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スパイクマイスターKoheiがナイキ「ファントム ビジョン」の革新機能を解説!

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ナイキの新スパイク「ファントムビジョン」

 ナイキは8月に、革新的なフィット感とボールコントロール精度にこだわった新スパイク「ファントム ビジョン」を発売した。密集地帯をものともしない細かなボールタッチでディフェンスラインを切り裂くフィリペ・コウチーニョ(バルセロナ)や、広い視野と正確なボールコントロールでゲームを組み立てるMFケビン・デ・ブライネ(マンチェスターC)など、その他にも多数のナイキアスリートが着用する「ファントム ビジョン」。新たな手法、最先端テクノロジーが取り入れられた「ファントム ビジョン」の主要機能から細部に至るまで、その本質に迫る。


 従来のサッカースパイクは開発する前段階において外側のデザインのスケッチから始まる。しかし、「ファントム ビジョン」ではその伝統的な手法は取り入れられていない。今までのスパイクとは違う、より良いものを作るため、ナイキスパイク開発者のフィル・ウッドマン氏はスパイク作りを内部から考える手法を実施。その結果、ボールコントロール精度にこだわるプレイヤーに最適なフィッティングをもたらす「ファントム ビジョン」独自の構造が実現した。


 「ファントム ビジョン」の内部には“クアッドフィットメッシュ”と呼ばれる、メッシュ素材で構成されたインナー構造が採用されている。普通のメッシュでは柔らかいだけで形を維持するような保形性は低いが、このクアッドフィットメッシュは繊維を4方向に編み込んで構成されており、メッシュらしい柔軟性を実現しながら決して伸びすぎることがない形状維持力を兼備しているのが特長だ。まずはクアッドフィットメッシュが足全体を隙間なく包み込むフィット性を発揮し、あらゆる形状の足型によくなじんでフィット。新品の状態でも試合ですぐ使えるほどの履きやすさを実現している。

 さらに、新しく“ゴーストレースシステム”を採用。「ファントム ビジョン」の開発を担ったNSRL(ナイキスポーツ研究所)はプロサッカー選手からアマチュアプレイヤーまで様々なプレイヤーの意見をリサーチし、研究室でも数々のデータを分析した結果、一人ひとりのプレイヤーが求める自分の足に合ったフィット性を提供するためにはシューレース(靴紐)が必要という結論に達し、クアッドフィットメッシュ構造に最適なシューレースシステムである“ゴーストレース”の開発に成功した。ゴーストレースは紐を一度引っ張るだけで足の甲全体に、均等に紐の圧が分散する構造になっており、内部で足を包み込んでいるクアッドフィットメッシュとの相性にも優れている。


 そして、シューレースの結び目などはアッパーの中に織り込むことが可能。これによって、外見上はシューレースがないように見えるが、実際には内部でシューレースがしっかりとその役割を果たしているという、まるでゴースト(幽霊)のようなシューレースシステムが誕生した。


 クアッドフィットメッシュの上にはフライニットアッパーを採用。インサイド、甲エリア、それ以外の部分で、ニットの編み込みに3パターンの変化を加えることで部位別に応じた伸縮性やホールド性を生み出す。また、アッパーの表面には非常に細かな凸凹加工が施されており、その凸凹加工がボールに対してグリップ性を発揮。足先でボールを正確に捉えることが可能となる。それに加え、フライニットがゴーストレースを完全に覆っていることでボールを蹴るエリアが常にフラットな形状となり、安定したボールインパクト性を発揮するのもポイントとなっている。


 クアッドフィットメッシュとフライニットによる2層構造のアッパー設計を採用しているが、驚くべきことにアッパーは充分な柔らかさを有している。これは内部のメッシュと表層のニットが適切に調和されている証拠だ。指でアッパーの感触をチェックしてみても新品時から柔らかい。ナイキの以前までのボールコントロールスパイク「マジスタ オブラ2」のフライニットアッパーと比べても「ファントム ビジョン」のアッパーの方が柔らかいのはすぐに分かるレベルだ。


