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昨季プリンス1勝17敗の藤枝明誠、指揮官は『土地まで奪われた』からの再起を誓う

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藤枝明誠高の松本安司監督

[3.19 イギョラ杯決勝 昌平高0-0(PK4-1)藤枝明誠高 味フィ西]

 イギョラ杯を終えた藤枝明誠高は大きな財産を手にしたようだ。松本安司監督は現段階を「建物だったら、ようやく土地が買えるくらいになった」と表現。MF平山湧喜主将(2年)は「目指すのは超攻撃的なチーム」と述べ、“苦境”からの再起を期している。

「よく何かが『崩壊した』って言いますけど、ウチは全てを失ってしまった。家だったら『崩れた』だけじゃなくて、土地まで奪われたような感じですよね」(松本監督)。

 異変は昨季、突然のように訪れた。単に全国大会出場を逃したというだけでなく、プリンスリーグ東海での最終成績は1勝17敗。18試合で挙げた得点数はわずか6、失点は77。まさに、惨敗と呼ぶにふさわしい最下位フィニッシュだった。

「勘違いをしていたんでしょうね……」(松本監督)。異変の始まりは一昨年度の躍進劇だった。プリンスリーグ東海では参入初年度ながら3位。冬の選手権では、群雄割拠の静岡県予選を7年ぶりに勝ち抜き、全国大会初戦では後にベスト4に入る東海大仰星と熱戦を繰り広げた。

 ところが翌年、世代交代の難しさと向き合うこととなる。「先輩たちがプリンス2年目で良い成績を出して、選手権予選でも優勝して、『自分たちもそこそこできる』と思ってしまったんでしょう。藤枝明誠が選手権に出ただけで、『自分たち』が出たわけではないんですがね……」(松本監督)。

 今年はまさに“何もないところ”からの復活を目指す。最初の公式大会となった新人戦では地区大会敗退を喫し、県大会にも出場できず。しかし「これから徐々に貯金をしていくしかないし、真面目にやっていくしかない」(松本監督)と前向きに戦い、そうして臨んだイギョラ杯で全国の強豪校を倒して準優勝を果たした。

 決勝戦では圧倒的にボールを支配した昌平高にPK戦で敗れ、平山主将は試合後、「相手の絶対的な技術に対し、弱みを消せなかった。完敗です」と悔しさを露わにしていた。その一方、指揮官は「この1か月でずいぶん耐えられるようなチームになった」と守備に手応えを感じた様子。攻撃は「もっと味付けをしていく」と今後の課題だと捉えている。

「ようやく土地を買えるくらいのところに来たかな。これから草をむしって、落ちている石を取り払って、これから基礎(になる大黒柱)を打っていきたいですね」(松本監督)。苦しみを乗り越えた“超攻撃的集団”がひっそりと再スタートを切っている。

(取材・文 竹内達也)

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