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「この先絶対に忘れない」。決勝0-5大敗から364日、臥薪嘗胆の日々過ごしてきた前橋育英が笑顔の初優勝!

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昨年涙した決勝戦。前橋育英高は今年、満面の笑顔で終えた。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.8 全国高校選手権決勝 流通経済大柏高 0-1 前橋育英高 埼玉]

 昨年1月9日の0-5敗戦から364日。臥薪嘗胆の日々を過ごしてきた前橋育英高(群馬)が、1年前に涙を流した決勝戦を笑顔で終えた。

 前回大会は準決勝まで無失点。だが、青森山田高(青森)との決勝戦で前橋育英は決定的なチャンスをGK廣末陸(現FC東京)のファインセーブに阻まれるなど、9本のシュートを放ちながら得点できず、逆に青森山田にシュート8本で5点を奪われて0-5敗戦。2年生エースだったFW飯島陸(3年)は泣きじゃくって悔しがり、当時の主将・MF大塚諒(現立教大)は「埼スタで5-0というのは忘れられないと思う」と悔しさを胸に卒業していった。

 0-5敗戦から約1か月後の日本高校選抜候補合宿。下級生ながら守備の柱として選手権決勝に出場していたCB松田陸(3年、G大阪内定)は、「選手権では決勝で悔しい思いをした。あの思いはこの先絶対に忘れないと思うので、それを忘れずに今年はあの舞台で優勝してケリをつけたいです」と口にし、飯島は「最後に青森山田に大敗したことは忘れられないし、忘れちゃいけないので、それを来年に活かさないといけない」と準優勝した喜びよりも、決勝での大敗を1年後に活かす決意を語っていた。

 MF田部井悠(3年)は0-5敗戦の映像を幾度も見て、携帯電話にダウンロードしていたという。選手たちは常に0-5の悔しさを頭の中に置いて日常を送っていたが、それでも薄れてしまう時もあった。山田監督は「0-5は練習試合でもない(ような敗戦)。忘れたような雰囲気もあったのでまた映像見せて、『ほら忘れてるだろ』、とやっていました」。ことあることに「だから、0-5で……」と指摘しながら、一年間、屈辱的な敗戦をエネルギーにして過ごしてきた。

 今回の選手権全国大会で7得点を挙げて得点王に輝いた飯島を中心とした攻撃面が注目されがちだが、チームは5原則、「球際、切り替え、ハードワーク、声、競り合い・拾い合い」を徹底。1年前の決勝で甘さのあった部分を磨き抜いてきた。6-1で快勝した上田西高(長野)との準決勝ではシュート1本で1失点。それをDF陣は本当に悔しがり、監督も残念がっていたが、これはよほどのこだわりを持ってやってきたからこその感情だった。

 大会期間中も各選手が1年前の0-5敗戦について口にしていた。その雪辱の舞台となった流通経済大柏高との決勝戦では1年前同様にチャンスを作りながら、なかなか1点を奪うことができない展開。それでも選手たちは、「球際は日本一」(田部井涼)という流経大柏相手に身体を張り続け、被シュートわずか3本で90分間を無失点で終えた。そして、2年生FW榎本樹が後半アディショナルタイムに決勝点。「去年の決勝の悔しさは忘れたことがないですし、その悔しさがあったからこの舞台に戻って来れた」と田部井悠が語った全国決勝で、今年は白星をもぎ取った。

 歓喜に湧く仲間たち、そして自分たちを祝福してくれる観衆の中で、田部井涼は「ずっとこの光景を見るためにやってきたので嬉しいです!」とコメント。決勝の悔しさを1年後の決勝で晴らすために厳しさを持ってチームを磨き、努力してきた前橋育英の戴冠だった。 

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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