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古巣サポから大ブーイングも…「力になりたい」と東京V加入、泉澤仁が切り拓いた“変則左ハーフ”の新境地

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古巣大宮戦でピッチに立った東京ヴェルディFW泉澤仁

[8.4 J2第27節 東京V 2-1 大宮 味スタ]

「こんなに早く来るんや」。想像していたよりもずいぶん早い出番だった。東京ヴェルディFW泉澤仁はかつて3年間を過ごした古巣の大宮戦で前半35分から途中出場。「インサイドハーフは初めて」というスクランブル起用だったが、自らの持ち味である加速力を新境地で生かし、勝利を導く追加点奪取に貢献した。

 左ウイングのポジションでプレーしていたFWアラン・ピニェイロにアクシデントが襲ったのは前半35分。そこでお呼びがかかったのは6月にG大阪から期限付き移籍してきたばかりの泉澤だった。「時間がなかったので(監督からは)何も言われずに……」。ほとんどウォーミングアップも行うことなく、昼間の暑さが残るピッチに駆け出していった。

 この試合で4-3-3のフォーメーションを採用した東京Vの左ウイングは、守備時こそ2列目の最左翼でブロックをつくるが、攻撃時はサイドバックの走路を確保するため中央に絞ってプレーするという役割。泉澤自身が「インサイドハーフ」と表現したことからも伝わるように、既存のウインガーにとどまらない複雑なポジションだ。

 指揮官からは「練習から戦術のこととかは個別に教えてもらっていた」とはいえ、このような役割は「映像で見ていたので……」という程度の理解度だったという泉澤。だが、出場から15分にも満たない前半アディショナルタイム3分、背番号6はさっそく結果を出した。

 右サイドを起点とした攻撃からDF畠中槙之輔の縦パスが一列前に入ると、受けたのは左から絞ってきた泉澤。素早いターンで前を向いて、左サイドを上がったDF奈良輪雄太に送り、ゴール前でリターンを受けて左足シュートを放った。ボールはうまくミートせずに大きくバウンドしたが、軌道上にいたFWドウグラス・ヴィエイラが頭で合わせた。

「奈良輪くんはいつも良い位置にいるのでやりやすい部分がある。アシストはシュートミスっぽくなってしまったけど、センターバックからもらったパスで一気にターンできたのが良かった。そこが自分の課題でもあったし、監督から言われていたので、結果につながって良かった」。惜しくも移籍後初ゴールは逃したが、過程の面では手応えの残る1アシストとなったようだ。

 今季のG大阪では満足に出番を得られなかったが、プレッシャーの大きいビッグクラブでの経験が現在の自身を支えているという。「数字を残すということはずっと言われていたし、シュートを打つ本数はより怖い選手になっていくために必要だと思っていた」。ピッチに入った直後に放った強烈なミドルシュートなどは、そのような意識の賜物だった。

 試合後には古巣の大宮サポーターのもとへ挨拶に向かったが、手荒いブーイングで迎え入れられた。「G大阪時代も(大宮戦は)ブーイングでしたし、こっちが勝っていた状況だったので何とも思わなかった。大宮には負けていられない」とキッパリ。この夏に青黒から緑に衣替えした26歳は、招いてくれたチームのために働く覚悟を持っている。

 古巣サポーターのブーイングに襲われた直後、東京Vサポーターからは大きなチャントが贈られていた。「ヴェルディサポーターの皆さんは練習場にも来てくれるし、来年のクラブ創設50周年に向けて『どうにかしてJ1に上げて』と言ってくれている。力になりたいと思って来た」。J屈指の突破力を持つアタッカーが、まずはアシストという結果で己の存在価値を示した。

(取材・文 竹内達也)
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