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心を揺さぶられるクロアチアのアツいプレー…歴史的初優勝まであとひとつ

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偉大なる先人を越えた存在といえるモドリッチ

明日決勝を迎えるロシアW杯。初の決勝進出という新たな扉を開いたクロアチアは、いかにしてイングランドを上回ったのか……。準決勝で現地解説を務めた山本昌邦氏が、そのポイントを振り返る。

延長後半に見せた
感動的なプレッシング


 ルカ・モドリッチを筆頭に、マリオ・マンジュキッチイバン・ラキティッチらタレントが居並ぶクロアチア代表。彼らモドリッチ世代(=黄金世代)にとっては、最後のW杯になります。ダボル・スーケルらが築いた過去最高成績である1998年大会のベスト4を越えるんだ、自分たちが新しい歴史をつくるんだ、という想いが見ているこちらにも伝わってきて、それがこの試合をすばらしいものにしたと思います。

 決勝トーナメント1回戦のデンマーク戦、準々決勝のロシア戦ではともに、延長120分プラスPK戦を戦い抜いてきました。結局、イングランド戦でも延長戦までもつれましたが、終盤のクロアチアのプレッシャーは鬼気迫るものがあり、感動すら覚えました。延長後半、1点ビハインドのイングランドは、前にボールを運ぼうとしても運ばせてもらえませんでした。

 決勝まで進むチームですから、もちろん戦力も充実しています。4バックは安定していて、1トップと両ワイドが絡んで個の力で崩す攻撃もすばらしいですが、クロアチアといえばやはり中盤です。イングランド戦の中盤には、不動のモドリッチとラキティッチに加えて、ひとつ下の世代であるマルセロ・ブロゾビッチが入りました。このハイクオリティーな3枚の中盤は、相手チームや試合の状況に合わせて、配置を正三角形にしたり、逆三角形にしたりと、柔軟な対応ができます。優勝カップを手にするチームにおいてGKのビッグプレーは不可欠ですから、決勝ではダニエル・スバシッチのプレーにも注目したいですね。

武器を見失った……
イングランドの若さ


 立ち上がり5分で、得意とするセットプレーで先制点を奪ったイングランド代表。ここまでFKやCKで素晴らしいキッカーを務めていたキーラン・トリッピアーが直接沈めています。これで全12得点のうち8得点がゴールになりました。

 先手をとったところまではよかったですが、ジェシー・リンガードらがチャンスをつくりながらも追加点を奪えず。時間が経つにつれてイングランドはドタバタしてしまいました。若い世代が躍動しているイングランドは勢いに乗って準決勝まできましたが、クロアチア戦ではその“若さ”が仇となった印象です。

 イバン・ペリシッチに同点弾を許してからは、落ち着きを取り戻せなかった。彼らは「自分たちの武器が何か」ということに立ち返るべきでした。アタッキングサードでファウルをもらう、ドリブルで仕掛けてCKをとる、そしてセットプレーで得点を奪う……。このやり方で2点目を取りに行くしたたかさが、イングランドには必要だったと思います。

 イングランドはセットプレーを武器にしている一方で、相手にセットプレーを与えないような守り方も徹底しているチーム。アタッキングサードでできるたけファウルをしないですし、CKもほとんど与えません。それはチームマネージメントとして共有できていることで、準々決勝までの5試合で与えたCKはわずか9本でした。しかし、クロアチアには8本のCKを与えていた。この数字からも、イングランドがいかに苦しんでいたをうかがい知ることができます。

 W杯は23選手で1か月の7試合を戦い抜くという特殊な大会です。その中で若い選手を信じたガレス・サウスゲート監督、ベスト4まで勝ち上がった選手やスタッフは称賛に値するでしょう。今回、W杯を経験した選手に加えて、U-20W杯とU-17W杯で世界一になった選手たちも控えています。

体力では劣るも
気力で勝るクロアチア


 ここまで延長戦なし、準決勝から中4日で臨むフランス。3試合連続で延長戦を戦い、準決勝から中3日での戦いを余儀なくされるクロアチア。データを基に考えれば、フランスが有利なのは間違いありません。しかし、泣いても笑っても後1試合。長い大会のゴールは見えているので、クロアチアの選手も気力を振り絞っていい戦いを見せてくれるのではないかと予期しています。最初の45分は体力差が顕著になることはないので、勝負は後半、そして先制点がどちらにどのタイミングで訪れるか、が焦点になります。

 決勝戦になると、極端に先制点を意識する戦いになることが予想されます。フランスに先に得点が入れば、大差がつく展開もあり得るかもしれませんが、ロースコアの接戦に持ち込むことができれば、クロアチアの気力も折れることがないでしょうから勝機が巡ってくるでしょう。

 フランスの20年ぶりの優勝か、クロアチアが初の王座について新たな歴史をつくるのか。ファイナルにふさわしい名勝負を期待しています。

(取材・文 奥山典幸)
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