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持ち味の攻撃噛み合い状態上げてきた伝統校・武南、選手権予選で12年ぶりVに挑戦

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後半14分、FW小林明日斗(11番)のゴールを喜ぶ武南高イレブン

[10.7 埼玉県1部L第16節 武南高 3-1 浦和学院高 昌平高G]

 伝統校が復活Vへ。高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ2018埼玉S1リーグ(1部リーグ)第16節の武南高浦和学院高戦が7日に行われ、武南が3-1で勝った。

 選手権予選へ向けて伝統校・武南が状態を上げてきている。この日は前半10分、MF宮下瑛(3年)の左クロスを台頭中の178cmFW小林明日斗(3年)が左足ボレーで決めて先制点。局面を連動したパスワークで打開しながら前進する武南は、その後も小林やMF紺野辰也(3年)、MF永野駿(3年)がシュートを打ち込んでいく。

 一方の浦和学院は怪我のFW高橋航大(3年)やFWシャバニアン鼓太郎(3年)が不在。選手権予選へ向けてメンタルを含めたコンディションをこれから上げていく状況のようだ。この日は最前線で気迫の動きを見せるFW小林をはじめ、積極的なディフェンスをする武南の前に思うような攻撃ができず、相手CB上岡勇輝(3年)やCB井上竜太(3年)に攻撃を跳ね返されていた。

 またDFラインもやや安定感を欠いたゲームとなってしまったが、それでも昨年から主軸のCB中里竜也(3年)やMF内舘和輝主将(3年)からボールを動かしてサイド、前線まで繋ぐと、MF岡部和希(3年)やFW栗城来夢(3年)が個人技とアイディアを発揮。決定機に結びつけて見せる。

 しかし、GK深沢颯人(3年)の好守などで失点を凌ぎ、多くの時間帯で主導権を握っていた武南が追加点を奪う。後半14分、左サイドから前線にボールを入れると、俊足MF渡辺瑠太(3年)とのコンビネーションで前を向いた小林が右足で2点目のゴールを叩き出した。

 浦和学院も、直後に交代出場のMF山田地暖(3年)の右クロスを同じく交代出場のFW吉川大輔(3年)が頭で合わせて1点差とする。さらに岡部が中央突破からシュートへ持ち込むなど同点機を作り出した。

 武南はボールを奪いきれずに停滞した時間帯もあったが、この日コーチ登録されていた名将・大山照人氏が「シュートレンジまでいい形でできつつある。アイディアも悪くない」と語ったように、トレーニングされているコンビネーションプレーが随所で発揮されていた。

 ただし、ゴール前で視野が狭くなり、「詰めが甘い」(大山コーチ)課題を露呈。渡辺や小林が再三決定機を迎えながらも精度を欠いて追加点を奪うことができない。そして浦和学院にサイドから危ないシーンを作り出された。それでも、決定機を作り続けた武南は後半44分、右サイドから中へドリブルした渡辺のラストパスを交代出場のMF大高悠雅(3年)が右足ダイレクトで決めて3-1。課題は多かったものの、選手権予選を戦うライバルたちを警戒させるような内容で白星を掴んだ。

 失敗を重ねながら、徹底して磨いてきた戦い方。武南の内野慎一郎監督は「ゲームの中で、こういう風にやったら崩せるんだという感覚を自分たちで見つけられるようになってきている」と頷く。その上で、主将のMF塩崎正巳(3年)は「崩していくのは自分たちの持ち味。攻撃力もあると思うんですけれども、決定力の部分でシュートの本数は打てているのに枠外とか可能性のないようなシュートが多かったので、そこは枠内には絶対に入れて得点を入れていけるようにしていきたい」と“ラスト”を改善することを誓っていた。

 選手権優勝1回、準優勝1回の伝統校・武南も埼玉県内の他の私学勢の台頭によって選手権での全国出場は06年度が最後だ。12年のインターハイで全国2位を記録しているが、やはり選手権出場はチームの悲願。塩崎は「みんな3年間かけて練習も長い時間かけてやってきたので絶対に全国出れるようにみんなで協力してやっていきたいと思っています」と語り、小林も「初戦は春日部東か熊谷工業なんですけれども、上じゃなく、初戦から一個一個気合を入れて勝っていきたい」と一戦一戦戦っていくことを強調した。激戦区・埼玉での奪還は容易ではないだろうが、壁を破るだけの力はある。伝統校は課題の集中力の部分と決定力を少しでも改善し、一戦一戦勝ち上がって復活Vを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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