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絶対的エース“退団”でも都制覇…三菱養和、17歳G大阪FW中村敬斗は「一番の見本」

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2年生ながら三菱養和SCユースの得点源を担い、G大阪に加入したFW中村敬斗(写真は昨年7月)

[2.11 東京都クラブユース選手権決勝 三菱養和SCユース 2-0 東京Vユース 味フィ西]

 三菱養和SCユースは今季、本来ならば3年生としてチームを引っ張るはずだったFW中村敬斗(17)がガンバ大阪に入団したため、最大の得点源を欠く形でシーズンを開始した。それでも、最初の公式大会となった東京都クラブユース選手権で、9年ぶりの優勝を達成。増子亘彦は決勝の試合後、あらためて中村の存在の大きさを強調しつつ、不在を乗り越えるチーム作りの現状を口にした。

 U-17日本代表として出場したU-17W杯で4得点を記録し、その名を一躍世界に知らしめた中村は、“日の丸”活動で所属チームを空けることも多かったが、昨季のプリンスリーグ関東では13得点を記録。三菱養和の3位入賞、プレミアリーグ参入戦の出場権獲得に大きく貢献し、1学年早める形でG大阪加入を勝ち取った。

「彼はたしかに才能があったかもしれないが、何より努力をしていた。小さいころから食事、勉強に取り組んできた。プロになるためには節制、犠牲にしなきゃいけないことがいっぱいある。アイツの良いところはサッカーが大好きで、誰よりもサッカーが一番だったこと」(増子監督)。その成長を間近で見てきた指揮官は、教え子が果たした異例のステップアップに目を細める。

 中村がプリンスリーグで挙げた13得点はチーム全体の約4割。そのため戦力面では大きな打撃となっているが、続けて出てきた言葉からは“不在”の効用も見て取れた。「私たちにとって、一番の見本になっています」(増子監督)。努力をすればうまくなれること、サッカーと向き合うことで結果につながること――。共に戦ってきた選手たちが成長するための指針になっているというのだ。

「3年生になったからといって、えらくなったわけじゃないんだぞ。責任感が強くなっただけだから。選手たちには、そうやって言い聞かせています」。現在はシーズンの本格化に向けて、チーム作りを進めている段階。それぞれの選手たちに個別のアプローチもしているというが、一足先に階段を上った“同級生”の存在が一役買っているようだ。

 そんな前エースの将来に「G大阪は監督が若手を進んで使ってくれるので良いんじゃないですか。やると思いますよ」と期待を寄せた指揮官。今季の目標は昨年12月に果たせなかったプレミアリーグ参入だ。「悔しい思いをした選手たちが半分は残っていますから」(増子監督)。未練を残しながら巣立った仲間の思いも背負って、新生三菱養和が上々の滑り出しを見せている。

(取材・文 竹内達也)

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