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今年こそ、選手権へ。注目世代の帝京が都1部リーグで破竹の5連勝!

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前半12分、帝京高FW塩入颯斗が先制ゴール

[9.8 東京都1部L第14節 帝京高 3-2 実践学園高 帝京大学グループ千住総合G]

 8日、高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ 東京1部の帝京高実践学園高戦が行われ、帝京が3-2で勝利。5連勝の帝京は勝ち点を首位・成立学園高と同じ22としている。

 選手権優勝6回という特別な歴史を持つ伝統校、帝京が好調だ。リーグ戦は開幕4試合で1分3敗というスタートだったが、徐々に勝ち点を重ねると、7月の国士舘高戦での勝利を皮切りにインターハイ予選優勝の関東一高、リーグ首位・成立学園高、インターハイ予選準優勝の國學院久我山高を立て続けに撃破。そして、この日は昨年度の選手権予選準決勝で敗れている実践学園高に競り勝った。

 ボールホルダーの周りから「ターン」「フリー」などサポートする声が良く出る帝京は、個々のボールコントロール技術の高さを合わせて中央、サイドで細かく、正確にボールを動かす。そして、エースFW佐々木大貴(3年)やFW塩入颯斗(3年)、俊足MF中島涼太(3年)が突破力を発揮してシュートチャンスを連発。ボールを失った瞬間、複数でボールを奪い返してしまうなど、特に前半は魅力的なサッカーを展開していた。

 6分、7分にGK白鳥俊介(3年)がファインセーブを見せたことも大きかった。ピンチを凌いで迎えた12分に先制点。敵陣で相手の横パスをインターセプトした塩入が、右足シュートをクロスバー下側に当てながらもねじ込んだ。「(寄せてきた)DFのことは見ないでシュートを右下の方に打つことを考えて打ったんですけれども浮いてしまってバーに当てて……でも、入ったので良かった」という塩入の渾身のゴールで先制した帝京は畳み掛ける。

 19分にはMF中村怜央(3年)の展開から右SB山本乾太(2年)が中央へ折り返す。これをMF入澤大(3年)が右足ダイレクトで決めて2-0。その後も日比威監督が「今まで見たことがないくらいにハードワークしていた」という塩入が前線で身体を張り、DF間を突破して決定的なシュートを放つなど相手ゴールを脅かした。

 一方、自力のある実践学園は0-2の展開でも怯まない。27分に最近続けて結果を出しているというFW村田篤哉(3年)が左足ボレーシュートを決めて1点差。その村田や前線で身体を張るFW岩本連波(3年)、FW陣をよくサポートしていたMF半田峻一がボールに絡みながら注目左WB山内稔之が攻め上がりを見せる実践学園は、ショートパスでの組み立てとオープンからの仕掛けを交えて同点のチャンスを作り出した。

 帝京GK白鳥、実践学園GK荒川京椰(3年)の好セーブもあって2-1のまま進んだ試合は後半14分、この日存在感を放っていた帝京・中島のビッグプレーで2点差に。カウンターから右サイドでボールを受けた中島が、抜群のスピードと馬力で相手DFとの1対1を制してエンドライン際まで切れ込む。最後はラストパスを佐々木が右足ダイレクトで難なく決めて3-1とした。

 その後、実践学園は10番FW村木龍晟(3年)、FW古川真人(2年)、FW佐藤恵允(2年)の強力アタッカートリオを同時投入。飲水タイム直後の25分には古川のカットインからスルーパスに反応した佐藤が右足シュートを決めて再び1点差とする。対して、司令塔のMF三浦颯太(3年)や佐々木が攻撃の起点となる帝京は、後方から前線を追い越してゴール前に入る左SB石井隼太(2年)やスピードで相手の驚異になり続けていた中島が4点目のチャンスを作り出したが、仕留めることができない。

 一方、試合途中に3バックから4バックへ移行して立て直した実践学園は前線の村木、古川、佐藤にボールを預け、そこから迫力のある攻撃。連続でのダイレクトプレーや村木のロングスローで帝京にプレッシャーをかけた。守備の柱・久保莞太(3年)やGK冨田篤弘(2年)を怪我で欠く帝京は我慢の展開となったが、梅木遼(3年)と鷲田優斗(3年)の両CBやGK白鳥、中村が奮闘。苦しい時間帯を乗り越えて、選手権予選準々決勝で対戦する可能性のある実践学園に競り勝った。

 帝京はバランスを崩して攻めに行ってしまう部分が見られ、日比監督は「(連勝しているが、)失点していることが気になる」と引き締める。また注目の大型FW赤井裕貴主将(3年)が8月に右足首骨折、靭帯損傷の重傷を負って選手権予選出場が難しい状況に。戦術変更も余儀なくされている。それでも「点獲ることよりも、守備とかチームために頑張れるように。あと、自分たちは夏に走り込んでいるので、走りとか体力というところでは他の高校よりも負けないで走り切りたいと思っています」と語るFW塩入がスピード、技術で新たな崩しのバリエーションを加え、チームは夏合宿などで徹底的に走り込んできた成果を示すなど楽しみな部分も多い。

 帝京の現3年生は、1年時から三浦や佐々木が先発機会を得るなど多くの選手がトップチームに絡んだ注目世代だ。それだけに、選手たちは周囲からの大きな期待を感じているが、三浦が「チーム内では自信とか、『オレら、強い』みたいにはなっていないのが連勝に繋がっている。力も結構抜けていて、オンオフも使い分けている」と語るように、チームに過信は見られない。上々の状態のチームは、まだまだ成長を目指していく。塩入は「自分たちの代で選手権に行きたいという気持ちがあります」。名門にとって、09年度以来の選手権出場は絶対の目標。プリンスリーグ昇格のチャンスも広げている帝京が破竹の勢いも持って勝負の秋を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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