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前橋育英の仲間思いながら高校選抜に貢献するGK湯沢、出番ある無しにかかわらず「目指すところは同じ」

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日本高校選抜のGK湯沢拓也(前橋育英高→立正大)は練習試合などで好守を見せてきた。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[4.1 デュッセルドルフ国際ユース大会予選リーグ 日本高校選抜 1-1 ザルツブルク]

「試合に出ていなくても、出ていても目指すところは同じなので、ここまで来たので気持ちよく優勝して帰りたいですね」。日本高校選抜のGK湯沢拓也(前橋育英高→立正大)は予選リーグ首位突破が決まったザルツブルク(オーストリア)戦後、言葉に力を込めた。

 今回、日本高校選抜欧州遠征のGKは、全国高校選手権優勝GKの湯沢と同準優勝GKの薄井覇斗(流通経済大柏高→流通経済大)の2人が参加している。これまでの活動を通して見ても2人の実力差はほとんどなく、どちらが先発してもおかしくない印象。デュッセルドルフ国際ユース大会についてはより力強さのある薄井がここまでの全4試合でフル出場し、好守でチームを支えている。だが、湯沢も静岡県ヤングサッカーフェスティバルの静岡ユース戦やアヤックス(オランダ)との練習試合でファインセーブを見せるなど起用された際には期待に応えるようなプレーをしてきた。

 垣井大治GKコーチ(報徳学園高)は大会開幕前、湯沢について「安定感があって冷静。信頼のおける選手です。(試合に出ていなくても)サッカー以外のところで凄くサポートしている。(高校選抜での活動を通して)自分が出ていくべきところで出ていくところ、積極性が出てきた」と評価。デュッセルドルフ国際ユース大会ではまだ出番を得られていない湯沢だが、ミーティングでの姿勢やトレーニングでの取り組みなどでチームに良い影響を与えている。

 もちろん悔しい思いも、ある。だが、湯沢は「監督側からしても後ろの選手は代えづらいというのがあると思う。選手権の時にサポートしてくれた(前橋育英の)仲間たちを思い出しながら、どういうことをやってくれたか、どういうことをやってくれたら良かったかとか思い出しながら過ごしています」と語る。

 湯沢は前橋育英に入学した際、同学年に4人いるGKの中で一番下の存在だったという。そこから這い上がって前橋育英で先発の座を奪い、高校選手権でチーム史上初の全国制覇を成し遂げて、大会優秀選手、日本高校選抜にも選出された。先発の責任感と控えの悔しさ両方を知っているGK。3番手として同校に帯同した高校2年時の高校選手権ではトレーニングでミスを連発してコーチ陣に怒られた経験もある。その反省も活かして、心を切らさないように、またチームの雰囲気を落とさないように務めながら出番を待ち続けている。

 今回の欧州遠征で世界の強豪クラブのGKや各選手のプレーを見て学んだこともある。相手のプレッシングにも動じない落ち着き。また遠征期間中に観戦したレバークーゼン対アウクスブルク戦でレバークーゼンのGKベルント・レノのプレーから、「スペースを見つけて蹴ったり、味方の足元ではなくてちょっとずらしてスペースに落としたり、相手が来ていてパスがないと判断したら大きく蹴るとか、自分の中に取り入れていければいいと思います」と刺激を受けた。今後に活かせることを日々吸収し続けている。

 日本高校選抜は3試合連続で先制されながらも、3試合連続で追いつく粘り強さを見せて予選リーグ突破。勝ち上がったことで湯沢の出場チャンスも広がった。大会最終日、ピッチに立つ機会があれば、まずはチームが勝つためのプレーを徹底しながら「チャレンジしたいのはキック」。相手の身体能力が高い中でも高い精度のボールを味方の足元、スペースへ入れれば攻撃に起点になることができるのでないかと考えている。そして得意のビルドアップ、冷静なセービングでもチームに貢献すること。例え出番が限られたとしても、前橋育英の仲間のことを思いながら日本高校選抜をサポートするGKは、チームの優勝のために自分のできることを全力でやり通す。

(取材・文 吉田太郎)
●2018日本高校選抜欧州遠征特設ページ
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