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[AFC U-16選手権]U-16日本代表、「不確定要素満載の試合」で得た学びと大きな勝ち点3

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前半42分、4点目のゴールを決めたU-16日本代表CB半田陸が歓喜の咆哮

[9.20 AFC U-16選手権GL第1節 U-16日本代表 5-2 U-16タイ代表 マレーシア]

「何が起こるか分からない」とは確かに思っていたものの、ここまでのことになるとは誰も思っていなかった。U-16日本代表のアジアでの戦いは、そんな始まり方になった。「こんなゲームになると思っていなかった」と苦笑いを浮かべた森山佳郎監督は、5-2の乱打戦の末にタイを打ち破った戦いを「不確定要素満載の試合だった」と振り返る。

 試合を不確定にした最初の要素は、降り続いた豪雨だろう。元より決して良いとは言えないピッチ状態は、試合の経過と共に著しく悪化していった。「下もぬかるんでいてゆるい、かなりの重馬場」(森山監督)で、体力面も削り落とされた。「芝がめくれるし、滑るし、足にまとわりついてくる」(MF成岡輝瑠、清水ユース)難しさがあった。また単純に、東南アジア特有の豪雨下での試合、あるいは芝の状態に慣れているかどうかという点でもタイに分があったのは否めない。

 また2失点目のシーンでは、いわゆる“戻りオフサイド”になっていた選手がプレーに関与しないように見せてから、急加速。そのままボールをかっさらってゴールを奪い取った。副審の旗は揚がらず、判定はゴールイン。

「あり得ない。本当にあり得ないんだけれど、あり得ないことが起きるのがアジア」(森山監督)

 確かにオフサイドに見えたシーンではあったが、やはり笛が鳴るまで判定は確定しないもの。厳しいようだが、やはりここはプレーを止めてはいけなかった。審判は正しい判定をしてくれる「だろう」ではなく、誤審がある「かもしれない」と思って引き締めておく必要がある。

 また思わぬドタバタゲームとなった前半を受けて臨んだ後半の内容にも大いに反省点がある。「クリアばかりになってしまった」と森山監督が振り返ったように、リードを奪う中でシンプルにいこうとする意識付けが強まり過ぎて、今度はボールを相手にプレゼントするようなシーンが頻出。タイにポゼッションされて体力を奪われながら何とか耐え抜くような不本意な流れになってしまった。

 また、この流れの中で「前と後ろで考えが違っていた」とDF半田陸(山形ユース)が振り返ったように、ボールを高い位置から奪いに行きたい前線の選手と、セーフティーに後ろで構えたい後方の選手での行き違いも生じていた。「真ん中にいる俺たちが修正しないといけなかった」とMF山内翔(神戸U-18)が猛省したように、ここはピッチ内でのリーダーシップが欲しかったところではある。

 森山監督は最終的に前線を削ってMF中野瑠馬(京都U-18)をピッチへ送り出し、成岡を中央に入れて3ボランチ気味にした4-5-1の形へ戦術的に修正し、「あそこから守備がハマるようになった」(山内)ことで大事には至らなかったが、ベンチの修正を待つのではなく、ピッチ内の選手同士で改善を図れるようになること、そして試合の進め方についての意思統一は今後に向けた反省材料と言える。

 とはいえ、負けて修正を迫られるよりも、勝って前向きに修正できるのはポジティブなこと。初戦白星の意味は何よりも大きい。開始早々に失点し、思わぬ形で同点に追い付かれるなどの苦境がありながら、慌てふためくことなく戦い抜いてみせたチームのメンタリティは今後に向けた明るい材料だろう。「いろいろな学びがあって、良い勉強をさせてもらえたゲーム」(森山監督)を経たチームは、成長を続けながら中2日で迎えるタジキスタンとの第2戦を迎えることとなる。

(取材・文 川端暁彦)●【特設】AFC U-16選手権マレーシア2018
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