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舘向FK弾!初V王手!走って戦い抜いた花巻東、“経験”も力に夏の王者撃破! :岩手

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前半17分、先制FKを決めたCB舘向優也中心に笑顔の花巻東高イレブン

[10.24 選手権岩手県予選準決勝 盛岡商高 0-1 花巻東高 いわスタA]

 花巻東が初V王手! 第97回全国高校サッカー選手権岩手県予選準決勝が24日に行われ、インターハイ予選優勝校の名門・盛岡商高花巻東高が激突。1-0で勝った花巻東は、4日の決勝で初優勝を懸けて遠野高と戦う。

「今日は良く練習でやってきたことを出せた。とにかくファイトしてゴール前でしっかり戦ったことが次に繋がった」。昨年度の選手権予選は1-7、今夏のインターハイ予選でも0-5で敗れている盛岡商を完封。“岩手2強”の一角を崩して決勝進出した花巻東の白瀧慶監督は、自分たちのやるべきことを徹底し、最後まで集中して戦い抜いた選手たちを讃えていた。

 両校ともに同級生たちがゴール裏から大応援を繰り広げ、熱気のあるゲームだった。その試合序盤はカウンター狙いの花巻東に対し、盛岡商がボールを握って押し込む展開。7分には盛岡商が左CKを頭で繋ぎ、最後はCB高橋夢羽(3年)が頭で押し込もうとする。だが、花巻東はゴールライン上でMF佐々木南央斗(3年)がクリアしてピンチを逃れると17分、相手の背後を狙った攻撃でビッグチャンスを得る。

 花巻東は運動量がウリのFW小松哉生主将(3年)が相手の背後へ上手く抜け出してゴールへ迫る。必死に追走した盛岡商CB中村涼(1年)のタックルが得点機会阻止と判断され、一発退場となってしまう。数的優位を得た花巻東は、ゴール正面右寄りの位置で獲得したこのFKから先制点を奪った。

 GKからボールを隠す形で立っていた小松が動いた瞬間に、MF安孫子正和(2年)がキックフェイント。そして、すぐに反応したキッカー役のCB舘向優也(3年)が「1人フェイント入れて、壁が跳びそうだったら下に蹴ろうかなと思っていて、跳びそうだったので下に蹴りました。緊張しました」という右足シュートを壁の下へ通し、ゴール右隅を破った。見事なゴールを決めた舘向は「今までで、一番嬉しかったです」と笑顔。その背番号4を紫色のユニフォームが、手荒く祝福していた。

 一方、盛岡商はボールを握って外から反撃。MF林下舜(2年)のドリブルや破壊力のあるFW村井勇仁(3年)とMF上田有聖(3年)の動きなどを活用し、むしろ人数の多い相手よりも攻撃時間を伸ばしていた。だが、32分に前線で粘った上田のスルーパスに林下が走り込むも、花巻東CB舘向がカット。また、クロスを164cmの相手GK藤本勇飛(3年)に処理されていた盛岡商は、イージーミスも増えて相手を飲み込むことができない。

 花巻東は切り替えの速い攻守とゴール前での我慢強い守りを徹底。また、1人が抜かれてもすぐに誰かがフォローするなど局面局面で良く2対1の状況を作っていた。そして、質の高いキックをはじめ、攻守に渡って印象的なプレーをしていた2年生ボランチ・安孫子や前線での奮闘光る小松がカウンター攻撃を繰り出す。

 一方の盛岡商は中盤からポジションを下げた1年生MF欠畑魁星が数的不利のチームを安定させ、後半13分と15分にはセットプレーとサイド攻撃からそれぞれ決定機を迎えた。だが、花巻東はGK藤本のファインセーブなどで同点を許さない。ミドルシュートのコースを消してゴール前の競り合いで奮闘する花巻東に対し、盛岡商は攻めあぐねていた。だが、後半33分、右サイドから縦に仕掛けた右SB辻野史晃(3年)がPKを獲得。絶好の同点機を迎える。

 だが、キッカーの村井がフェイントを入れてから放った右足シュートは、あらかじめ跳ぶ方向を決めていたというGK藤本が右へ跳んでスーパーセーブ。この後、盛岡商はゴール前のシーンを増やしてこじ開けようとしたが、小松が「去年7点取られて、高総体でも5点取られていた。でも、練習で頑張ってきていたので『行けるぞ』『行けるぞ』と、自信も持てていたので、名前負けしないで気持ちの面で頑張れたかなと思います」と説明する花巻東の守りは崩れない。最後は欠畑も退場して9人で戦った盛岡商に雪辱を果たした花巻東が、決勝進出を決めた。

 花巻東にとっては選手たちの頑張りが何よりも大きな試合に。その上で“経験”の力も活きた。花巻東は今年3月から、元日本代表DF柱谷哲二氏がテクニカルアドバイザーとしてサポート。その後、北九州監督に就いたが、白瀧監督と毎週電話でやり取りしているのだという。加えて、6月からは元日本代表MFで仙台ユース監督などを歴任してきた越後和男テクニカルコーチが毎日練習に訪れて指導。白瀧監督が「(仙台ユースを長く指導されていることもあって)高校生の扱いに長けている。浮ついているところで締めたり、リラックスもさせてくれる。選手にとってとても頼もしい存在」と評する経験豊富な越後コーチの助言を受けながら、基本から反復し、カウンタースタイルを磨いてきたチームは壁を乗り越えた。

 試合後、「よく頑張りましたよ」と語っていた越後コーチは、彼らにとって“未知”の決勝で戦う権利を掴み取った選手たちへ向けて「ナイスゲーム!!」と称賛。決勝ではエースFW小松が累積警告で不在となるが、「ウチはやることはこれまでと変わらない」(白瀧監督)という花巻東は走って、戦って、主将の穴を全員で埋めて歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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