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1大会早く黄金時代の幕開けか…!? イングランドが男子W杯“3連覇”へ

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現在6得点でゴールランキングトップに立つハリー・ケイン

イングランドがスウェーデンを2-0で退けたロシアW杯準々決勝。現地で解説を務めた山本昌邦氏が、そのポイントを分析。守備的とも揶揄される両チームによる一戦に一石を投じるーー。

セットプレーを磨き上げた
イングランド


 守備の堅さとセットプレーを武器にしたスウェーデン代表イングランド代表による準々決勝。

 立ち上がりは互いに様子を見て、静かな展開になりましたが、19分にハリー・ケインがシュートを放ったところからテンポが上がっていきます。そして、そこから最初に獲得したCKで、イングランドのハリー・マグワイアが先制点を挙げました。イングランドは決勝トーナメント1回戦までの4試合で挙げた9得点のうち、6得点がPKを含めたセットプレーから。得意なカタチで先手をとったわけです。結局、準々決勝終了時の11得点のうち、7得点をセットプレーが占めています。

 イングランドを見ていると、自分たちのCKでも守備にまわったシーンまで考慮していることがうかがえます。右CKでは右ウイングバックのキーラン・トリッピアー、左CKでは左ウイングバックのアシュリー・ヤングと、キッカーは同サイドの選手が務めています。これにどういった利点があるかと言うと、自陣に戻るときにピッチをクロスしなくて済むため、仮にカウンターを受けても守備に混乱をきたすリスクが少なくなるわけです。周到に準備をしてロシア大会に臨んでいるなと感じました。

大会ナンバーワンの
シュートブロック力


 決勝トーナメント1回戦までの4試合での失点は、ドイツに許した「2」のみ。堅守を誇るスウェーデンは、シュートブロックの質が本当に高いです。大会随一といっても過言ではありません。じつは、彼らはスルーパスも通されているし、クロスも上げられている。でも、シュートを打たれるシーンでは、体を寄せてブロックに入っています。

 とりわけアンドレアス・グランクビストとビクトル・リンデレフの両センターバックは、素晴らしいパフォーマンスを見せていました。グランクビストとリンデレフがゴール前から釣り出さることを嫌うスウェーデンは、サイドバックが抜かれないことを優先して守っているように映りました。サイドバックが抜かれると、センターバックがカバーに入るためゴール前を空けなければならなくなるからです。

クロスを中央で跳ね返す力もあるし、シュートを枠に飛ばさせない自信もある。だから、多少クロスを上げられても構わない――。スウェーデンの守り方はセンターバック2人の個の力によるものではなく、チーム戦術の賜物。今大会に限らず、スウェーデン代表というチームに、脈々と受け継がれている伝統と言えるでしょう。そこがスウェーデンというチームを語るうえでの魅力となっています。

 攻撃ではイングランドと同様に、セットプレーを武器としているスウェーデン。今大会のチーム最多得点は、センターバックのグランクビストです。しかしこの試合では、CKは1本、アタッキングサードでのFKも1本と不発。それはイングランドに出すことを許されなかったという表現が正しいかもしれません。

セットプレーを
“与えない”守備


 決勝トーナメント1回戦までの4試合で4失点と、イングランドも守備が安定しているチーム。準々決勝のスウェーデン戦、奪えばショートカウンターのチャンスになるアタッキングサードやミドルゾーンでは、ファウルも辞さないような積極的な守備を見せていました。言うなれば攻撃の起点となるような守備ですね。

 その一方で、ディフェンシブサードでは相手にセットプレーのチャンスを与えないように、ほとんどファウルをしていません。CKのキッカーの選択も含めて、リスクマネジメントがチームにしみついているなと感じました。

 とはいえ、スウェーデンもベスト8まで勝ち残るほどのチーム。セットプレーの回数こそ抑えましたが、流れの中から決定機をつくられました。そこに立ちはだかったのが、GKのジョーダン・ピックフォードです。25歳の守護神の2本のビッグセーブがなければ、2-2で延長戦にもつれてもおかしくありませんでした。W杯でベスト4に残るチームにおけるGKの存在感が、改めて浮き彫りになった試合だと思います。

世代別W杯を“連覇”
黄金時代の到来か


 28年ぶりにベスト4に進出をしたイングランドは、若い選手が多いのも目を引きます。スウェーデン戦のスタメンで30代はアシュリー・ヤングのみで、現在得点王でエースのケインと守備の要のジョン・ストーンズは24歳、この日2点目を挙げたデレ・アリはまだ22歳です。

 選手の充実ぶりは、A代表に限った話ではありません。イングランドは昨年開催されたU-20W杯とU-17W杯でともに初優勝をはたしていて、育成年代で成功をおさめています。その背景でFA協会(イングランドサッカー協会)が見事な仕事をしていることは言うに及ばないでしょう。

 アンダーカテゴリーとはいえW杯ですから、グループステージを経て決勝まで7試合を戦う大会としての仕組みは同じです。選手だけでなく、スタッフにも優勝したノウハウが蓄積されました。「2022年W杯以降の数大会はイングランドの時代がくる」と予期していましたが、早くも今大会で結果を残しています。

 イングランドがやっているサッカーが良いか悪いかは別として、ロシア大会は“サッカーの母国の時代”となる節目の大会となるかもしれません。

(取材・文 奥山典幸)
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