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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第74回:プラチナ世代

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8年前の全日本ユース選手権、柴崎岳(右)と武藤嘉紀が激しく競り合う

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 サッカー日本代表が、ワールドカップで2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。2大会前――8年前の南アフリカ大会は、オシム監督の後を継いだ岡田武史監督の指揮で臨んだ。本田圭佑(当時CSKAモスクワ ※以下カッコ内は2010年の所属)らの活躍により、カメルーン、デンマークを撃破。オランダには敗れたが決勝トーナメントに進出。1回戦でパラグアイにPK戦で敗れたが、多くの人に希望を与えた。

 写真は、2010年のワールドカップ閉幕から約2か月後に行われた高円宮杯全日本ユース(U-18)選手権のものだ。世代屈指のゲームメーカー柴崎岳(青森山田高=右)が中盤から前に持ち上がろうとするところに、圧倒的なスピードとパワーを誇る武藤嘉紀(FC東京U-18)が襲いかかった場面だ。

 彼ら1992年度生まれの世代は、柴崎や宇佐美貴史(G大阪ユース)ら早くから高い評価を得た選手が多く「プラチナ世代」と呼ばれ、10代の頃から大きな期待を受けていた。U-20ワールドユースで初めて準優勝し「黄金世代」と呼ばれた小野伸二、稲本潤一、高原直泰ら1979年度世代を超える活躍を期待された呼び名だ。2009年に行われたU-17ワールドカップでは、ネイマールを擁するブラジルと互角に渡り合い(2-3で敗戦)、ポテンシャルの高さを示した。

 写真の2人も高く評価されていた。柴崎はU-17日本代表で10番を背負った司令塔。高校2年の段階で卒業後の鹿島加入が発表された。武藤は慶應義塾大に進むことになるが、クラブ内ではトップチーム昇格を打診されていた力の持ち主だった。今回のワールドカップには、昌子源(米子北高)、大島僚太(静岡学園高)、遠藤航(湘南ユース)を合わせ、同期6人がメンバー入りしている。

 2011年に宇佐美がバイエルン、宮市亮(中京大中京高)がアーセナルと欧州のビッグクラブに移籍して期待値が最高潮になったときの勢いを考えると、台頭してくるのに少し時間がかかった印象がないわけでもない。それでも、右肩上がりの急成長を期待される中、決して甘くない現実と戦い、互いに刺激し合いながら歩んで来た。勢いと経験のバランスが整う20代の後半に差し掛かった今、新たな歴史を切り拓こうとする日本代表の力になっている。

 2日に行われるワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、日本はベルギーと対戦する。勝てば、史上初の8強入り。早くから世界の高みを意識し、切磋琢磨してきたプラチナ世代の8年の進歩が、快挙達成の一つの力となることを期待したい。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

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