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[MOM2586]山梨学院DF市川大葵(3年)_“まるで三本木”の「エース殺し」と決勝点

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前半23分、山梨学院高のDF市川大葵が決勝ゴール。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.8 総体2回戦 市立船橋高 0-1 山梨学院高 上野]

「三本木だ!」

 試合後、チームメイトからはそんな評価を贈られた。山梨学院高のDF市川大葵(3年)に託された任務は「エース殺し」。市立船橋高の10番、U-17日本代表MF井上怜(3年)を試合から消すことだった。元々はSBの選手だが、この日はシャドーの井上に正対する右ボランチの位置に入り、マンツーマンで対応し続けた。1月の高校サッカー選手権決勝で流通経済大柏高の三本木達哉のプレーは実際にイメージにあったという。

「自分は守備が得意な選手なので、(井上に)仕事をさせないことだけを意識していました。三本木選手のことは『守備の集中力が本当に凄いな』と思って観ていたので、『マンツーマンだ』と言われたときはああいうふうにやってやろうと思って試合に入りました」(市川)

 前半35分間、市川は実際に井上の脅威を消し続け、後半から相手のポジション変更を強いることになった。「頭がよくてクレバーな選手なので『マンツーで』と言えば、やってくれると思っていた」という安部一雄監督の期待に応えきった。しかも、仕事はそれだけでは終わらない。

 前半23分、ロングボールが前線のFW宮崎純真(3年)に入る流れの中で、大胆な攻撃参加を見せる。「後ろに選手も残っていたので、『ここは(マークを)捨てて行ってもいいかな』と判断しました」(市川)とペナルティーエリアへ向かって前進。すると、こぼれ球が自分の目の前に落ちてきた。突然訪れた「決めなきゃいけない」状況だったが、思い切って放ったシュートは見事にゴールネットを揺らす。

「めちゃくちゃうれしかった。今季初ゴールです」(市川)

 相手エースをタフにマークするという仕事をこなしつつ、機を見た攻撃参加から決勝点をつかみ取る。なかなかできない大仕事。「あそこで出て行く判断ができるのが彼」と唸った安部監督は、いつもの辛口ではなく「今日は褒めてあげます」とその仕事を称えた。

 後半もタフな守りを継続し、チーム一丸の守備を見せた山梨学院は見事に完封勝利。「目標である優勝に向けて、めちゃくちゃ自信になった」(市川)チームは、3回戦へと駒を進めた。

(取材・文 川端暁彦)
●【特設】高校総体2018


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