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「このチームが好きか?」 湘南育ちの19歳に響いたチョウ・キジェ監督の問いかけ

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J1リーグ戦初のフル出場を果たした湘南ベルマーレDF石原広教

[8.26 J1第24節 湘南0-0FC東京 BMWス]

「このチームが好きか?」――。湘南ベルマーレDF石原広教の頭の中には、チョウ・キジェ監督が試合前に問いかけた言葉が響いていたという。小学生の頃から“ベルマーレ”で育ってきた19歳にとって、この問いは己を走らせる大きな活力となり、J1リーグ戦初のフル出場を支えていたようだ。

「このチームが好きだという気持ちでプレーを選択してもらいたい。それは“犠牲的精神”という意味ではなく、自分のチームを好きになる、愛していくということが選手にとって見えない力を生み出してくれると思う。また、そういったものが違う選手がプレーした時にも宿ってくれることを祈っています」。

 湘南での7シーズン目を迎えた指揮官は、J1第24節FC東京戦の試合後会見で以上のような言葉を口にした。高温多湿の厳しい環境が目の前にあり、公式戦4連敗中と調子は上がらない状況。上位との対決に勝利する確率を上げるため、そしてクラブがより大きく成長していくため、試合前のミーティングで『クラブ愛』を喚起したという形だ。

 それぞれに感じるものはあっただろうが、ホームタウンの藤沢市に生まれた“生粋の湘南育ち”とも言える石原には、ことさら響いた。「自分はこのチームに育ててもらってここまで来ることができた。チームのために闘って貢献するのが自分の役割。そしてチームのためにキツくてもカバーし合うのが湘南の良さ。それは育成時代から言われ続けてきた」(石原)。

 4-1-4-1の左サイドバックで先発した石原は、立ち上がりから果敢にマッチアップをしかけていったた。「対人、球際で負けちゃいけない。走り切ってカバーしようと思っていた」。前回の先発時は第12節の柏レイソル戦。MF伊東純也への対応で遅れをとり、ハーフタイムに途中交代となったが、この日は先手をとって走り出す姿が目立った。

 さらに前半20分には、敵陣深くに攻め上がり、鋭いクロスからFW小川慶治朗のヘディングシュートを誘発。惜しくも相手GKに防がれたが、一皮むけたと感じさせるようなワンプレーだった。「最後は疲れてきて詰まってしまったりしたけど、クロスを上げ切るのはしっかりやれた」。試合後にはときおり笑みを浮かべつつ、手応えを口にしていた。

 フル出場した天皇杯4回戦から中3日での試合だったが、チョウ監督に「やれる自信はあります」と伝えていたという石原。当の指揮官は試合後会見で「ローテーションという言葉が嫌いで、順番にポジションを与えているわけではない。食べ頃の選手といいますか、熟れ頃の選手を使っていかないといけない」と持論を語っており、期待を懸けて起用したのは明らかだ。

「いろいろ言われなくても分かっているし、そういうふうに思ってくれているはず」と指揮官の関係を述べた石原は「言われないから燃えるし、成長したなと思われるようになりたい。良いことを言われなくても成長につながるように頑張ります」と頼もしい言葉。J1リーグで初めて90分間ピッチに立ち続けた19歳が、今後はさらに存在感を高めていきそうだ。

(取材・文 竹内達也)
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