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“史上最大級のインパクト”名古屋の救世主となった大学生MF相馬勇紀

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今夏名古屋の特別指定選手として参加していた左からFW榎本大輝、MF児玉駿斗、MF相馬勇紀

 名古屋グランパスは15日に行ったJ1第26節でV・ファーレン長崎に3-4で敗れ、破竹の連勝が7でストップした。「相馬がいれば…」。名古屋サポーターの嘆き節が聞こえてくるようだ。

 ピッチでの躍動感は、まるでゴムマリが弾んでいるかのようだ。早稲田大のMF相馬勇紀(4年=三菱養和SCユース)が今夏残したインパクトは、特別指定選手としては史上最大級と言っても過言ではないほどの強烈なものだった。

 相馬は8月11日に豊田スタジアムで行った鹿島戦からベンチ入り。すると後半32分から早速デビューを果たすと、後半アディショナルタイム2分、カウンターからロングパスに追いついた相馬は、DF一人をかわしてマイナスクロス。FW前田直輝が決めるダメ押し点をアシストした。

 続く8月15日の横浜FM戦にも途中出場すると、同45分にFWジョーの頭にピタリと合わせるクロスを送り、決勝点のアシストを記録。チームを最下位から脱出させると、出場4試合目となった同26日の浦和戦では再び途中出場からジョーの2ゴールをアシスト。ゴールこそなかったものの、合計4アシストで、出場した5試合すべてを勝利に導いた。

 相馬に“今夏の衝撃”を振り返ってもらった。「上のレベルに行って最初はボールが来ないとか言いますけど、結果が信頼につながると思っていた。そういう意味ではデビューした時にアシストできたことが良かったのかなと思います」。

 一番手ごたえを感じたのは、浦和戦の4点目、後半34分にジョーのハットトリックをアシストした場面だという。左サイドでボールを受けた相馬は、エリア角から中に切り込むようにしてドリブルを開始。ファーサイドに走り込んだジョーの足もとにピタリと合う浮き球を入れた。「今までだったら内側を使っていた」というが、「パスが出てくるだろうなと動き出してくれた」とジョーの相手を外す動きなどワールドクラスの感覚を共有できたことで、より自信が深まったという。

 相馬の凄さという点では、横浜FM戦のアシストも見逃せない。決勝点が生まれる直前の後半42分、同じようにして右サイドを抜け出していた相馬のクロスはニアに構えていたGK飯倉大樹に難なくキャッチされてしまう。そこで相馬はその3分後のチャンスで今度はファーに蹴ることを選択。今度はしっかりと飯倉の触ることのできないボールを蹴り、ジョーの頭に合わせてみせた。「その前に何本か引っ掛かっていたので、あれは狙いました」ときっぱりと答えることができるあたりも、ただものではない。

 しかし「研究されてからというのはあります」と足元もしっかりと見つめる。試合中、相手に「早いぞ」と警戒されることはあったというが、普段主戦場とする大学サッカーでやっているような2、3人の選手に付かれるということがほぼなかったからだ。

 名古屋への入団を決めたのは今年5月。序盤の不振でJ2降格の可能性もあったが、それでも風間八宏監督の長期的な体制が継続されると説明を受けたことで、加入を決めた。その風間監督からは今夏も様々な刺激を受けた。「止めて蹴るの部分から自分のスピードをより活かすための相手の外し方とか、細かい所を教えていただきました」。途中出場する際も「とにかく自信をもってやって来いと送り出してくれる」ということで、普段あまりない“スーパーサブ”としての起用にも戸惑うことなく入ることが出来たという。

「生意気かもしれないけど、自分が特別指定で出て、降格しないようにしてやろうと思っていた。でも自分だけじゃなくて、新加入の選手だったり、もともといた選手がよくなってきたというのがあると思います」

 現在早稲田大4年生の相馬は、9月1日の磐田戦を最後に名古屋を離れた。同15日からは関東大学サッカーの後期リーグが開幕。チームは現在首位で、3年ぶりの優勝を目指している早稲田大にとっても欠かせない戦力であることは、言わずもがな、だ。

 昨年は同大の先輩、MF秋山陽介が関東リーグを戦った翌日に名古屋の試合に出場するという離れ業を演じたことがあったが、今季は大学リーグと名古屋の日程を見比べてもほぼ同日に試合が組まれており、掛け持ちは不可能に近い。「話し合いだと思うけど、基本は大学の選手なので、今は大学となると思います」と本人も自覚している。

 それでも現在名古屋は12位。まだまだ残留争いを抜け出すことは出来ていないことから、今後の展開次第では、再招集の可能性も捨てきれない。「来年もそれで行きたいですね」と話すほどお気に入りとなった背番号47。“背番号47の衝撃”を再び、今季のピッチで目にすることはあるのだろうか。

(取材・文 児玉幸洋)
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