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「郁万がいないから守れないとは言わせたくない」。新主将長期離脱の流経大柏、地力をつけて昨年の再現を

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前半39分、流通経済大柏高はFW芹田悠真が右足で先制ゴール

[2.3 ジャパンユーススーパーリーグ 流通経済大柏高 2-1 西武台高 流通経済大柏高G]

 3日、選手権準優勝の流通経済大柏高(千葉)と西武台高(埼玉)がジャパンユース プーマ スーパーリーグで対戦。後半終了間際にMF熊澤和希(2年)が決めた決勝点によって流経大柏が2-1で競り勝った。

 大黒柱不在の中でどれだけ地力をつけられるか――。流経大柏は、後半アディショナルタイムの失点によって全国準Vに終わった選手権の悔しさを持って新チームがスタート。だが、新主将に就任した日本高校選抜候補CB関川郁万(2年)が将来のためにかねてから痛めていた膝を手術し、昇格した高円宮杯プレミアリーグ序盤戦やインターハイ予選を欠場する見込みとなっている。

 攻守における圧倒的な高さと強さによって流経大柏の17年度インターハイ優勝と同選手権準優勝に大きく貢献した関川の長期離脱。加えて副主将のGK猪瀬康介(2年)も負傷離脱中と新チームにとっては非常に厳しいスタートとなっている。その中で他の選手がどこまで個とチームを高められるかが、「目標は残留ですね」(本田裕一郎監督)というプレミアリーグやインターハイでの上位進出への鍵となりそうだ。

 新チーム3試合目となったこの日はボールを奪った勢いでシュートやクロスまで持ち込むシーンが幾度かあり、前方が詰まったところで素早くサイドチェンジすることなど狙いとする部分を表現できていたところもあった。だが、選手、スタッフも「まだまだ」という共通認識。注目の大型MF大塚悠平(2年)を中心に素早くボールを動かして狭い局面を打開し、大塚の正確なミドルパスやショートカウンターからFW関口崇太(2年)や右FW若谷拓海(2年)が鋭く抜け出してくる西武台に主導権を握られる時間帯があり、背後を取られて決定機を作られる場面もあった。

 それでも前半37分、流経大柏は右サイドでボールを持った熊澤がPAへ縦のループパス。これに走り込んだFW芹田悠真(2年)がダイレクトで思い切りよく右足を振り抜く。ファインショットがゴール左隅に突き刺さり、流経大柏が先制した。

 流経大柏は守備面でも選手権で右SBとして先発していた西尾颯大(2年)と須永竜生(2年)のCBコンビ中心に得点を許さず、攻撃面では熊澤のサイドチェンジなどから数的優位を作って相手を押し込んでいく。ただし、西武台もこの日が初先発だというGK高橋クリス(1年)が高い身体能力を活かしてハイボールを収め、本来のボランチではなくCB起用された松井豊(2年)が空中戦で健闘。MF齋藤紀樹(2年)の好カバーリングなどもあって追加点を許さない。

 迎えた後半33分、西武台は右中間へ抜け出した関口へ若谷がパス。前線でキープした関口の落としを受けた若谷が、絶妙なファーストタッチから左足シュートをゴール右隅に突き刺して同点に追いついた。

 だが、夏冬の全国ファイナリストはここから突き放す力を持っていた。34分に芹田の突破から熊田が迎えたチャンスは決めきれなかったものの39分、速攻から交代出場の左SB間洋登(2年)が上げた左クロスをファーサイドの熊澤が頭でゴール左隅にねじ込んで決着をつけた。

 関川が離脱中のため、現状で流経大柏の選手権経験者は熊澤と西尾らわずか。新チームの副主将を務める熊澤は「選手権がどうだったとか伝えないといけない。この雰囲気では全然ダメだと思うし、経験者がもっと引っ張っていかないといけない」と引き締める。先輩たちの活躍に続けとモチベーションは高いものの、チームにはまだまだ厳しさが欠けていると感じている。

 それでも、関川の不在が良い意味でチームに緊張感をもたらしているのは確か。芹田は「(自分たちは下級生時から)関川がいないからダメなのかと言われることが多かったので、やってやろうという人は多いと思います」と語り、西尾は「郁万がいないから守れないとは言わせたくないです。(上級生は)ラストなんだからもっとやらないといけない。練習からもっと激しくやって最後後悔しないようにしなければいけない。日本一になれなかったけれど、あと一歩のところが大事になると思う」と意気込んだ。

 新チームはここまでの3試合全てで失点中。抜きん出た個がいない分、全員で走り、数的優位を作って相手を攻守で上回る。今はより意識を高めて日々全力で取り組むだけだ。昨年は主将のMF宮本優太(3年)が膝の手術で長期離脱中に地力をつけて宮本復帰後の躍進、インターハイ優勝やプレミアリーグ昇格、選手権準優勝に繋げた。今年も、大黒柱の関川が不在の間に個とチームの武器をしっかりと磨き、昨年の再現、そして先輩たちが達成できなかった選手権日本一を目指す。

(取材・文 吉田太郎)

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