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[関東]筑波撃破で連勝発進!新生・外池早稲田が“学生主導サッカー”に変貌

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今季より早稲田大の監督には元Jリーガーの外池大亮氏が就任した

[4.14 関東大学L1部 筑波大2-3早稲田大 味フィ西]

 関東大学1部リーグ戦の第2節が14日に行われ、早稲田大が筑波大に3-2で勝利した。今季より1部に復帰した早稲田が開幕連勝、昨季王者の筑波が連敗と対照的なスタートになった。

 前半42分に先制を許した早稲田だったが、同45分に右クロスをFW武田太一(3年=G大阪ユース)が合わせて前半のうちに同点に追いつく。そして後半23分にも武田にゴールが生まれて逆転に成功すると、同37分には主将FW岡田優希(4年=川崎U-18)がダメ押し弾。同45分に筑波に1点を返されたが、リードを守り抜いた。

 開幕連勝について「想定外」と苦笑いを浮かべた外池大亮監督だが、「1週間、1週間で濃い時間を過ごせている。開幕の時も思ったんですけど、しっかりやれたな、やれることはほぼやれたと思いました」と手ごたえ十分の様子で話した。

 昨季2部を優勝して1年での1部復帰を果たした早稲田大は、2010年より監督を務めていた古賀聡氏が退任。新監督としてOBの外池氏を迎えた。外池氏は1997年より平塚(現湘南)でプレーした元Jリーガーで、現役引退後は広告代理店に就職し、その後はスカパーJSATグループでサッカー中継や関連番組の編成などに従事。現在も籍を置いている。

「僕の中で指導者というイメージはなくて、どちらかというとファシリテーター的なみんなから意見を引き上げてタイプ」という外池氏だが、OB会の指名もあり、監督に就任。そこで掲げたのが、サッカーの評価軸を変えること、“早稲田らしさを取り戻す”ことだった。

「サッカー的な上積みは見いだせていないというのがあった。そこで思ったのはサッカーの評価が部員の評価になっていることでした。早稲田って試合に出ていない部員が頑張っているから試合出ているやつが頑張るみたいな(伝統があった)。評価って別にサッカーが上手くなることじゃないんだよと。そういうのが本来の早稲田の姿だった」

 ただ前指揮官が積み上げてきた“早稲田らしさ”を崩すことは全く考えていない。「僕はいい加減」と前監督との性格が真逆だと主張する外池監督だが、「古賀さんがやられてきた中で、早稲田のいい意味での“ちゃんとしている感”はすでにある。人間としてベースがあるので、その上を僕がやらせてもらっているだけ」とやりやすさとして捉えている。

 そしてもちろんサッカー面でも大きな変化を与えた。昨年までは監督の指示の下で戦術が組み立てられていたが、外池監督は作戦面などを自主性に任せる“学生主導サッカー”に180度転換。作戦担当のリーダーを任されるMF相馬勇紀(4年=三菱養和SCユース)を中心にして次の対戦相手を分析し、外池監督に考えを報告するのだという。

 この日も筑波大対策として相馬を2トップの一角として起用することを学生たちで決めた。筑波大が開幕節で明治大にDFの裏を多く使われていたことを分析しての作戦だった。また後半からは相馬を下げた本来の4-2-3-1に変更。これも選手たちの発信で、取られた作戦だった。

「どう戦うかは学生たちに任せている。それを受けて課題が出たねという確認をするのは僕の仕事。今日も試合前に言ったけど、今週、筑波と戦うにあたってこれだけの準備が出来たということを証明することを楽しんでほしいと言った。変わろうとしている姿を実感できるはずだよという話をしたら、僕が思っている以上にゲーム運びや修正力がありましたね」

 結果が出ていることで、選手たちもより前向きにサッカーに取り組んでいる。今までのスタイルが悪かったわけではないとする相馬は「外池さんはオンとオフの違いをつける。そこが今までとの違いだと思います」。2ゴールの武田も「自分たちがこうしたいと言うと好きにやっていいと言ってくれる。自分たちの学年には一番合っているのかなと思う」と手ごたえを語った。

 外池監督の思いは大学サッカーの位置づけ改革にまで及ぶ。「当然プロを目指しますという場でもあると思うけど、一人間として力を身につける場所という感じになってくると、大学サッカーの広がりが出来る。それが大学サッカーの面白さというか。今はJに行けなかった人の受け皿的になっているが、早稲田とか慶應、筑波とかがサッカー界全体の人材育成をしていかないといけない。それは僕が引退してからの10年間で一番意識してきたことでもあります」。43歳新米監督の挑戦は始まったばかりだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●第92回関東大学L特集

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