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交代出場直前の“凡ミス”で指揮官から説教。それでも、3分で決めた“努力の男”釣崎に前橋育英大興奮!

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後半アディショナルタイム、前橋育英高MF釣崎椋介がゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.6 全国高校選手権準決勝 上田西高 1-6 前橋育英高 埼玉]

 前橋育英高の山田耕介監督は「地道にやってきた」と評し、MF田部井悠(3年)も「練習で手を抜いたことがない」と彼の努力について口にする。そのMF釣崎椋介(3年)が今大会初出場。後半43分の投入から3分後のアディショナルタイム1分、埼玉スタジアムのゴールを破った。

 敵陣中央からドリブルで仕掛けた釣崎はボールを失いながらもタックルで奪い返し、相手がクリアしようとするキックをチャージしてPAへ。さらにクリアしようとするGKより一瞬速く足を伸ばして抜け出すと、「気づいたら誰もいなくて」というゴールに右足シュートを流し込んだ。

 すると、ピッチのチームメート、そしてスタンドの控え部員たちはこの日一番というほど大喜び。田部井悠は「(努力してきた)こういう選手が点、を取るのは嬉しい。みんな喜んでいた」と振り返り、釣崎は「試合に出るか分からないのにずっと応援席からコールとかしてもらっていた。(ゴールの瞬間は)全然実感なくて、今もあまり実感がない。嬉しかったです」と微笑んでいた。

 その釣崎は投入直前に“凡ミス”を犯し、試合中のピッチサイドで指揮官から怒られていた。「自分、(試合に出る準備として)普通に着替えていたら、『早くしろ』と言われて、凄くテンパってしまって……。(着替えて直接第4審判のところへ行ったら、)監督に『指示を言われていないのに、オマエはどうやって試合に出るつもりだ!!』と」。

 憧れの全国のピッチを隣にして、山田監督から“当然の”厳しい指摘。ただし、「監督に出る前に怒られちゃって、『やるしかない』と」数分間を全力プレーした釣崎がゴールを引き寄せた。

 釣崎はサンフレッチェ広島ジュニアユース時代、怪我とレベルの高いチームメートたちの中で十分な活躍をすることができなかった。広島から前橋育英へ進学した先輩MF長澤昴輝(現東洋大)の後を追って、前橋育英に進学。全国からタレント集う前橋育英でもなかなかAチームでの出場機会を得られず、悩んだという。

 だが、「自分で決めて広島から来ているので、途中で投げ出したら親に合わせる顔もないので3年間やり切ろうと自分の中で決めていた」釣崎は仲間の支えもあって、3年間努力を全う。そしてこの日、27番を背負ってピッチに立ち、一つ結果を残した。

 地元・広島を離れ、群馬で努力してきたMFにとっても選手権は決勝戦のあと1試合だけ。この日、チームメートを大喜びさせた182cmMFは「出られたら、また決められるように頑張りたいです」。支えてくれた仲間、コーチたちと笑顔で選手権を終える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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