)、FW大森颯樹(3年)がドリブルで積極的に仕掛ける。滝川二はマークにはついているが、後手に回り止められない。

 すると後半5分、帝京大可児はペナルティエリア内で倒されてPKを獲得。大森颯が決めて同点とすると、その後も攻勢を続ける。滝川二はフリーでシュートを許すシーンも作られ、GK樫野智哉(3年)が必死の好セーブでしのぐシーンが続いた。

 だが、そんな我慢も後半31分、ついに瓦解。帝京大可児の堀部監督が「前半は消えていましたが、久保と場所を変えてからフリーになれるようになった」と言う通り、トップから左サイドにポジションチェンジし、よりスピードが活きるようになった大森颯が久保とのワンツーで抜け出すと、絶妙なタッチでゴール前に進出し、落ち着いて逆転ゴールを決めた。

 滝川二としてはプラン通りに試合が進んだだけに、ダメージが大きい。1回戦同様、5人の交代枠をフルに使い切り、選手のポジションを変えてリズムの変化を試みる。しかし、風下に回って相手からのボールが流れる分、陣形が間延びしてしまったことも影響したか、前半立ち上がりのような圧力を生み出せない。結局、セットプレー以外は破綻をきたさなかった帝京大可児の守備陣を崩しきるには至らなかった。

 帝京大可児の初となる3回戦進出の要因は何だったのか。一つは多くの試合を戦ってきた経験値。そして、もう一つはポゼッションに勝利へのこだわりを加えた点だ。「前を向いたら仕掛ける。フリーなのにパスはしない」(堀部監督)ことを徹底してきたという。今年のチームの前線にはドリブラーが揃っていることも強みだ。フリーでなくても果敢に仕掛けたドリブルが、この試合ではことごとく吉と出た。

 これまで試合で成長してきた帝京大可児にとって、この試合でまた一つ自信を深めたことだろう。このチームにはまだ伸びしろがある。初の8強入りも視野に入ってきたといえるのではないか。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校選手権2017

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