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[MOM2660]尚志MF坂下健将(3年)_攻撃改善のキーマン、試合のペース変える

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後半からの出場で流れを変えた尚志高MF坂下健将

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.27 選手権福島県予選準決勝 尚志高 2-1 聖光学院高 西部サッカー場]

 役者が違った。ハーフタイムに行われた主力3選手の同時投入は、明確に試合のペースを変えた。停滞していた尚志高の攻撃は、後半から活性化。後半4分に獲得したFKで先制点を奪うと、相手をゴール前に張り付ける波状攻撃でさらに襲いかかった。

 3選手は、いずれも能力の高さを示したが、中でもボランチに投入された坂下健将(3年)の存在は大きかった。前半の尚志は、相手のプレッシャーを嫌がり、守備網の外でボールを回したため、仲村浩二監督が「バックパスとロングキックばかり」と顔をしかめる展開となった。

 しかし、後半開始と同時に、坂下が中央でパスを呼び込み、素早いパス回しと狭いエリア切り裂くドリブルを併用。中学時代からのチームメートである快足ドリブラー加瀬直輝(3年)を生かしつつ、自らも中央突破を仕掛けて相手に脅威を与えた。

 聖光学院の山田喜行監督も「パスを回される分には対応できるけど、ドリブルで差し込まれた」と嫌がる攻撃だった。かわされれば自陣でスペースを与える。抜かれることを恐れて出足が鈍れば、圧力が緩んでパス精度が上がる。カバーを意識し過ぎると、ほかの選手がフリーになる。相手にマイナスイメージを与え、守備の連係機能を落とした効果は大きかった。

 先制点につながるFKを獲得したのも「前半、相手がボランチを潰しに来ていて、やり辛そうに見えたので、球離れを早くしようと思った。ボランチにプレッシャーをかけに来ているというところは、違うスペースが空く。そこをはがせれば、自分も仲間も生きて良いプレーができると思った」と話した坂下だった。仲間を生かして、自分も生きる。新たに身につけた持ち味が効いた。

 昨年は、途中出場で攻撃のリズムを変える役目だった。しかし、今季は先発ボランチとしてプレーの幅を広げた。「課題の守備をやりながら、昨年のように得点できるプレーを考えてやってきた。(個人の)結果も大事だけど、勝利に貢献できることが一番。『縁の下の力持ち』じゃないけど、ボランチとしてできることを全力でやりたい」と語った坂下の理想像は、ベルギー代表MFケビン・デ・ブライネ(マンチェスターC)。「仲間を生かしながら、チャンスがあれば自分も決める。仲間を生かす力が良いなと思う」と参考にしている。
 
 チームの攻撃力を増幅させるキーマンは「昨年は全国大会に少ししか出られなかった。スタート(先発)で全国に出たい思いは、誰よりもある。出て活躍できたら良い。全国に出るのは、自分の中では絶対」と次戦に向けた強い覚悟をのぞかせた。福島県の頂点に立ち、夢舞台の出場切符を手に入れるまで、あと1勝。立ち止まるつもりは、毛頭ない。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校選手権2018

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