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京都橘の連覇阻止!臨機応変に戦う東山が6年ぶりの全国へ:京都

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優勝を喜ぶ東山高イレブン

[6.3 総体京都府予選決勝 東山高 2-0 京都橘高 西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場]

 平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」サッカー競技(インターハイ、三重)京都府予選の決勝が6月3日に行われ、大会3連覇を目指した京都橘高東山高が2-0で破って、6年ぶり2度目の本大会出場を決めた。

 京都を代表する2校が激突した決勝は思わぬ形でスコアが動いた。まだ試合の流れが定まらない前半9分、東山が送り込んだロングフィードに反応したFW長坂大陸(3年)が、ゴールライン上でキャッチしようとした相手GKよりも先にボールに触って抜け出して、先制点を奪う。

 その後はリードを奪われた京都橘が攻撃を仕掛ける。MF篠永雄大(3年)が中心となってボールを展開してチャンスをうかがうが、なかなか決定機を作り出せない。逆に東山にカウンターで最終ラインの背後を何度か突かれたり、セットプレーからシュートを打たれるが、GK郷田凪砂(1年)が失点時のミスを引きずらない好守を見せてハーフタイムを迎える。

 後半も京都橘が攻撃を組み立てる時間帯が続き、9分にはアタッカーを2人同時投入して打開を図るが、東山は「ボールは相手に持たれたが、新人戦も同じ展開だったし、後ろ向きにならずに集中できていた」と話すDF井上竜稀(3年)とDF飯田敏基(3年)のCBコンビを中心とした守備陣が奮闘。4月のプリンスリーグ関西での対決ではPKを献上してしまった反省も生かして試合を進めた。

 そんな中、試合の分岐点となる出来事が後半17分に起こる。京都橘がCKを獲得すると、キッカーの高木大輝(2年)から放たれたボールが二アサイドに落ちて混戦となり、最後はゴールネットが揺れて同点ゴールが決まったかに見えた。

 応援席に向かって喜びを爆発させる京都橘の選手たちだが、じつはプッシングがあったとしてレフリーの判定はノーゴール。この場面で主審は“東山の直接FK”という意味で腕を相手エリア方向に上げていたが、京都橘サイドはこれをセンターサークル方向を指して“ゴールを認める判定”と受け止めており、プレー再開が相手ゴール前から行われる時点でようやく気がついてレフリーに詰め寄るという一幕があった。

 そうした京都橘のメンタリティーが揺らいでしまうような状況を東山は見逃さなかった。その直後、左サイドへ展開してMF宇賀神拓世(3年)が左足から正確なアーリークロスを供給すると、右サイドからゴール前へ走りこんだのはFW中山翔(2年)。相手SBの前へ豪快に飛び込んで放ったヘディングシュートが決まって、貴重な追加点をあげる。その後も堅実な守備を見せた東山が逃げ切って、2-0で勝利した。

 試合後、京都橘の米澤一成監督は、ミス絡みの先制点やし2失点直前のノーゴール判定について質問が飛んでも、それを敗因とはしなかった。「GKのミスはチャンピオンズリーグのファイナルでもある。大舞台で1年生を起用した僕の責任。それで苦しくなったのは事実だけど、失点してから時間は充分にあったし、そこから点が取れなかった。技術や戦術のベースを高くしていかないといけない」と課題を口にしている。

 一方、勝利した東山の福重良一監督は「自分たちの戦い(スタイル)にこだわるというより、臨機応変にどれだけ相手に対して粘り強く戦えるかが大事だった。そこは選手同士でも話をしています」と話した。

 今大会はFW久乘聖亜(3年)や主将MF倉貫直人(3年)らを軸としたパスをつないでいく攻撃が冴えたが、この日はスカウティングや今季すでに2度対戦している経験を下に「相手DFの裏を突いていく」(倉貫)という狙いを持って、背後のスペースへロングフィードを送り込む攻撃を実践。先制点はまさに、その形から生まれている。

 守備でも相手の攻撃の出発点に対して前線からプレッシャーをかけることで精度を低下させて、最終ラインが守りやすい状況を生み出していた。ゴールは相手のミスや直前の出来事などが絡んだという側面もったが、それらを差し引いても確かなチーム力を発揮して京都の頂点に輝いたといえる勝利だった。

 東山のインターハイ出場は2012年以来となる。その6年前は森俊介(現東京V)や岡佳樹(現沼津)など、後にJリーグへ進む選手らが在籍した世代。今年のチームも久乘を筆頭に実力者が顔を並べており、全国大会でも飛躍が期待される。

 この日は調子が上らなかった久乘を後半10分で早々と交代させるなど、福重監督は攻撃陣の選手層の厚さにも自信をのぞかせる。「これまで東山で戦ってくれたOBたちの努力があっての結果だと思います。今の選手たちは初めての舞台なので、フレッシュな気持ちで挑んで欲しい。チームとしても久しぶりの全国。遠征やフェスティバルで対戦させてもらっている高校と、公式戦で戦えるのが本当に楽しみです。そこで自分たちをどれだけ出せるのか、全国で何試合戦えるのかをこだわりたい」(福重監督)と6年ぶりの舞台へ思いを馳せた。

(取材・文 雨堤俊祐)
●【特設】高校総体2018

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