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ここぞの場面でビッグセーブもPK戦敗退。鹿児島実GK原は悔しい経験バネに新潟MFの兄と同じ舞台へ

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鹿児島実高GK原佑弥は選手権で兄・原輝綺(新潟)と同じ舞台に立つ

[5.25 総体鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高 0-0(PK5-6)鹿児島城西高 鹿児島県立サッカー・ラグビー場A]

 0-0で突入したPK戦6人目、DF池田真太朗(2年)のシュートが決まり、鹿児島城西高の決勝進出が決定。鹿児島城西の選手たちがスタンドの応援団の前で喜びを爆発させた一方、鹿児島実高のGK原佑弥(3年)はめくり上げたユニフォームで顔を覆い、両手で頭を抱えたまま、静かに整列へと歩を進めた。

「城西は昨日もPKだったので、ビデオで編集してもらって自分も見て知恵があった。足りなかったのは自分の技術面。コースが分かっているからこそ先に動いたり、前に跳んだりしていれば弾き出せたと思う。情けないし、勝負弱いなと思っています」

 伝統校・鹿児島実にとって、3年ぶり27回目、自身にとって初のインターハイ出場の夢が破れた。2年前のインターハイでは兄・DF原輝綺(現新潟)が躍動し、MVP級の活躍で市立船橋高の日本一に貢献。その舞台に自分も立ちたかったが、全国へのチャンスは今冬の選手権を残すのみとなった。

 原は埼玉県出身で、中学時代は兄と同じAZ86東京青梅でプレー。高校の進路は選手権優勝2回を誇る鹿児島実を選び、昨年も出場機会を得ていた。今年はチームの守護神に。「ハイボールの処理とかシュートストップとか自信あります」という原はこの日、立ち上がりから非常に安定感の高いプレーで相手の前に立ちはだかった。

 守備範囲の広さを活かしてDF裏へ抜けてくるボールに対応。ロングボールが多い展開だったが、落ち着いてボールを処理し続けていた。そして後半29分にはDFの背後を突いてきたFW上城崇斗(3年)のシュートをストップ。ビッグセーブで失点の危機からチームを救い、退場者が出て数的不利となった延長戦でも得点を許さなかった。

「ハーフタイムとかにGKコーチが『オマエのところに来るぞ』と言われていた。『止めることだけに準備しておけ』と言われていた。そして、『来るなではなく、来い、来いと思っていていいから』と言われていたので、あのセーブは自分の中で集中できていたし、よく追いついて対応できたかなと思います」と胸を張った。

 ただし、PK戦では6人のシュートのうち半分以上を読んでボールに触りながらも弾き出すことができず。PKストップ、また1対1の守備などにまだまだ課題があることを確認するインターハイ予選となった。

 今冬は兄が2度の出場で勝ち取ることのできなかった選手権日本一に挑戦。「原輝綺の弟」と言われることはこれまでも多く、悔しい思いもしてきたというが、今は「気にしすぎても良くないなと。兄貴は兄貴で自分は自分なので」と気にしすぎず、自分のことに集中するように心掛けている。

 その兄とは普段からLINEで連絡。「サッカーのことをよく話すんですけれども、ああしろこうしろとかではなくて、心構えを教えてくれる。例えば自分があんまり良くない時期があって、自分がミスして失点した時とかに兄貴にLINEしたら、『ミスしてなんぼ』『場数踏んでなんぼ』みたいな。『今はミスしてばっかでもいいみたい』に言われます」。市立船橋で失敗を重ねながら成長しプロ入り、年代別日本代表入りした兄の言葉から学んで、自身の成長と日本一を目指している。

「兄貴が高校生の時に目指しているものと、自分が今目指しているものはチームメートとか違っても、ポジションとか違っても一緒だと思うので、そこは負けないでやっていきたい」。将来の夢は兄と同じプロサッカー選手。「鹿児島実の原」はこの日できなかったことを新たな糧として成長を遂げ、より勝負強いGKとなって今冬は必ず兄と同じ舞台に立つ。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2018

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