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武南OB同士の埼玉頂上決戦…“9学年上”為谷監督に軍配、前田監督「このことは忘れない」

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成徳深谷高の為谷洋介監督(写真左)と立教新座高の前田和伸監督(右)

[4.30 関東高校大会埼玉県予選決勝 成徳深谷高 1-0 立教新座高 埼スタ第2]

 県西部支部リーグからの県予選決勝進出で、現校名初の関東大会出場を決めた立教新座高だったが、怒濤の快進撃は準優勝という形で幕を閉じた。誰よりも悔しそうに「今日のことは忘れない」と述べたのは前田和伸監督。その言葉の陰には成徳深谷高の為谷洋介監督への想いがあった。

「いやあ、策士だったな」(為谷監督)。「いえいえ、何もさせてもらえませんでしたよ」(前田監督)。決勝戦の試合後、互いに言葉をかわす指揮官の姿が見られた。2人は埼玉県内の私立大学附属高校を指導する監督同士。それ以上に、埼玉を代表する名門校である武南高OBという共通点がある。

 学年は為谷監督が前田監督の9つ上。ともに全国高校選手権への出場経験を持ち、為谷監督は2年時の1993年度、1学年上の室井市衛(元浦和など)、浅利悟(元FC東京)、同期の斉藤雅人(元大宮)らと主力を張り、全国ベスト4で国立競技場のピッチに立ったこともある。在籍時はもちろん重なってはいないが、いまでは練習試合で力を競う間柄だ。

 そんな2人が埼玉県の頂点を争う舞台で相まみえた。すでに県新人戦を制していた成徳深谷に対して、「前の日から徹夜でビデオを見て、どうやったら破れるんだって考えてました」と前田監督。相手はハイエンドへのロングボール攻撃を得意とするため、5-4-1の幅広い布陣で守る戦術を選択し、良さを消すことに成功した。

 一方の為谷監督はこの策について「噛みついてきたので、クソって思いましたよ(笑)。ケンカ売ってきたな、ってね」と冗談めかす。そのなかで「練習試合やフェスティバルで対戦するとこちらがよく負けるんですが、こういう時にも力を発揮できるポテンシャルがあったんだなと思いました」と評価。互いにリスペクトし合った好ゲームを展開した。

 だが、勝利の女神は“先輩側”にほほえんだ。「めっちゃ悔しかったですよ。試合前は『よろしくお願いします』ってあっさり言ってましたけど、内心では『絶対に勝ってやろう』って思ってましたから。まだまだ早いって突き返された気分です」(前田監督)。そこでやってきた為谷監督とのやり取りが前述のものだった。

 立教新座にとっては無失点で切り抜け、相手の足が止まった後半勝負というゲームプランだっただけに、不運なPK判定からの失点は悔やまれるものだった。だが、「ここまでツキがあって勝ち進んできたところがあったので、最後の最後でなかったということでしょう」と受け止め、「また練習から突き詰めるしかない」と前を向いていた。

 埼玉からは2チームが関東大会に参加し、高校総体予選も控えているため、共に勝ち上がればすぐに再戦の機会が訪れる。「このことは忘れない。リベンジしたい。自分たちは1個1個勝たないといけない立場ですが、そことやるまで進まないといけない」(前田監督)。怒濤の快進撃を先導した若き“策士”は、力強く意気込みを語った。

(取材・文 竹内達也)

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