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「【先読み】は外れてからが勝負」遠藤保仁最新刊から一部紹介!

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今月28日に38歳の誕生日を迎える遠藤保仁

 MF遠藤保仁(G大阪)の最新刊『「一瞬で決断できる」シンプル思考』(本日発売)の中から一部を抜粋してお届けします。

 先を読む力に長けている評される遠藤が、ピッチで混乱しないために心がけていることとはーー?


 当然、先読みが外れることもある。むしろ当たることのほうが珍しいくらいだ。敵味方合わせて22人の選手がたえず動き、それぞれが先読みをしながらプレーしているわけだから、自分の思い通りになるほうが確率的にはずっと低い。

 たとえば、パスを出そうとしていたスペースに敵の選手が入ってくることもあるし、僕が出したいパスに味方の選手が反応してくれないときもある。しかし、先読みが外れても、ゼロに戻るだけである。先読みが外れたからといって、相手に負けたことにはならない。先読みが外れたなら外れたで、すぐさま別の選択肢を模索し、状況に応じた最善のプレーをするだけである。

 先読みが外れると、途端に混乱し、自ら不利な状況に追い込まれてしまう選手もいる。サッカーはプラン通りに進むことはまれなのだから、いちいちパニックに陥っていたらまともに戦うことはできない。

 追い込まれてしまうのは、先読みの選択肢をひとつしかもっていないからだ。だから、先読みが外れても動揺しない秘訣は、選択肢をたくさんもつことに尽きる。ひとつでも選択肢が残れば、自信をもってプレーをすることができるはずだ。

 先読みによる予測は外れて当たり前であると同時に、絶対的な正解は存在しない。たとえば、僕がパスを受ける前に「味方のあの選手が右前のスペースに走り込んだところにパスを出せば、フリーになって得点のチャンスにつながる」と考えたとする。しかし、いざパスを出そうと思ったとき、その味方の選手は前のスペースに走る気配を見せなかった。そのままパスを出しても通らないと判断した僕は、別の選択肢を選ぶことになった……。

 このような場合、僕は「なんで右前のスペースに走り込まないんだ! チャンスを棒に振ったじゃないか」と相手を責めることはない。同じピッチに立っていても、自分が思い描く絵と他の選手が思い描く絵が一致するとはかぎらないのだ。もしかしたら、先の味方の選手は、自分がそのスペースに走ることで、自分の後ろのスペースが空いてゴールに直結するようなピンチを招きかねない、と判断したのかもしれない。その選手がそう判断したのなら、それが正解なのである。

 つまらない凡ミス以外、基本的に、選手が選択したプレーはすべてが正解だと思っている。自分の予測が正解で、他の選手の予測が不正解である、ということは絶対にない。自分の予測が不正解であることも十分にありえる。だから、試合中であっても試合後でも、「なんでそんな動きをしたんだ! おまえが俺の言う通り動いていたらゴールできたのに」などと責めることは絶対にない。

 ただし、自分が予測して思い描いている絵と、他の選手が思い描いている絵を確認し、微調整することは大切にしている。「さっきのプレー、こういう選択肢もあったぞ」と相手に伝える。場合によっては、相手から「いえ、こういう選択肢もありました」という言葉が返ってくることもある。

 大切なのは、それぞれの思い描いた絵を確認し合って、「色彩」を合わせることだ。このような一見単純ともいえるような作業を繰り返すことによって、それぞれのビジョンが合致して、うまく連動できるケースが確実に増えていく。自分の絵を押しつけることは簡単だが、そうすると、相手の選手は同じ色しか使わないようになる。色彩はバラエティーに富んでいるほうが、いいに決まっている。攻撃のバリエーションが増えて、敵の裏をかくこともできる。

 一般社会でも上司が部下に、考え方ややり方を押しつけるのは簡単だと思う。それは仕事の効率化につながるかもしれないが、言われたことしかしない部下を生み、反発する抵抗勢力を生むリスクもあるはずだ。そうなれば組織の力は劣化してしまうのではないだろうか。一方で、チームで結果を出すような仕事の場合には、こうしたイメージの共有を定期的に行うと成果が挙がることも多くあるのではないだろうか。

<書籍概要>
■タイトル:「一瞬で決断できる」シンプル思考
■発売日: 2017年12月22日
■発行元:KADOKAWA  
■定価:本体1300円+税  
■判型:四六判、208ページ
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