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「ペップの後を追っているようなもの」…元日本代表MF率いる日体大柏は世界から学び、現場で試す

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ハーフタイムに選手たちと話す日体大柏高の酒井直樹監督

[3.17 イギョラ杯 日体大柏高 2-0 FC東京U-18 小平]

 後に選手権準優勝を果たすことになる流通経済大柏高を追い詰めた一戦から約4か月、日体大柏高は変貌を遂げた姿を見せていた。昨季2冠のFC東京U-18相手に奪った2ゴールはいずれも鋭いカウンターから。チームを率いる酒井直樹監督が意識しているのは、サッカー界を牽引し続ける稀代の名将の存在だ。

 日体大柏は昨年11月、高校選手権千葉県予選の準決勝で流経大柏との“柏ダービー”を戦った。相互支援を行う柏レイソルアカデミー仕込みの落ち着いた試合運びを展開し、得点こそ奪えなかったが規定の100分間をイーブンスコアで終了。PK戦は2-4で敗れ、惜しくも決勝進出を逃したが、全国2位に輝くチームを相手に熱戦を繰り広げた。

 当時ピッチに立ったメンバーの大半は卒業してしまったが、ベンチやスタンドで見ていた者にとっても、手応えと悔しさの両方を得た一戦だった。「あの経験は潜在的に良いパワーとなっていると思います。きつくなった時、みんながスイッチを入れる契機になりますよね」(酒井監督)。気持ちは受け継いで戦っているようだ。

 だが、受け継ぐものはしっかりと残しつつ、サッカーのスタイルは進歩を遂げようとしている。昨季は「先輩たちは技術もすごかったし、パスもうまかったし、中盤で自由にプレーする柏レイソルに似たサッカー」(MF伊関新)を指向。しかし、FC東京戦で目立ったのは鋭い速攻だった。それは「スプリント能力は今年のほうがある」(酒井監督)という個性を生かした方向性だ。

「チャンピオンズリーグ(欧州CL)を見ていても、昨年からいろんな変化がある。世の中が当たり前のように動いていて、戦術的なパターンだって増えている」。スタイルを進化させていく必要性を強調する指揮官は「サッカーに正解はないので、相手を困らせるために……というのが大事」と特定の戦術に固執するつもりはない。

 また、続けて口にしたのはマンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督の名前だ。「バルサ、バイエルン、シティ……僕はペップの後を追っているようなものですね。アラバが、ラームが、そこに来るのかって。本当に衝撃です(笑)」。ポジションにとらわれず、それでも配置にこだわり続ける名将を仰ぎ見ながら、「ポイント(局面)で選手の特長を出せる」ことの重要さを再認識しているという。

 現代サッカーの最先端を追い求める試みは、選手たちにも良い刺激を与えている。決勝点を挙げた伊関はチーム戦術について「中盤でファジー(あいまい)なポジショニングを」「逆サイドにボールがある時に絞りすぎないように」などと話し、立ち位置を細かく意識している様子。酒井監督は「昔みたいにDVDを買うんじゃなくて、いまの子は言えばスマートフォンですぐに見られるからいいですよね」と優しげな笑みを浮かべていた。

 もっとも、この試みを誰かの模倣だけで終わらせるつもりもない。「結局はそこから自分たちのオリジナリティーを作っていかなきゃいけない。だからこそ、勉強し続けなきゃいけないんです」。“義務的”な表現とは裏腹に、そう語る表情は充実感そのもの。元日本代表MFの指揮官は11月の大舞台で宙に舞うため、「良い選手がいっぱいいます」と信頼を寄せる集団と共に進化を続けていく構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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