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[MOM2389]帝京大可児FW大森颯樹(3年)_「ファーストタッチが完璧すぎて緊張した」逆転弾含む2ゴールで歴史を塗り替える!

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(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 滝川二高 2-3 帝京大可児高 駒沢]

 帝京大可児高(岐阜)の歴史を塗り替えた立役者は、FW大森颯樹(3年)だった。

「0-2になって、正直ヤバいと思いましたけど、プリンスリーグなどでレベルの高い試合をしてきたし、逆転したこともある。まだ逆転できると思っていました。滝川二は名門で伝統校。いつもと違う雰囲気、そして緊張がありました。そのせいか、自分たちの力が最初から出せず…。でも点を取られてからスイッチが入りました」

 同点に追いついた後半5分のPKのシーン。彼が倒されたわけではなく、1回戦ではFW久保藤次郎(3年)がPKを蹴っていた。だが、この日は大森颯の手にボールがあった。「プリンスリーグで蹴っていたのもあり、1回戦では久保くんが蹴って外していたので。自分が(蹴るつもりで)行きましたが、みんなにも『頼むぞ』と言ってもらいました」。同級生を「くん」付けで呼ぶところに人間性がうかがえる。

 このPKを落ち着いてゴール左下に沈めると、その後、存在感はさらに増すことに。ワントップから左にポジションを変えたことで持ち前の強気なドリブルが輝きを増した。他の選手もドリブルで仕掛けチャンスを作り続けた。だが、なかなか逆転ゴールが奪えない。それでも、「焦って蹴らないで、繋いで崩す。ずっと自分たちのペースでやり続けた結果がゴールになった」と大森選手は言う。

 その待望の逆転ゴールは後半31分だ。久保とのボールの受け渡しからチャンスを作った。「相手も前掛かりになっていたので、その裏にボールを置ければいいと思っていましたが、ファーストタッチが完璧すぎて緊張しましたけど、決められて良かったです」。前回大会8強、そして選手権優勝経験もある滝川二の圧力を跳ね返す、見事な逆転ゴールだった。

 じつは今年のチームは「雰囲気が悪くなると崩れる」と大森颯は言う。「今日は燃えることができましたが、紙一重のところです。前半1点目を返した時はいける!という空気になり、ハーフタイムのロッカールームも持続していました」。この雰囲気作りは、夏のインターハイ初戦で京都橘高(京都)に敗れて以来、意識してきたことだという。

「特に失点した後、自分のことではなくチームのことを考えられる選手が増えました。みんなで言い合えるチームなのですが、それが時にはみんなで集中攻撃してしまうこともあるし、自分もされたことがあります。でも、他人のせいにはせずに、常にゴールを目指す(最適な)選択ができるようになりました」

 このインターハイでの敗戦に関しては、大森颯自身、苦い記憶がある。「前半30分に自分が一発レッドで退場してしまって…。10人になってもいいプレーをしてくれていたんですけど、1人足りなかったのが響いて負けてしまった。あの瞬間、何も考えられなくなりました」とトーンを下げた。

 ただ、この夏の痛い経験からチームはポジティブシンキングを身につけ、自身は選手権で2ゴールを記録するに至った。3回戦では京都橘と対戦する可能性もあったが、相手はその京都橘を破った上田西高(長野)。「僕が勝たせられるように」。大森颯の成長ストーリーはまだ終わらない。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校選手権2017

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