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ブラサカ日本代表のストライカー黒田、パラリンピック開幕2年前の誓い「世界一になる!」

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日本代表で背番号11をつける事が多い黒田智成は「ブラサカのカズ」ともいえる存在

 2年後のきょう8月25日、東京五輪パラリンピックの開幕を迎える。ブラインドサッカー日本代表のベテラン39歳の黒田智成は堂々の世界一宣言だ。

 「金メダルを目標にしないと上にはいけない。ブラジルに勝つ。アルゼンチンに勝つ。そして世界一になることが目標です」

 前日24日、世界ランク1、2位のブラジル、アルゼンチンに挑む約10日間の南米遠征を終えて帰国。4試合して2分2敗。結果を見れば王国の厳しい洗礼を浴びたが、アルゼンチン、ブラジルに初めて無失点に抑えて引き分ける収穫もあった。

 「点数差以上の差も感じましたけど、進むべき方向性ははっきりと見えてきました。あと2年間で磨いて、最終的にはブラジル、アルゼンチンを超えていけるような道筋を描くことができました。2年間あればチームとしても個人としても変えていける」(黒田)

 浮き彫りになったのは決定力不足。特に、対ブラジル戦はシュートの数は上回っていた。だからこそ、ネットを揺らす確率をあげていきたい。そのために、黒田は何が必要だと考えているのだろうか。

「シュートスキルを増やしたい。自分が決めているシュートのほとんどが左足のインステップなんです。だから、インステップだけでなく、トゥーキックでのシュートも磨いていきたい。自分の得意なパターンには自信を持っていますが、あと2,3パターンは増やしたいです」

 生後3か月で網膜芽細胞腫を患って左目を摘出。小1の時に右目にも腫瘍が見つかり全盲となった。保育園児のときに食い入るように見た「キャプテン翼」が忘れられず、筑波大大学院進学後にブラインドサッカーをはじめた。現在は八王子盲学校の教員として中学生に社会科を教えている。仕事が終わると、サッカーを生で見たことがないハンデを補う時間がある。部活動が終わった放課後、誰もいなくなった体育館にひとりで向かい、ゴールではなく、マットに向かってボールを蹴るという。

「見てボールをけっているわけではないので、体の中に感覚をしみこませるイメージです。毎日1時間はやりたいんですが、できないときでも40分ぐらいはやっています。一人での孤独な作業になりますが、今までそうやって『形』を作ってきましたし、自分の中では一番大事にしている時間です。シュートスキルも、何度も繰り返して体に叩き込んでいって、自然とその動きが(試合で)出るようにしたい。自分でスキルを磨き、それをチームに持っていき、(新たに磨いた技術が)チームの幅を広げることにつながれば、と考えています」

 冬の南米から猛暑の日本に帰ってきたばかりの黒田は明日26日、仕事に復帰する。無人の体育館に響き渡るであろうボールの音と激しい息遣い。世界一を本気でめざすそのひたむきさこそ、生徒にとってかけがえのない教材になるはずだ。

(取材・文 林健太郎)

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