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[MOM2574]清水ユースFW齊藤聖七(3年)_『史上最弱世代』で夏制覇。“雑草魂”の10番キャプテン

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悲願のタイトルに導いた清水エスパルスユースのFW齊藤聖七主将(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.1 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 大宮ユース0-2清水ユース 味フィ西]

 過去2年間は目の前に迫っていながらも届かなかったタイトル。ようやく優勝カップを掲げることができたのは、2つの“銀メダル”を間近に経験してきた『最弱世代』のキャプテンだった。決勝戦で1ゴールを挙げた清水エスパルスユースFW齊藤聖七(3年)は試合後、いつもどおりの笑顔で「超うれしいです」と頂点に立った喜びを口にした。

 清水ユースの主将で10番――。一見エリートコースにも思える肩書きだが、その実態は異なっている。小学6年時に横浜FMアカデミーをはじめ、3種年代のセレクションに次々と落選。「雑草魂ですよね。正直言って“J下部”(Jアカデミー)は怖かったですし」。神奈川県の街クラブ『パルピターレFC』で過ごした中学時代をそのように振り返る。

「小さなクラブの“お山の大将”」(平岡宏章監督)という3年間で成長を遂げ、「関東大会でスカウトされたのがきっかけ」(齊藤)で清水ユースに加入。メンバー外だった1年目のクラブユース選手権決勝で準優勝に終わった直後、中断明けの高円宮杯プレミアリーグEASTで徐々に頭角を現わすと、翌年からは前線の一角としてチームの主力に定着した。

 そんな昨季は開幕から快進撃を続けたものの、シーズン終盤に試練が待っていた。ラスト2試合で1勝でもすれば優勝という条件だったプレミアEASTでまさかの1分1敗。悲願の初優勝をFC東京U-18に明け渡す形となったのだ。「何が起こったのか真っ白になった。自分が一番決定機が多かったのに、一つも決められなくて……」(齊藤)。もともと持っていた負けん気にさらに火がついた。

 平岡監督はその後のシーズンオフを懐かしそうに思い返す。「柏にプレミアで負けて、そこから2か月間本当に悔しかったのか、チームの先頭に立っていろんなことをやっていた。練習場の近くに三保の砂浜があるんですが、そこを走っても一番に走っているし、声をかけたりしている。こいつがキャプテンになったら、間違いなく良いチームになるだろうなと信頼して任せた」。

 今となっては美談だが、当の本人は必死だった。「正直不安な気持ちがあった。キャプテンは小学1年から4年の時にやっただけで、ちゃんとしたのは初めてで……」。平岡監督がどこかで口にした「史上最弱」のフレーズものしかかった。「“史上最弱のキャプテン”というプレッシャーがありましたし、キャプテンをやったことがなくてそう言われたのが本当に悔しかった」。

 だが、そんな主将の姿はチームメートの胸を打っていた。GK梅田透吾(3年)の「ピッチ内外でチームを引っ張ってくれる存在。自分たちが支え切れているか分からないくらいに頼り切っている」という言葉に代表されるように、齊藤については誰に訊いても賛辞ばかり。本人は「仲が良いし、団結力がある」とチームを評したが、当の主将のパーソナリティーがそうさせているのは間違いなさそうだ。

 そんな偉大なリーダーに導かれたチームは今大会、グループリーグを2位で突破。決勝トーナメント1回戦の三菱養和SCユース戦を1点差で、準々決勝の浦和ユース戦をPK戦の末に勝ち上がり、接戦を制してベスト4へ。準決勝では齊藤が脱水症状で途中交代を強いられる中、2年生アタッカーの活躍が2年ぶりとなる決勝の舞台に導いた。

「準決勝では全然身体が思うように動かなくて、ベンチに下がることになって本当に悔しかった。そこでは自分が代わってしまったので、決勝では点を取ろうと思っていた」。グループリーグでも対戦していた大宮ユースとの決勝戦、意気込んでいたとおりの場面が1点リードで迎えた前半アディショナルタイムに訪れた。

 FW青島太一(2年)のパスを左サイドで受けると、迷わず前を向いた齊藤。「ドリブルでしかけてシュートまで行けなかったので、稜介が良い形で動いてくれて預けた」。右で待っていたFW山崎稜介(2年)とのパス交換でPA内に走り込むと、ワンタッチで右足を一閃。「いつもはああいうところで入らないんですけど、落ち着いて流し込めた」。そんな10番の周りには自然と大きな歓喜の輪ができていた。

 後半は一転して防戦一方となったが、準決勝で立ち続けることができなかったフィールドを最後まで守り切り、16年ぶりの偉業を告げるホイッスルをピッチの上で聴いた。「笛が鳴った時は実感がなかったけど、史上最弱とかいろいろ言われていたので……」。いったん芝生に倒れ込んだ齊藤は、喜びを噛みしめるような素振りをしながら歓喜の整列へと向かっていた。

 こうして“最弱世代”は最高の場所にたどり着いた。「3年生自体も強かったと思いますし、1~2年生の3冠世代、黄金世代もこの西が丘でやっていましたし、その力が合わさってこういう結果になったと思います」。過去2年間の悔しさを間近で経験してきた3年生、2年前に“中学3冠”を果たした下級生、いずれが欠けても歓喜はなかったと考えている。

 もっとも、この歓喜をひと夏だけのものにするつもりはない。「ここで全国1位にはなったけど、これからプレミアで上位に食い込んで、チャンピオンシップを目指して頑張りたい」(齊藤)。目指すは昨冬に目前でその手をすり抜けた年間王者の座。現在は首位と勝ち点差9と離されてはいるが、自信を携えた“雑草魂”のキャプテンは目標をまっすぐと見据えている。

(取材・文 竹内達也)
●第42回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集ページ

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