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安藤瑞季が3戦連発!! “マンマーク作戦”の長崎総附、シュート15本の青森山田を完封で下す

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初の8強入りを果たした長崎総合科学大附高

[1.3 全国高校選手権3回戦 青森山田高0-1長崎総合科学大附高 フクアリ]

 第96回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦8試合を行った。フクダ電子アリーナ(千葉)の第2試合では、長崎総合科学大附高(長崎)が前年度覇者の青森山田高を1-0で下し、初の8強進出を果たした。5日に行われる準々決勝では、流通経済大柏高と浦和駒場スタジアムで対戦する。

 青森山田はFW中村駿太(3年)とMF郷家友太(3年)、長崎総附はFW安藤瑞季(3年)と、すでにJクラブへの加入が内定している攻撃陣が対峙したこの一戦。序盤はロングボールが飛び交い、互いに決定機をつくれないなか、試合を動かしたのは長崎のエースの個人技だった。

 前半25分、DF田中純平(3年)の縦パスをハーフライン付近で受けた安藤は、完璧なトラップでボールを収めて前方にターン。相手マークを引きずりながらゴール正面にドリブルし、PA外で力強く右足を振り抜くと、低く押さえたシュートはゴール右隅に突き刺さった。小嶺忠敏監督も「よく点を取ってくれた」と満足そうに称えた一発で、初戦からの連続ゴールを3試合とした。

 エースの得点で先制に成功した長崎総附は、この試合で相手エースを封じる策も展開する。立ち上がりから郷家、中村という強力なアタッカーに対し、それぞれDF嶋中春児(3年)、DF諸石一砂(3年)がマンマーク。これに苦しんだ青森山田は、良い形でボールを回すことができない時間帯が続いた。

 それでも青森山田は、セットプレーを起点にチャンスをつくった。前半32分、郷家がロングスローでゴールを脅かすと、同34分にはCKのこぼれ球を郷家がシュート。これは惜しくも右ポストに阻まれたが、同38分には最終ライン裏に流れたボールにMF田中凌汰(3年)がスライディングで詰め、シュートはゴールポストをかすめた。

 1点リードでハーフタイムを迎えた長崎総附だが、後半6分、頭を悩ませるアクシデントが起こる。空中戦を競り合った安藤がファウルを犯し、主審はイエローカードを提示。2回戦の高川学園高(山口)戦に続いて今大会2枚目の警告となり、もし勝ち上がっても準々決勝は出場停止となることが決まった。

 その後もペースを握ったのは青森山田。後半8分、相手を押し込んだ状態でMF檀崎竜孔(2年)が左サイドを突破し、グラウンダーで素早いクロスを送ると、ファーサイドでMF浦川流樺(3年)が飛び込む。ところが、伸ばした足にボールを当てることはできたが、シュートは惜しくも右へ外れた。

 さらに青森山田は後半10分、田中のシュートがこぼれたところに中村が反応するも、シュートは枠外右へ。同13分には、中盤での奪い合いでボールが流れ、ゴール前に走り込んだ中村が決定的なシュートを放ったが、オフサイドの判定が下された。

 後半24分、青森山田は浦川に代えて195cmのDF三國ケネディエブスを最前線に入れ、さらに攻撃に比重をかける。すると直後の同25分、右サイドを駆け上がったDF鍵山慶司がアーリークロスを送ると、ゴール前で三國が高い打点でヘッド。ボールはゴール右隅を鋭く突いたが、GK湊大昂(3年)が横っ飛びで弾き出した。

 劣勢が続く長崎総附は後半28分、安藤が相手DFを引き連れながらも単独突破でゴール前に侵入し、時間をつくりながら陣地を回復させる。そして同32分、三國の高さに対応するため、負傷の影響で今大会初先発となったFW西原先毅(3年)を下げ、183cmのDF柏木澪弥(2年)を投入した。

 1点が必要な青森山田は、後半35分すぎから前線に人数をかけたパワープレー攻勢を展開する。同36分、DF佐藤拓海(3年)に代わってDF住田将(3年)を入れると、郷家と三國をターゲットにロングボールを配給。リスクを負った攻撃で相手ゴールに迫った。

 一方の長崎総附は後半36分、カウンター気味に抜け出したFW荒木駿太(3年)が2人抜きからゴールを襲うと、同37分には、荒木のパスを受けた安藤が右サイドを突破し、ほとんど角度のないところから左足でシュート。GK坪歩夢(3年)が横っ飛びでキャッチしたが、意表を突いた判断で小嶺監督も評価しているという「意外性」を見せつけた。

 それでも青森山田は攻め続ける。しかし後半38分、田中がPA内でGKと1対1を迎えると、湊が身体を投げ出してビッグセーブ。同39分、郷家の突破からこぼれたボールを三國が右足で狙うも、これも湊にキャッチされてしまい、なかなか得点を奪うことができない。

 このまま試合を終えたい長崎総附は後半40分、コーナーフラッグ付近でキープを開始。ボールを持つ安藤を荒木とDF岩本蓮太(3年)が囲み、青森山田の守備陣を足止めする。それでもアディショナルタイム2分、青森山田は相手のパスをインターセプトした郷家がPA内右に展開し、受け取った中村が右足で狙った。

 そして、ラストプレーにも見せ場。アディショナルタイム3分、安藤の突破を止めたDF小山内慎一郎(3年)がボールを持ち上がり、ゴール前に縦パスを送ると、相手DFに阻まれながらキープした中村がドリブルで攻め込み、フリーの状態でPA内から左足シュート。しかし、これは惜しくも枠外へ。ここで試合終了を告げるホイッスルが鳴り、青森山田の戦後8校目となる連覇の夢は3回戦で絶たれた。

 青森山田の黒田剛監督は試合後、計15本のシュートを放ちながら無得点に終わった攻撃について、「フィニッシュのところの焦りは正直あったと思う。あれだけ決定打がありながら、決められなかったのは1年間でも経験がない。でも、こんなゲームがあるのがサッカーの不確定性ですね」と悔しそうに振り返った。

 一方の長崎総附は、安藤の兄であるFW安藤翼(駒澤大)が在籍していた2012年の3回戦進出を上回り、史上初めての8強進出を達成。試合後のインタビューで「まぐれですよね。神様が勝ちを与えてくれた」と述べ、会場をどっと沸かせていた小嶺監督は「いい歴史が作れた」とほほえんだ。

 未知なる準々決勝の相手は、夏の総体で1-2で敗れた流経大柏。安藤を欠く中での対戦となり、72歳の名将は「どう持って行くか……」と懸念も見せたが、「もうチャレンジですよ。失うものはない」と意気込みも。70歳の本田裕一郎監督との対戦については「年寄り同士の監督で、老人会です」とおどける余裕も見せていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 竹内達也)

●【特設】高校選手権2017

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