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“東山旋風”止まらず!後半ATのMF飯田劇的V弾で京都府勢36年ぶりの準決勝へ

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東山高の夏はまだ、終わらない。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[8.11 総体準々決勝 東山高 2-1 三浦学苑高 四日市]

 夏の高校サッカー日本一を争う平成30年度全国高校総体「2018彩る感動 東海総体」(インターハイ)サッカー競技(三重)は11日に、準々決勝を実施。東山高(京都)と三浦学苑高(神奈川1)の一戦は終盤に2ゴールを奪った東山が2-1で逆転勝ちし、同校にとって初、京都府勢としては82年の京都商高(現京都学園高)以来36年ぶりとなる準決勝進出を決めた。

 立ち上がりに主導権を握ったのは東山。「引っかかってショートカウンターを受けるのが一番怖い。浮き球だとカウンターはないと理解させて、できるだけ高いボールを選択し、うちがセカンドボールを拾う意識を持たせた」(福重良一監督)中で、ハツラツとしたプレーを見せたのは、MF飯田敏基(3年)だ。

 6月の近畿総体まではCBだったが、「体格が小さいので、ボランチで勝負したい」と指揮官に自ら志願し、ボランチに転向。豊富な運動量を見せる飯田らが2列目でセカンドボールを拾い続けて、有利な状況で試合を進めて行く。前半30分には中央でこぼれ球を拾ったFW久乘聖亜(3年)が右サイドに流れてから、ゴール前にパスを展開すると、FW中山翔(3年)がシュート。35分にも久乗が自らのパスミスを奪い返し、左足で決定的な一撃をお見舞いしたが、ともに三浦学苑GK浅岡流星(3年)の好セーブに阻まれ、CKとなった。

 対する三浦学苑の前半は「相手はシンプルな攻撃を意識されていたので、1対1と競り合いに受けて立とうと考えていたが、全くと言ってもいいほど良くなかった」(枝村隼人監督)。軌道修正し、MF末次怜(3年)らの回収率が上がった後半は、快足FWウォー・モハメッド(3年)に効果的にボールを入れてチャンスを演出。後半4分にはモハメッドのパスからMF杉山十梛(3年)が決定的な一撃を放ったがクロスバーに嫌われた。「ピンチで目を覚ました」(福重監督)東山は、DF清原航平(3年)を中心とした競り合いで以降のピンチを凌いだが、28分にはミドルシュートのこぼれ球をゴール前で繋がれるとFW鈴木心月(1年)に決められてしまう。

 終盤で致命的なゴールを許した東山だが、気落ちした様子は見られない。31分にはMF矢原直杜(3年)のパスからゴール前を抜け出した久乘が同点ゴールをマーク。この1点で息を吹き返すと70+3分には、自陣左でのボール奪取から飯田が素早く中央のMF宇賀神拓世に展開する。

 宇賀神は「いつも代えられる時間帯なのにまだ出ているということは、仕事をしないといけないという使命感があった」という想いをドリブルに乗せて中央を突破。そこからの縦パスで今度は久乘がタメを作ると、ラストは一気にゴール前まで上がった飯田がゴール右隅に決めた。「足が止まっていたので変えようか悩んだ選手を、『もうちょい待って見よう』と思っていたら決めてくれた」と指揮官が評する意地のゴールで試合をひっくり返すと、そのまま2-1でタイムアップ。東山が初のベスト4進出を決めた。

「決して今年は強くない」と福重監督が話すように、選手の質で言えばもっと手応えがあった年はある。ただし、自分たちに力がないと自覚している分、チームとしてのまとまりはピカイチ。「(大会直前の怪我で)倉貫がいなくなってなったことで、やることがハッキリしたことが大きいし、経験が少ない選手が怖いもの知らずの精神でやってくれている。この大会に入ってからの1週間での成長は大きい」(福重監督)ことも“東山旋風”の一因となっている。

「ベスト8で『お前らよく頑張った』と言いたい所ですけど日々、日本一を目指してやっているから、ここで負けるわけにはいかない」(福重監督)。「ここまで来たら日本一しかない」(宇賀神)と声を揃えるように東山の夏はまだ終わらない。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2018

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