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奇跡を信じ続けた闘将・長谷部誠

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サポーターに手を振る長谷部誠

 背後から倒されても、体を張ってボールを守った。2-1で迎えた後半ロスタイム3分すぎ。日本代表主将のMF長谷部誠は、自陣でDF吉田麻也からヘディングでパスを受ける。最後のチャンスを狙ってそのボールに襲い掛かったコロンビア代表のエース、FWハメス・ロドリゲスより先に体を入れ、相手の勢いにバランスを崩したが、ボールだけは渡さなかった。試合終了間際まで、勝利への執念は失わなかった。

「早い時間に相手に退場者が出て、難しい部分もあったが、勝ち切れたことはチームにとって非常に大きい。前回大会(2014年ブラジルW杯で引き分けに終わった)ギリシャ戦もそうだったが、早い時間帯に相手が10人になると、ゴール前に引いて固めてくる。(点をとりにいく)リスクを背負いながらも、バランスを崩さないようにしようと話をしていました」

 W杯の借りをW杯で返した。4年前の1次リーグ第3戦でコロンビアと対戦。前半こそ1-1で折り返したが、ロドリゲスが出てきた後半から攻撃にスイッチを入れられ、1-4と完敗。特にロドリゲスが決めた4点目はDF吉田があっさりかわされた後、前に出てきたGK川島永嗣をあざ笑うかのようなループシュートだった。

「個人的には、チームとして積み上げてきたものは間違っていないと思った。でもすべての部分で足りなかった」

 数的優位に立っても、勝利に結びつけられない。劣勢に立たされると、必要以上にピッチでナーバスになった。この4年間、歯を食いしばってきたのは歴戦の経験不足で露呈される未熟さを補うため。長谷部はW杯本番前にひと足早く、リベンジをしていた。

 5月19日のドイツ杯決勝。長谷部が所属するフランクフルトは、ロドリゲスがいる名門バイエルンと対戦。ロドリゲスを巧みに囲い込んでボールを奪い、速攻を得点に結びつけ、3-1の勝利につなげた。長谷部は自分の公式サイトで当時をこう振り返っている。

「相手のバイエルンは正直10回やって一度勝てるかどうかでしょう。しかしその小さな小さな確率をこの試合に持ってくる事が出来ました」

 試合前にはコバチ監督が、脳性麻痺の息子を持つホイト親子の愛の実話『ディック・ホイト』の映像を見せ、感極まる選手もいたという。人生に不可能はないことを改めて心に刻み、勝つ確率10%の厳しい試合をモノにしたことは、大きな自信につながったはずだ。

 「この勝ち点は勢いに乗れる。でもまだ1試合だけ。残り2試合あるので、(24日の)2試合目だけに集中したい」

 日本代表の次戦・セネガル代表ポーランド代表を2-1で下し、こちらも番狂わせ。実力国が本来の力を出せずに格下に敗れる波乱が続くW杯。活躍を期待される注目選手の不調が、周囲の選手の精神状態にまで影響を及ぼし、本来の力を出し切れていない。大会前、下馬評の低かった日本代表にとっては、3大会連続で主将をつとめる長谷部の経験と存在感が、かけがえのない拠り所だ。

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