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「リスペクトを欠く交代で申し訳ありません」指揮官が試合後会見で謝罪。その裏には“同級生GK”のドラマが…

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ピッチに立つ清水エスパルスユースGK天野友心(3年)

[8.1 日本クラブユース選手権U-18大会決勝 大宮ユース0-2清水ユース 味フィ西]

「リスペクトを欠く交代で申し訳ありませんでした」――。試合後会見に姿を現した清水エスパルスユース平岡宏章監督は口を開くやいなや、謝罪の言葉をはっきりと述べた。全国タイトルを手中に収めつつあった後半アディショナルタイム、先発GK梅田透吾(3年)を控えGK天野友心(3年)と交代した場面を指してのことだった。

「まず一つ言わなければいけないのは……」。主に試合の振り返りや質疑応答が行われる公式会見だが、その場に現れた指揮官は自ら進んでその話題を切り出した。「最後にGKを代えて、ああいったリスペクトを欠くことはやってはいけないんですけど……」。続いた言葉には“たった一つの椅子”を争うドラマがあった。

 交代した梅田と天野は清水ジュニアユースからの同級生。ユースが参加するリーグが増えてきたことを受け、史上初めて同学年のGK2人がユースに昇格した世代だったという。「中学の時には天野が試合に出ていました。ただ、ユースになって私が監督になったからか、梅田が試合に出るようになりました」。平岡監督は2人の立場をそう説明した。

 いまでは世代別日本代表にまで上り詰めた梅田だが、天野との関係性を以下のように振り返る。「彼とはジュニアユースからずっと一緒にやってきて、自分が出ていない時期もあった。ユースに入ってからは自分が試合に出る機会が多くなって、ライバルに負けないようにやってきた結果、自分がこの大会に出場することができている」。

 一方の天野は昨季、梅田が負傷していた時期に先発を担い、JユースカップやプレミアリーグEASTの終盤戦でピッチに立った。惜しくも優勝を逃したプレミアリーグEAST最終戦の直後、天野は取材に「自分には梅田透吾というチームメイト兼ライバルがいる。彼が日本代表に選ばれて良い刺激にはなっているけど、絶対に負けたくはない」と応え、やはりライバル意識をのぞかせていた。

 決勝戦で交代する際、天野はピッチを退く梅田を満面の笑みで迎え、梅田は温かい抱擁で天野をピッチに送り出した。「今日は梅田が活躍してくれましたが、天野が出ても同じくらいの活躍をしてくれる。また、試合に出なくてもチームを盛り上げてくれていた。そういう意味も含めて了承してもらいたいです」(平岡監督)。

 この交代で欠いたとされる“リスペクト”への賛否は対戦相手の大宮ユースに委ねられるのが筋だろう。だがその一方、ここまで5年半にわたってレギュラーを争い、互いに切磋琢磨を続けてきた2人に対し、指揮官からの“リスペクト”を表する起用策だったことは間違いなさそうだ。

(取材・文 竹内達也)
●第42回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会特集ページ

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