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[戦評]鹿島を救った19歳の一撃(鹿島vs甲府)

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[5月26日 J1第13節 鹿島2-0甲府 カシマスタジアム]

 あまりにも大きな1点が勝負を決めた。1-0で迎えた後半31分、鹿島はMF野沢拓也(25)の右クロスを途中出場のFW佐々木竜太(19)が右足ダイレクトで叩き込む。
 これまでJ1通算21分の出場だけだった佐々木のJ初ゴール。鹿島ベンチでは、オズワルド・オリヴェイラ監督(56)が握り締めた右手を振り上げ、ピッチではフィールドプレーヤー全員が背番号34のFWを目掛けて駆け寄っていった。
 
 苦しい時間帯が続く中での待ちに待った得点だった。それだけに喜びは大きかった。鹿島は前半28分にDF岩政大樹(25)のゴールで先制したが、左サイドのFW茂原岳人(25)中心に攻める甲府に前半終了間際から決定機を何度もつくられていた。GK曽ヶ端準(27)の好セーブで失点こそ逃れていたが、危険な時間帯が続いていたことは間違いなかった。
 FW柳沢敦(29)が負傷欠場中で、FWマルキーニョス(31)もナビスコ杯・甲府戦(23日)で右ハムストリングを肉離れ。前線に負傷者が続出する中で、佐々木は後半21分から3試合ぶりに出場機会を与えられた。過去J1での出場は3試合で最長でも11分間のみ。だが地元・鹿島学園出身の19歳はこの苦境でチームを救う。
 「裏を狙うことを指示されていた」佐々木はうまく相手DFの前に入り、豪快にゴールを奪取。そして胸のエンブレムにキスをし、アシストした野沢に走り寄った。「最初、決まったということが分かってなかった。後ろ(チームメート)を見てゴールだと分かった。(エンブレムへのキスは)サポーターへの感謝も込めて。ゴールは出し手のおかげだと思っているので拓さん(野沢)の方へ行った」とはにかんだ。MF青木剛(24)は「苦しい時間での得点でうれしかった。それも竜太だったんでね」と勝負の分岐点というべき1点を決めた後輩を称えた。
 これで鹿島の5月の成績は3勝2分け。ナビスコ杯も含めると5勝2分けだ。曽ヶ端が「我慢しないといけない時間帯に我慢できるようになってきている」と話すように、接戦をものにする強さが発揮できてきている。MF本山雅志(27)も「負けていないことはうれしいですね。チームも少しずついい方向に向かっていっている」と語った。開幕から5試合連続未勝利など、出遅れていた鹿島。その反攻が19歳のJ初ゴールでさらに加速した。

(取材・文 吉田太郎)
<写真は佐々木のプロ初ゴールを喜ぶ鹿島イレブン>

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