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ドイツ敗退も後押し…GLは『19回/48試合』の過多傾向 ロシアW杯VAR全事例集4

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韓国代表の決勝点がVARで確認され、ドイツ代表の敗退が決まった

 フランス代表の優勝で幕を閉じたロシアW杯。今大会から導入された『ビデオ・アシスタント・レフェリー』(VAR)は計21回の介入が行われ、決勝トーナメントではわずか2度にとどまった。ゲキサカVAR全事例集第4弾では、グループリーグ第3節にみられた15~19回目を振り返る。(第1~3弾は関連記事に)

 VARはビデオモニターを見ながら試合を追い、必要に応じて主審に助言を行う審判のこと。一般には『ビデオ判定』とも呼ばれる。今大会では、モスクワの別会場に集まった国際主審4人が担当。①得点②PK判定③一発退場④人違いの4要素について、「明白かつ確実な誤り」があった場合にのみ判定に介入することになっている。

【事例1】大会13日目 ナイジェリアvsアルゼンチン(②PK判定)
 今大会15回目の介入は、窮地に陥ったアルゼンチン代表をさらに絶望の淵に追い込むものだった。1-1で迎えた後半32分、ナイジェリア代表は左からMFアーメド・ムサがクロスを送ると、DFマルコス・ロホがヘディングでクリアミス。こぼれ球をFWオディオン・イガロが狙ったが、大きく枠を外れた。

 アルゼンチンにとっては一安心かと思われたが、ロホのクリアミスが問題となった。ヘディングの際に誤ってボールを肩に当ててしまい、跳ね返りが左腕に直撃。これがハンドリングを疑われたのだ。しかし、VARの助言を受けた主審はピッチ脇モニターに向かうと、ビデオ映像をざっくり眺めて判定を覆さず。この後、ロホは決勝ゴールを決め、アルゼンチンのヒーローとなった。

【事例2】大会14日目 メキシコvsスウェーデン(②PK判定)
 事例1の翌日にも、PA内でのハンドリング疑惑にVARが介入しつつも、判定は修正されないという出来事があった。前半29分、スウェーデン代表のセットプレーの折り返しに対し、メキシコ代表FWハビエル・エルナンデスがPA内でトラップ。このプレーでボールを手で扱ったという嫌疑をかけられた。

 主審はビデオモニターを見つめると、太ももに当たったボールがエルナンデスの右腕に当たっているように思われた。だが、これが故意によるものかどうかは微妙なところ。主審は判定を変えず、ノーファウルで試合を再開させた。このようなケースは「明白かつ確実な誤審」にはあたらないため、VARが介入したこと自体が不適切だ。

【事例3】大会14日目 韓国vsドイツ(①ゴール判定)
 韓国代表ドイツ代表でのVAR介入は、今大会で最も注目を集めたシーンの一つだろう。0-0のまま迎えた後半アディショナルタイム、韓国MFソン・フンミンの左CKが混戦からファーサイドにこぼれ、ゴール前で待ち構えていたDFキム・ヨングォンがネットを揺らしたという場面だ。

 ゴールが決まった直後、副審はすぐにオフサイドのジェスチャーを行い、主審も間接FKで試合を再開しそうになった。たしかにキム・ヨングォンの位置は相手守備陣より前にあり、オフサイドポジションかのように思われた。だが、ここで問題となったのは混戦の中で、誰が最後にボールに触れたのかだ。

 攻撃側の選手がオフサイドポジションの選手にパスを出すと、反則が取られるというのは基本ルール。だが、守備側の選手が意図的に扱ったボールが、オフサイドポジションの選手にわたった場合は反則にならない。この場面では、混戦の中で誰がキム・ヨングォンにボールを渡したのかが争点だ。

 主審はVARとコミュニケーションを取った後、ピッチ脇のモニターでオンフィールド・レビューを実施。すると、MFトニ・クロースのクリアミスから、キム・ヨングォンに渡っていたことが確認された。すなわち、オフサイドにはあたらず、韓国の先制ゴールが認められる結果に。ドイツはこの失点で絶望的なビハインドを負い、そのままグループリーグで姿を消した。

【事例4】大会14日目 スイスvsコスタリカ(②PK判定)
 大会14日目には、一度は下されたPK判定が取り消されるという事案も起きた。大会9日目にFWネイマールの転倒が話題になったが、この場面では直前にオフサイドがあったため、そちらの判定が優先された形だ。単にオフサイドがあったかどうかはVARの介入対象ではないが、得点やPKにつながった場合はその限りではないことを覚えておきたい。

 場面はスイス代表の1点リードで迎えた後半44分、コスタリカ代表DFケンダル・ワストンがヘディングで前方にパスを送り、これに反応したFWブライアン・ルイスがPA内を突破。競り合ったスイスDFリカルド・ロドリゲスが倒してしまい、主審はPK判定を下すとともにイエローカードを提示した。

 だが、VARとコミュニケーションを取った結果、ワストンのパスの時点でルイスがオフサイドポジションにいたということが分かった。そのため、ここではオンフィールド・レビューを行わずにオフサイド判定に変更。この反則はPKの場面より前だったため、この結果が優先され、スイスの間接FKで試合は再開。ロドリゲスのイエローカードも取り消された。

【事例5】大会15日目 セネガルvsコロンビア(②PK判定)
 日本代表がポーランド代表との一戦を繰り広げている裏で、グループリーグ最後のVAR介入が行われていた。スコアレスで迎えた前半18分、セネガル代表FWサディオ・マネがPA内にしかけると、コロンビア代表DFダビンソン・サンチェスとの接触で転倒し、主審はペナルティースポットを指差した。

 ここで問題となったのは、サンチェスの足がボールを捉えていたか、マネの足のみに接触していたかだ。主審はピッチ脇のモニターに向かうと、サンチェスの払った足がボールに当たり、正当なタックルであったことが確認できた。転倒につながる接触はあったため、マネのプレーもシミュレーションにはあたらず、いずれにもファウルはないという判断で試合が再開された。


■まとめ
 上記5つの事例では4度のPK疑惑があったが、全て却下され、PK乱発の流れに一定の歯止めがかかった。だが、グループリーグ第3節全体で見ると、わずか4日間で10回のVAR介入が行われる形に。これにより、48試合終了時点での介入回数は計19回ものぼり、適正基準とされる『3試合に1回』を大幅に上回る結果となっている。

 もっとも、VARの目的は介入を減らすことではなく、正確な判定に寄与すること。FIFAのピエルルイジ・コッリーナ審判委員長は「VARの関わらなかった判定は95%ほどが正しかったが、VARの介入によって99.3%が正しいものになった」と高い効果を指摘。レッドカードが3枚にとどまったことも含め、「非常に完璧に近い」と前向きに受け止めるコメントを残していた。

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