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[MOM541]法政大MF紺野和也(3年)_“武南のメッシ”から“法政大のメッシ”へ

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MF紺野和也が着実に成長を遂げている

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.22 アミノバイタル杯 法政大2-1明治学院大 味フィ西]

 史上初、東京都1部リーグ所属の明治学院大の決勝進出となった『「アミノバイタル」カップ2018 第7回関東大学サッカートーナメント大会』。これまで関東1部4チームを撃破してきた明学大の勢いをあらわすように、前半終了間際のPKで明学大が先制する。

 イヤな流れだった。

「前半は9割くらい、うちがボールを握っていたと思う」(法政大・長山一也監督)と、法政大が優勢な展開。だが、ゴールが入らない。このまま明学大に守りきられてしまうのか。そんな雰囲気をMF紺野和也(3年=武南高)のドリブルが、一気に薙ぎ払った。

 161センチと小柄ながら切れ味鋭いドリブルで、相手を置き去りにするレフティー。誰が呼んだか、武南高時代のあだ名は“武南のメッシ”。その攻撃力を買われ、法政大進学後は1年次からレギュラーに定着。法政大のチャンスメーカーとして活躍してきた。

「自分の長所はドリブル。長山監督からも、そこはどんどん出せと言われています。できる限り仕掛けていきたいし、2人、3人に囲まれても抜けられる力があれば、プロでも通用するのではないかと思っています」

 ただ、猛暑の中で行われた今大会で、連戦の5試合目となる決勝戦は選手の体力もギリギリ。「囲まれたときは味方とのコンビネーションやワンツーで抜け出すことも考えたいと思っていた」と紺野。その言葉どおり、60分には同じサイドである右SBの関口正大(2年=新潟明訓高)とのコンビネーションで、明学大の守備ラインをかき乱した。

「夏場に毎回自分で仕掛けるのは厳しい。自分で行けるときは行くけど、コンビネーションで崩すときは崩す。特にマサ(関口)とは普段からコミュニケーションをとっているので、それがうまく出た」

 “ドリブル小僧”が、そのイメージを逆手にとったしたたかなプレーでチャンスを演出。「あとは自分のキックの質だった」というが、正確なクロスがゴール前に上げてMF大西遼太郎(3年=磐田U-18)の同点弾をアシストした。

 圧巻だったのは、その2分後。関口からのパスに、今度は得意のドリブルで一気にゴール前へ。切り替えしで相手DFを振り切ると、そのまま左足でシュートを突き刺した。

「ボールを受けた時点でゴールまでのコースは見えていた。イメージどおりのドリブルとシュートで得点できてうれしかった」

 まさに“ザ・紺野和也”ともいうべきドリブル、そしてファインゴールで逆転に成功。法政大を本大会初タイトルに導いた。

 前半も右サイドの突破でチャンスを作ったが、「後半は法政大のほうが運動量が勝るだろうと思っていた。前半は焦らずにジワジワ攻めて相手を消耗させようと思った」と、“勝負どころ”を後半に定めた狙いが見事に的中。ドリブルでスタンドを沸かせたのはもちろんだが、左足の正確なキックや的確な状況判断、何より試合の流れを読むクレバーさで、勝利の立て役者となった。

 高校時代は全国大会と無縁で、注目される機会も少なかった。だが法政大進学後は、自らの武器を大きく成長させて全日本大学選抜にも選出された。チームメイトでU-21代表FW上田綺世(2年=鹿島学園高)のように、いずれは代表を目的にしているが「焦る必要はない。今はひとつひとつレベルアップしているところ。結果的に代表に選ばれるようになればいい」と、まずは自分のプレーを磨くことに余念がない。

 “武南のメッシ”から“法政大のメッシ”へ――。その成長は留まるところを知らない。

(取材・文 飯嶋玲子)

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