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高校時代無名の立命館大MF藤井智也、相手が“度肝を抜く”ような快足で勝利貢献

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抜群のスピードでチャンスを作った立命館大MF藤井智也

[3.21 第68回京都学生選手権大会準決勝 立命館大5-1京都大 立命館大原谷G]

 京都の大学No.1を決める第68回京都学生サッカー選手権大会の準決勝が21日に行われ、立命館大と京都大が対戦。後半19分に奪ったFW田中康介(新2年=京都U-18)の先制点を皮切りに、5点を奪った立命館大が勝利した。

 これまで一度も全国大会の出場が無ければ、選抜でも目立った経歴もない。だが、対面の選手が度肝を抜く程の快足を持つ立命館大のMF藤井智也(新2年=長良高)の実力は確か。勝てば天皇杯京都府予選の出場権を掴めるこの日も、随所で持ち味を発揮し、チームの勝利に貢献した。

 終わってみれば5点を奪ったものの、立命大が見せた前半の出来は決して良くはなかった。最終ラインから、丁寧にボールを動かし、試合の主導権を握ったが、相手エリアで攻撃のテンポを変えることができず、シュートまで持ち込む場面はごくわずか。不用意なボールロストから推進力のある京都大のFW吉田翔太(4年=洲本高)と安藤優作(3年=東海大仰星高)の2トップにバイタルエリアまで持ち来れる場面も見られた。

 苦しい状況を打開するために動いたのは、左サイドに入った藤井だ。「引いた相手に苦しむ中で、どれだけ勢いづけるかが試合の鍵になると思っていた」との意気込み通り、隙を見てはスピード溢れる仕掛けを繰り出すと、前半21分には自陣からの縦パスを相手エリアの中央左寄りで受けて素早くドリブルに移行。DFを3枚剥がしてシュートまで持ち込んだが、ゴールネットを揺らすことができなかった。

 縦への突破で実力の片鱗を見せた藤井だが、より力を発揮したのは後半に入ってからだ。FW田中が1.5列目から相手DF裏へと飛び出すことで攻撃が活性化すると、後半19分にはDF西林佳祐(新2年=岡山U-18)の右クロスから田中がヘディングで先制点をマーク。ここからは、「1点獲れれば、京大さんも前に出ざるをえないので、2点目、3点目と積み上げができると思っていた」(米田隆監督)との読み通り、試合が進んでいく。

 相手が前がかりになったことで、スペースが生まれると、「前半の流れを払拭するためには、自分の持ち味であるドリブルしかないと思って、積極的に仕掛けた」という藤井のドリブルの効果が増す。「相手に縦のイメージを持たせると中が空いてくる」と振り返るように、23分にはこれまで見せた縦への突破から一転し、左サイドからのカットインを選択。ゴールが見えたタイミングで放ったシュートが、ゴール左隅に突き刺さった。

 27分にもハーフウェーライン左から、中央へのドリブルを選択。センターサークルで田中へ預けたボールがPA内に入ると、2列目から飛び出したMF竹本雄飛(新3年=広島ユース)が決めた。後半43分には、京都大FW加山達也(新4年=北野高)に1点を返されたが、アディショナルタイムに2点を追加し、5-1で試合を終えた。

 入学前から出番を掴み、昨夏にはU-19全日本大学選抜WESTのメンバーにも選ばれた藤井だが、高校までは決して名の知られた選手ではなかった。所属した長良高は県大会ベスト8クラスというチーム。高校3年の夏は、チームメイトが受験でチームから離れたため、上級生は藤井一人という状態でプレーを続けた。個人としても、学生時代に陸上選手として鳴らした母親譲りのスピードはあったが、「高校時代は縦への突破だけと言われ、あまり恐れられていない選手だった」(藤井)。

 大学に入ってからは、周囲の選手を参考に、中央への仕掛けを意識したことで、より怖い選手へと成長。「あの子は仕掛けの回数が多いの魅力。1回仕掛けて休むのではなく、2回、3回とボールを呼び込んで、ゴール前まで持って行けるのはチームとしてかなり有難い」と評する米田監督の積極的な起用や、「高校時代に弱小チームだった選手でもやれるんだと分かった」と振り返る大学選抜での経験も彼にとってプラスとなった。

「あまり強くない高校の選手も、大学に入って変われるということをもっと示したい」と意気込むように、目指すのは更なる高み。藤井智也の名を全国に知らしめるために、これからもスピード溢れる突破を繰り返していくつもりだ。

(取材・文 森田将義)

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