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ブッフォンが明かす壮絶なうつ病との闘い「生きる喜びを失った。なぜ僕なのかと自問自答し続けた」

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GKジャンルイジ・ブッフォンが壮絶な過去を明かす

 今シーズン限りで17年間所属したユベントスを退団したGKジャンルイジ・ブッフォンは、31日に発売されたイタリア人ジャーナリスト、アレッサンドロ・アルチャート氏の著書『デモーニ(悪魔)』の中で、うつ病を経験していたことを明かしている。

 1994年のプロデビュー以来、24年にわたってトップレベルで活躍してきたブッフォン。2001年に加入したユベントスでは、セリエ優勝9回、コッパ・イタリアを4度制し、またイタリア代表としても2006年にW杯優勝を達成。輝かしいキャリアを歩んできた。

 しかし、一見順風満帆に見えるキャリアでも、多くの困難に直面してきたようだ。ブッフォンは、2004年から2005年にかけてうつ病を経験してきたことを告白している。

 40歳のGKは、「生きる喜びを失っていた。強迫観念に陥り、そこから逃れるように脳みそに命令することができなくなっていた」と当時を振り返る。

「不調を抱える反面、好パフォーマンスを披露し、ユベントスやイタリアの足を引っ張らないようにと頑張らなければならなかった。自分でも見分けがつかないほど、脆い状態で、ひたすら自問自答していた。何が起きているのか? なぜ僕なのか? でも僕はイケメンで、お金もあって有名人ではないのか?」

「ホームで迎えたレッジーナとのリーグ戦の対決を忘れることはできない。試合前のウォーミングアップ中、激しいパニック発作に襲われた。目の前にいた人の中で、誰一人として僕の異変に気づいた者はいなかった。それがさらに僕の孤独感を大きくさせていた。心臓の鼓動が速くなり、呼吸がどんどん苦しくなっていった。起こるはずはないと分かっていながらも、死んでしまうのではないかと思えた」

 それでもブッフォンはピッチに立つことを決め、勝利に貢献することができたと話す。

「誇り、自尊心、仕事への情熱から力を奮い起こし、立つことができた。そして自分自身にこう言い聞かせた。『今、あきらめたら、困難に陥るたびに同じことを繰り返してしまう』。スコアは0-0のままだったが、(フランチェスコ)コッツァのシュートを防ぎ、重要な役割を担えた。結局1-0で勝利することができたのだが、あのときのセーブは、僕にとって電気ショックのように大きな刺激になった」

 壮絶な闘病生活を明かしたブッフォン。人生のどん底に沈んでいたジジを救ったのは、一枚の絵画だったようだ。フランスの画家マルク・シャガールの絵を見たことが、転機になったと明かしている。

「トリノの近代アートギャラリーを訪れる機会があった。そこでシャガールの作品が目に留まった。あの作品を見た瞬間、衝撃を受けた。まるで誰かが僕の頭を叩き、呼び掛けているようだった。僕がいるのかどうか尋ねているようだった。それから数分間の間、幸せな気持ちになった。翌日、また作品を見に戻ったんだ」

「うつは今日、明日に消え去るものではない。忍耐が必要なんだ」

 いつでも笑顔を絶やさず、相手チームに敬意を払い、代表戦では国歌を全力で歌い、そして相手チームの国歌が流れているときには拍手を送るブッフォン。人生で難しい時期を経験したからこそ、そうした行動1つひとつが大切だと感じているのかもしれない。

 2017-18シーズンを持ってユベントスを退団。40歳となっても世界トップレベルを維持するイタリア史上最も偉大なGKの1人は、どのような決断を下すのだろうか。

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