 インサイドには赤色の三角形のデザインが配されている。これは単なるデザインではなく、踵骨(しょうこつ)、距骨(きょこつ)、第一中足骨頭という、足の3つの大きな骨の間の面を覆うように描かれている。この面はインサイドでのボールコントロールにおいて重要とされるエリアであり、この部分が直感的に分かりやすくなるように三角形デザインが採用されているのだ。


 さらに、三角形デザイン部分には表面に三つ矢形状とドット形状の凸加工が均一に採用されている。視覚的にこのエリアがボールコントロールに重要だと示すだけでなく、インサイドでの正確なボールトラップやインサイドキックをサポートしてくれる設計になっている。アッパーのあらゆる箇所で、ボールコントロール精度に貢献する仕掛けが満載だ。


 天然芝用のFGソールには新型プレート、新型スタッドを搭載。アウトソール(靴底)のベースとなる素材には軽量で反発性も兼ね備えたナイロン樹脂を採用しながら、スムーズなターンや安定性に重要なエリアのサポート性を高めたソールプレート構造を採用している。スタッド(靴底の突起)は4種類の形状を組み合わせて計14本配置。この新しいスタッド形状・配置は有限要素解析(FEA)を基に開発されたスタッドポジションで、あらゆる方向への素早いターン・カットの動きに対応してくれる。


 トップモデルの「ファントム ビジョン ELITE DF FG」(定価29,700円)の重量は約218g(27cm)となっている。これはサッカースパイクの重量においては軽量な部類に入る。クアッドフィットメッシュとフライニットの2層構造のアッパーになっているが、決してスパイクの重量は重くなっていない。ピッチで縦横無尽に動き回るためにも、スパイクの“軽量性”は重要な要素だ。


 実際に「ファントム ビジョン」に足を通してみると、クアッドフィットメッシュとフライニットが織り成す柔らかなフィット感に感服した。ただ単に柔らかいだけでなく、足全体が隙間なくジャストフィットしている感触がすごい。足先から足首までピタッと包み込まれている感触がありながら、決して締め付けが強すぎることもなく、快適に足全体へフィットしている。足入れの際には多少のコツと慣れが必要だが、足を入れてしまえばジャストフィットな足入れ感を体感できるだろう。


 ボールタッチの感触や蹴り心地も申し分ない。ボールを止める、蹴るときに足への接触性に柔軟さがありながら、基本的にフラットなアッパー面の各部位に搭載された凸凹加工がボールグリップ性を発揮してくれることで的確にボールを扱えていると実感できる。


 従来のポジション別でスパイクを選んでいた時代から飛躍的に進化し、フットボーラーのプレイスタイル別で選ぶ新時代のスパイク「ファントム ビジョン」。今までにない新たな手法で開発がスタートし、クアッドフィットメッシュやゴーストレースなどの最新機能を取り入れたまったく新しいスパイクに仕上がっている。メッシュとフライニットの2層構造の融合は「ファントム ビジョン」ならではの構造であり、その独自設計ゆえに生み出される優れたフィット感は「ファントム ビジョン」でしか体感することができない。まずはサッカーショップで試着してみれば、そのポテンシャルを垣間見ることができるだろう。そして、ピッチで実際に着用すれば、ジャストフィット性とボールコントロール性能の良さに納得できるはずだ。

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Koheiプロフィール:
日本初のスパイクマイスター。日本全国の部活プレイヤーがサッカースパイク選びの参考にする「Kohei's BLOG」の運営者。これまでに1000足以上のスパイクを着用し、その最新情報や機能性を独自の視点で紹介している。国内でも有数のスパイク目利き力を持ち、プレイヤーの生の足を見れば、その人にマッチするスパイクが何かを見抜くことができる。身長180cm、体重72kg。ポジションはFW、ときどきMF。中学、高校、大学とサッカー部に所属し、現在も社会人チームでプレー。

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