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なぜPK戦やり直しが認められたのか…競技規則の適用ミスと判定ミスの違い

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PK戦をやり直すことになった名古屋グランパス

 日本サッカー協会(JFA)は11日、6月6日にパロマ瑞穂スタジアムで行った名古屋グランパス奈良クラブにおいて、競技規則の適用ミスがあったとしてPK戦の一人目からのやり直しを決定した。

 事象は奈良クラブの4人目で蹴ったMF金久保彩の蹴る前の動きに対し、清水修平主審はフェイントと判定したが、規定通り警告を与えず、さらに失敗とするところを蹴り直しと指示した。結果は奈良クラブが5-4でPK戦を制したが、本来であれば、金久保の動作をフェイントと判定した時点で名古屋の勝利が決まっていたため、天皇杯実施委員会の協議により、PK戦のやり直しが決定した。

 なぜPK戦だけのやり直しになるのか。それは「PK戦は試合の一部ではない」という解釈が重要になってくる。競技規則の解釈では延長戦を戦い終えた時点で、引き分けで試合が成立。ただし天皇杯はノックアウト方式のため、次回戦進出チームを決めないといけない。そのためにPK戦が実施される。

 この解釈により、試合とPK戦は別物と判断されるのだ。今回は勝敗の結果に影響を及ぼす重要な競技規則の適用ミスが試合の一部でないところで行われたために、PK戦そのものが成立していないと判断。途中からではなく、最初からやり直しが適当と決定された。

 また重要なポイントとして、『競技規則の適用ミス』と『判定ミス』の違いがある。これについて須原清貴天皇杯実施委員長は「相対する概念」であると強調。いわゆる“誤審”にあたる『判定ミス』に対し、『競技規則の適用ミス』は競技規則に書かれていることを実行できているかを判断するもので、審判員の判断が適用されることはないものなのだ。

 また『判定ミス』によって結果が覆ることがないのは、「試合の結果を含めて主審の判定は最終」という考えがあるためだ。ただし、『競技規則の適用ミス』については、競技規則を定める国際サッカー評議会(IFAB)でも「さかのぼって結果等々を修正できる」という解釈があることから、今回のやり直しという決定が認められている。

(取材・文 児玉幸洋)
●第98回天皇杯特設ページ

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