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W杯で初導入の『ビデオ判定』…VARってどんな仕組み? 誤審がなくなる? 問題は起きないの? を一気に解説!

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日本代表対ガーナ戦でも採用されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)

 6月14日に開幕戦を迎えるロシアW杯は、史上初めて『ビデオ判定』が導入される大会となる。すでに各国リーグで採用されている“新時代の審判”は、判定を正確なものにするため役立つ一方で、プレーが中断することなどから反対意見も少なくない。そこで今回は、W杯に新登場する『VAR』について、気になる点を整理してみたい。

■そもそも、VARとは?
 サッカーというスポーツでは通常、ピッチに立つ4~6人の審判によって判定が下されている。しかし今回、そこに新たなメンバーが加わった。その名も「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」。ビデオ映像を眺めながら試合を追いかけ、遠隔的に判定に介入するという新時代の審判だ。

 前提として、VARはあくまでも「アシスタント」の役割を担う。というのも、主審は必ず判定を行わなければならず、VARはそれに介入するという関係性。VARの判断を待ってから判定を下すことはできない。

 また、VARが介入するかどうかも主審が決めることになっており、この点でテニスなどの『チャレンジ』とは異なる。さらに、すべてのプレーで判定に関わるわけでもなく、限られた場面にしか介入できない。したがって、サッカー界から完全に誤審がなくなるわけではなく、FIFAは「“最小限”の介入で“最大限”の効果」をもたらす狙いを強調している。

 このような“主審優位”の仕組みを保つためには、VARに任される仕事の“範囲”が大切になる。VAR規則によると、介入が認められているのは「試合結果を動かす4つの場合」に関し、「確実かつ明白な誤審」もしくは「重大な見逃し」がある場合だけ。その「4つの場合」とは、①ゴール②PK判定③一発退場④人違いである。

 すでにドイツ、イタリア、イングランドなどの国内公式戦で導入されているVARだが、FIFA主催試合で使われたのは2016年のクラブW杯が初めて。最初の対象は鹿島アントラーズに与えられたPK判定で、日本国内でも大きな話題になった。その後、日本も出場した昨年春のU-20W杯、同6月のコンフェデ杯でもテストが続けられてきた。

■ロシアでは『遠隔地』の4人が担当
 ロシアW杯では、1試合あたり4人のVARがチームを構成し、交代制で全64試合を担当する。4人の内訳は『VAR』1人と『アシスタントVAR』3人。FIFAはこのたび『VAR』を担う国際主審13人を選出した。彼らはこのW杯に向けて、セミナーやテストマッチを通じ、VARに関する専門知識とスキルを高めてきた。

 VARはビデオを見ながら介入を行うため、4人は画面上で役割分担が行われている。『VAR』は4分割されたモニタを通じて試合全体を追いかけ、誤審があったタイミングで主審とコミュニケーションを取る。その他3人の『アシスタントVAR』は、①引いたアングルのメインカメラ、②2分割のオフサイドライン、③寄りアングルのピッチサイドカメラをそれぞれ担当する。

 今大会のVARシステムで注目すべき点は、これら4人が試合会場とは遠く離れたモスクワの通信センターに拠点を構えていることだ。33台のカメラ(うち8台がスローモーション、4台が超スローモーション)から送られてくる映像が、12の試合会場と直通する光回線を通じて送られ、VARが介入する際は無線システムで交信を行うことになっている。

 ピッチ上の主審はVARからの連絡があると、「片手でマイクに手を当てるジェスチャー」を行い、プレーをストップことができる。そのタイミングとしては、ゴール前の局面などではなく、両チームに「中立」な状態でなければならない。その後、主審は必要に応じてピッチ脇のモニターでプレー場面を確認することができ、「両手の人差し指で四角を描く」サインを示した後、最終的な決定を下す形となる。

■『24%』の試合で誤審が修正された
 国際サッカー評議会(IFAB)は今年1月、2016年3月のVARスタート以来、世界中の公式戦計804試合でテストを実施してきた。そのうち、リアルタイムで活用された試合を対象に分析内容を公開。VARの導入によって「24%の試合で誤審が正され、8%の試合結果が正しいものに変わった」という効果が明らかになっている。

 さらに細かく見ると、VARが主審とコミュニケーションを取った回数は計3947回。1試合あたりの回数は5回未満だ。そのうち68.8%のケースではVARは介入せず、通信機器でのやり取りにとどまっている。また、VAR使用前に主審が下した判定は93%が正しく、「確実かつ明白な誤審」があったのは3試合に1回のみ。だが、VARを介したことによって、判定の精度が98.9%にまで上がったという。

■VARの介入は時間がかかりすぎる?
 VARは導入当初から、手続きにかかる時間の長さが指摘されてきた。①VARがプレーの場面を映像で振り返ってから、②レフェリーがVARとコミュニケーションを取り、③必要に応じてレフェリーが映像を確認し、④そのうえで最終判断を下す――という複雑な段階を踏んでいくためだ。

 これについて、前述したIFABという組織も説明に追われている。VARがプレーを確認するのに約20秒、レフェリーの判定までは約60秒(いずれも中央値)かかっていることを認めつつ、これらはプレーイングタイムの約1%にあたり、FKに要する時間の9.5%、スローインに要する時間の8%にすぎないと述べている。。

 もっとも、VARによる中断と、セットプレーによる中断では、状況が異なるのは言うまでもない。さらに、特に問題となるのがゴールシーンをめぐる判定。選手とサポーターが喜びを分かち合っている場面に介入が行われ、たとえゴールが認められても喜び半減……という問題も起きている。正確性を実現するには、必ずしも良いことばかりではないようだ。

■想定される問題は他にも……
 これまでの導入期間を振り返ると、本大会で起こりそうな問題も見えてくる。まずはVARの大前提である「確実かつ明白な誤審」に関わる問題だ。この原則に沿ってみれば、「あやふやな判定」は主審の判断を優先すべきということになる。ハンド判定、オフサイド判定、ラフプレーでは、そういった場面は決して少なくないだろう。

 だが現状のところ、このルールが完全に守られているとは言いがたい。IFABの調査では20試合に1試合程度の割合で「確実かつ明白な誤審」ではない場合に介入が行われていたと指摘されている。もし、この原則が守らなければ、VARは「アシスタント」の役割をはみ出し、主審を上回る地位を与えられることになる。サッカーのルールの根幹を揺るがすことにつながるため、注意深く見守っていく必要があるだろう。

 また、過去には細かいルールの認識不足が明らかとなった事案も発生している。4月16日のブンデスリーガ第30節、マインツ対フライブルク戦のこと。前半ラストプレー、マインツのクロス攻撃が相手にブロックされ、前半終了のホイッスルが鳴ったが、選手たちがロッカーに戻った後、VARの介入でハンドが認められた。その後、選手たちは再びピッチに入り、あらためてPKが行われた。

 ホイッスルが鳴った後のプレー再開は、異例の出来事だった。争点となったのは「VARによって、どの段階まで判定を覆して良いのか」に関してだった。規則には「VARは主審がフィールドを出なければ行動できる」とあり、この件では主審がサイドラインを超えていなかった様子。ただ、当の主審はそのルールをほぼ認識していなかったことが明らかになり、現地ではそれなりの騒動になっていた。

 その他、ポルトガルではVARが使用するカメラにサポーターの振ったフラッグがかかり、オフサイドが見逃されてしまうという事例が発生し、イングランドでは最終ラインをめぐったカメラアングルが議論の的となっている。本大会でもさまざまな議論が巻き起こりそうなVAR。この新テクノロジーの行方については、『ゲキサカ』でも重点的に報じる予定だ。

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