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[MOM542]東海学園大MF榎本啓吾(1年)_兄はJ1名古屋内定「ライバルでもある兄ちゃんを越していけるように」

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途中出場のMF榎本啓吾(1年=千葉U-18)が流れを変えた

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.31 第42回総理大臣杯1回戦 北海道教育大岩見沢校 3-4 東海学園大 万博記念競技場]

 残り時間はわずか11分。2点のビハインドに加えて、攻撃の鍵であるJ1名古屋グランパス内定のFW榎本大輝(4年=中央学院高)が怪我で交代を余儀なくされた。前年のベスト8を超える成績を狙いながらも、初戦から崖っぷちに追い込まれた東海学園大を救ったのは、兄に代わってピッチに立ったルーキーのMF榎本啓吾(1年=千葉U-18)。「弟が尻ぬぐいしてくれました」と大輝が苦笑いしたように積極的に仕掛けながらも点に絡めなかった兄の代わりに、チームを救う活躍を披露した。

「兄弟揃って変態ドリブラー。ドリブルでドンドン仕掛けることができる」。安原成泰監督がそう評する兄同様にストロングポイントは緩急をつけたドリブルだ。「出た時は10分くらいしかなくて、行くしかないと思っていた」と振り返る啓吾は、ピッチに入るとすぐさま特徴を活かした突破で左サイドを切り裂き、後半41分にはカットインでPA内に侵入する。すぐさま相手DFに進路を遮られたが、「相手が飛び込んできたので、スピードを上げて入れ替わりを狙った」と急加速でかわしたタイミングで相手に倒され、PKを獲得。このチャンスをFW神門滉人(3年=アミーゴス鹿児島U-18)が決めて1点を返した。

 後半アディショナルタイム1分に生まれたチャンスも同じく左サイドからだ。「トラップした瞬間に縦が空いていたので、仕掛けようと思った」啓吾は直前のゴールシーン同様にスピードに乗ったドリブルで左を突破。PA内に入ると、今度はゴール前にパスを通し、神門の同点弾を呼び込んだ。啓吾の活躍によって試合を振り出しに戻した東海学園は延長前半4分にFW西澤利樹(3年=伊賀白鳳高)が決勝点をマークし、4-3で勝利。苦しんだ一戦ではあったが、安原監督は「今日のゲームは大きい。代わって入った選手が結果を残してくれたし、一度沈んだ試合をひっくり返せたのは自信に繋がる」と口にした。

 啓吾にとって3歳年上の兄・大輝は憧れの存在だ。「凄いプレーを一番近くで観てきた。お手本のような存在」と話すように特徴であるドリブルだけでなく、私生活の部分でも兄の良い所を盗みながら成長してきた。同じ大学に進んだのも兄がいたから。誰よりも凄さを知っているからこそ、J1名古屋への加入が決まった際も「ずっと凄かったので、やっとかなという感じ」と驚きはなかったという。

 とは言え、同じチームで同じスタイルとあれば兄弟での競争も生まれる。安原監督が「お兄ちゃんはモンスター。何回も仕掛けられるし、スプリントも繰り返せる。弟はまだ残り10、20分のポイントで使うタイプ」と評するように現時点での差は大きいが、負けたままででいるつもりはない。「ライバルでもあるので、兄ちゃんを越していけるように僕も頑張って結果を残さないといけない」と話すように、2回戦以降も与えられたチャンスでしっかりと爪痕を残し、アピールに励むつもりだ。

(取材・文 森田将義)
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